中学のときに通っていた学習塾の社会科教師は、授業中に頻繁に面白い雑談を始めるので生徒から人気があった。中でも印象に残っているのが串カツに関するお話だ。 「昔、(大阪の)難波で串カツを買い食いしたんや。そしたら、一口かじってみて驚きや。小指の爪くらいの大きさの豚肉に、どうやったらこんなことができるんや!っていうくらい分厚い衣がついとった。極限まで原価率を下げたかったんやな」 阿漕な業者がいるものである。が、度が過ぎてお粗末なものがあると聞くと、ちょっと行って見てみたくなるのが、人間の性というものだ。 大阪で串カツを食べた回数はもはや確かめようもないけれど、私は幸いにしてそのような着膨れした串カツに当たったことはない。ひょっとしたら、そういう店は悪どいことをしすぎたせいで淘汰されてしまったのかもしれない。 しかたがないので、自分で悪徳串カツ屋になってみることにした。 分厚い衣をつけるには...