めちゃくちゃ面白かったので某所から転載です。 【最果ての二人】 昔々、ないところにアルセスという男の子とキュトスという女の子がいました。男の子は町で雑用を、女の子は世界に愛を取り戻すために旅をしていました。昔々よりももっと昔の超昔に倒された魔王ハルバンデフが蘇って世界は困ったことになっていたからです。 魔王は、正直そんなことをしている暇があったら一度死によって中断された自分のアイデンティティはどこに持てばいいのか、過去に死んだという魔王と自分は本当に同一の存在なのかといった問題を真剣に考えたかったのですが、死んでいる間に溜まっていた仕事もあって部下がうるさかったので、しょうがなくニガヨモギの炎で生物の三分の一を死滅させたり、遺産の三分の一を相続税として取り立てたり、税金の三分の一を軍事費に充てたりしていました。 男の子と女の子はトルクルトアの街で出会いました。うまいこと社会的な体裁を取り繕