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装丁を味わう
blog.goo.ne.jp/teki-mizuno
■川口良・角田史幸(2010)『「国語」という呪縛-国語から日本語へ、そして○○語へ』(吉川弘文館)が面白かった。タイトルだけなら、ああまたあの手の本か、と買わないところなのだが、たまたま本屋で手に取ってみたら、「国語と和語をめぐって」という章が目についた。たとえば、 「どんなに時代をさかのぼっても、日本語の実態として見いだされるのは、この漢語と和語、和語と漢語との相互作用、それらの相互変容、そしてそれによる両者の混合と混血でしかありません。」 そして、純粋な和語(大和ことば)の探求は「まったく虚妄」だと言う。その理由は(1)何の資料もないので原倭語がどのようなものであったか、そもそも存在したのかどうかもわからない、(2) 原倭語自体が多種の言語の混合・混血であると推定されるからである。「混合」とか「相互作用」というのは、たとえば「いわばしる」という和語は「いわ」と「はしる」による造語だが
■3月9日に高等学校の学習指導要領が改訂された。その中で英語だけが大きく報道されている。これは「英語の授業は英語で行うのが基本」と明記されたためだろう。実際は、意図的かどうか知らないが、本文の中に目立たない形で書いてある(ここの225ページを参照)。「…ことを基本とする」などと控えめに表現されているのは、おそらく高等学校学習指導要領(外国語)案に対するパブリックコメントなどを無視できなかったためだろう。語学教育全般、ひいては通訳翻訳の問題とも関連するので一言しておくことにする。 ■新指導要領への一般的反応は、(1) 教養としての英語教育を考えるなら読み書きの方が大切、(2) コミュニケーション重視はエリート教育であり、教育格差を生む、(3) 現実には現場の教師や生徒の能力に左右される(英語で授業なんて無理)。進学校にとって利点が乏しい、といったものが多い。いずれもあまり本質的な批判とは言え
■埋め草代わりに気になった記事を。 technobahnの「アマゾンの原住民族、数認識能力は「ちょっと」と「いっぱい」だけ」という記事は「ちょっと」どころかかなりミスリーディングだ。MITのGinson(あのGibsonがこんなことも)らの調査と実験の報告なのだが、「ピラハ族の言語の場合、絶対的数値認識は1~2までしかなく、3以上の数値は全て「ちょっと(some)」と「いっぱい(many)」という概念によって表されれていた」というのでは完全に誤りだろう。こちらのスラッシュドット・ジャパンの記事は、「この部族には「1」「2」「沢山」を表す言葉があると思われていましたが、「1」と思われていた言葉は実際には1から4の数を表し、「2」と思われていた言葉は5か6を表していることが」わかったと、ほぼ正解。MIT Newsの英語原文はこちら。ただ、別の実験について「また、物の数を合致させる作業を行わせた
■Wired Visionの7月9日のエントリーに「『英語式語順は、自然な思考の順番に反する』研究結果」という紹介文がある。これはPNASに載ったGoldin-Meadowの研究を紹介したものだが、実際はタイトルほどの内容ではないようである。簡単に言うと、「SVO型の言語を話す人であっても、身ぶり手ぶりでコミュニケーションを取るよう求めると、主語、目的語、動詞の順番で意志を伝えた」ということであって、Goldin-Meadowは、だから「SVO型言語を話す人は、思考を人間の直観にやや反する言語パターンに変えるので、認識面でわずかなストレスを常に感じているのかもしれない」と言っているだけだ。New Scienceの紹介記事はもっとすごくて、Charades reveals a universal sentence structureというタイトルだ。これはおだやかではない。記事の後半に行くと
■これは橋本福夫訳・J.D.サリンガー『危険な年齢』の表紙。著者名、タイトルからはわかりにくいが、サリンジャーのThe Catcher in the Ryeの初の邦訳なのだ。原著は朝鮮戦争のさなか、1951年の発行だが、橋本訳は早くもその翌年に出ている。その13年後の1964年に野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』が出て、名訳としての評価を得て広く読まれた。そして約40年後の2003年に村上春樹訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が出版される。橋本訳からは半世紀以上経過しているわけだ。 村上訳についてはAmazonの読者書評でも圧倒的な支持があるようだが、これが果たして翻訳評価につながるかどうかは疑問符をつけたいところがある。支持している読者はただ「村上春樹」を読んでいるだけなんじゃないか、と思うからだ。(それに、なぜ今新訳なのか?という疑問は村上春樹のあちこちでの説明にもかかわらず、残る。)受
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