困窮が見えにくくなっている。長らく社会保障政策を研究してきた中央大の宮本太郎教授(福祉政策論)は、公的支援が届かない「新しい生活困難層」が拡大していることが背景にあると指摘する。しかも、この層は社会保障制度の不備によって生み出されてきたという。【聞き手・野口由紀】 中央大教授・宮本太郎さん ――株価が上昇する一方、日本の相対的貧困率(所得が国の中央値の半分に満たない世帯で暮らす人の割合)は高止まりし、2023年の生活保護の申請件数が過去最多となるなど困窮が広がっています。 ◆困窮の広がりと併せて困窮とは何かを考える必要があります。相対的貧困率は、所得が国の中央値の半分に届かない人の割合を示しますが、所得の中央値そのものが下がってきています。それを踏まえると、子どもやひとり親世帯の相対的貧困率が若干改善してきたと言われていますが、決して楽観はできません。低所得層の中で分極化も進んでいます。人