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おみそ汁
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自然界に属する人間にも、 摂理というものがあり、 それぞれ予め、定められたものがある、 また、そのなかでも下限と上限があることを、 人は日々を送る中で、 それをなんとなくであっても、 また、 それがどうしても納得したくない事柄であったとしても、 心の奥底ではうっすらと気付いてしまうことが誰しもあるもの、 例えば、 個人に心臓が鼓動する上限がもうけられているように、 それは抗うことの出来ない定めとして存在しているのだ、 それに倣って、少し話は変わるが、 「各々の人間には言葉を扱える範囲があり、制限が与えられている」 と、ある研究者が、 今を遡ること、はるか大昔に発見していたのをあなたは知っているだろうか、 と、悪戯に訊ねてみたものの、 きっと誰も知らないだろうと思う、 なぜなら、 その研究者がそれに気付いた時には、 残された言葉の値が僅かであったためだ、 彼はそれを暗号として、 一見、手短な
ピヨピヨという鳴き声が、暗闇の先にある扇風機の土台部分から聞こえてくる。 肌寒いこの季節、そのけったいな扇風機を回すことには一つの理由があった。 預かった洗濯物を、この一晩の間に急いで乾かさなければならないのだ。 そして、その他人の洋服を明日の朝に持ち主の元へ届けなければならない。 しかし不思議なことに洗濯してからというもの、数時間も経っているのに、干された洗濯物は一向に乾かない。 生憎、そとは雨が降り続いていて部屋干ししかできず、夜風も当てられない。ドライアーの熱風を押し当てたりして試してみるものの無駄に終わってしまうのだ。 翌朝には持ち主の所へ洗濯物を持っていかなければならない、という使命感と、残業が続き、明日も休日出勤だから早く寝て体を休めなければならないという危機感に苛まれ、わたしは一つの賭けに出ることにした。 ひよこばってりぃ、である。 わたしが使っている扇風機はひよこ社製のもの
二日ぶりにまわってきた、当番の朝。 相変わらず雨は止まず、風も時折り激しく吹き荒ぶ。 身に着けていた雨着は、家を出てすぐに水浸しになった。 この村の先にある崖を挟んだ、対岸の隣村が見渡せる高台へ、今日も向かう。 軋む階段を一段一段、踏みしめながら上まであがると、前任者は既に姿を消していた。殺風景で狭苦しい板の間が、塞ぎ切れない雨風に晒され濡れていた。 真ん中にある、暖炉の傍に身を寄せるしかなかった。 はぁはぁ、と白い息を吐きながら、弱弱しい陽炎火に薪を焼べる。 雨が降り続けて、十二日目の朝を迎えたのだった。 かじかんだ両手を擦り合わせる。 しかし、幾度重ねようと、胸打つ不穏な鼓動をなだめることはできない。 降り続く連日の雨、雨雲に覆われ狭まった空。 霞んだあの山脈の先を見据えるが、以前として灰色掛かっている。 残された期限はもう、一日しかない。 どうか雨よ、どうか降り止んではくれまいか。
治験に参加してみないか、とその研究所に所属する元彼に誘われ、話を聞くだけよ、というつもりがこうなってしまった。 非公開で募集をかけられない案件だから調べても出てこないよ、とその彼は口にするが、たぶん彼の研究施設自体が非公開だろうという想像はついた。 人体をそっくりそのまま復元させる。 その為の治験モニター、などという嘘のような話。 「もしも、人が簡単に死ぬことがなくなったらさ、この世界はどうなると思う」 簡単に、などと言ってしまう彼を見て相変わらずなんだと、そう思った。 「もしも、が、なったらさ、どうなると思う」 という懐かしい問いかけ。 それが彼の口癖。 彼の口からこの文句が漏れることに、得も言われぬ震えのような反応をこの身に感じ始めたのは、それはいつの頃からだったか。 もしもこの芸能人が犯罪者だったら、あの国とこの国が戦争をしたら、この空き店舗に個人飲食店が入ったら、この建設中のビルの
書いては消して、を何度繰り返してもいいから。 「小説」とよばれる最低限の規定枚数にまずは届くように。 そして、どんな内容になろうが、その話を完結させる。 まずはそれを第一の目標に。 ずぶの素人が小説家を目指すのだ。
白い空間『綱渡り』 その、夢というものを見たことがない。 皆と同じように、一日の終わりとしてベッドに横たわり眠りに入る。 そこまでは同じだろう。 ただ、その眠りから先が大きく逸脱していく。 次の瞬間、眼前に広がるのは真っ白い世界。 なぜか私は現実世界で眠りに入ると「白い空間」へと誘われるのだ。 そこは見渡す限りに真っ白い世界が広がっていて、しばらくすると白いドアが無数に現れだす。 その内の一つを選び、潜らないことには現実へ戻れない。 毎夜、私はいつも摩訶不思議な世界に身を置くことになる。 その世界の環境や風土、起きている事件や抱えている問題などの情報が、時間と共に徐々に脳と体に染み渡っていき、気付けば私はその世界の住人になってしまう。 生きるために染まる、とでも言うのか。 痛みも感じれば熱さも寒さも、空腹感もある。 命の危険にさらされたことさえ幾度もあるが、とりあえず現実世界で目を醒まして
光に群がる、小さな羽虫。 そいつらがうらやましかった。 理性もなく、ただ本能に導かれるようにして生きる。 名も知れぬただの虫。 今は成れるものならば何でも、とそう思った。 意識を取り戻してから、少なくとも数時間は身動きが取れずにここに居る。 周囲は静まり返っていて、自分の呼吸音だけが荒々しく耳に残る。 今はただ、がれきの中でひたすら救助を待つ身だ、と思っているのだが。 というのも、何が私にこの状況を与えたのか、実は解らない。 人がごった返す、主要駅に隣接する商業ビルの地下で、私はいつものように休日を過ごしていたはずだった。 馴染みのカフェで軽食を取って、まわりが情報端末機器を触ったり、読書に耽るなか、その日の私は何を目の前に持ってきてもしっくりこない具合で、トートバッグに詰めた来週の仕事で扱う資料を出したり引っ込めたりを何度か繰り返した後に店を出た。 そう。 そこまでは覚えているのだが、そ
目の前が真っ白に染まった。 いつものことだ。 現実世界で眠りに入ると、私は白い空間に誘われる。 その原因はわからないが、そんな定めの中に私はいる。 いつものように白い空間を彷徨い歩いていると無数の扉が現れはじめた。 どれか一つの扉を選択し、どんな世界が待ち受けていようと踏み込まなければならない。 その先に広がる異世界に身を投じなければ私は眠りから目覚めることが出来ず、現実には戻れないからだ。 私はそれを物心ついたころから毎夜、繰り返してきた。 今夜もこうしてドアノブを回して押し開くと、その先には辺り一面、白色に染まった大地が待ち受けていた。 きめ細やかな白いものが天から落ちてきて、地面に降り積もっている。 雪か、と思い一歩を踏み出したのだが寒さなどは感じず、踏みしめるまでもなく軽く崩れる粉のような、足元に積もるこのぐずぐずした感触に戸惑う。 周囲をふらふらと探るが建物も人も全く見当たらない
目が覚めると、左手が自分のものとは違っていた。 手首から指先にかけてが歪であり、人間のそれとは明らかに形が違う。 血色の悪い、鱗うろこのようなものがびっしりと生え、それはごつごつとした灰色の手だった。 そして、確かに左手の人差し指、中指、薬指の爪に「壱、弐、参」と順番に数字が浮かんでいた。 夢ではなかったのだ。 昨晩、眠りの中で男の声を聴いた。 その声はわたしに、願いを三つだけ叶えてやろう、と話しかけてきた。 わたしがどんな願いでもか、と問うと、どんな願いでもだ、お前が現実的に想像できるものであれば叶えられる、ときたものだ。 「ただし、その見返りとして三つ目の願いを叶えたあと、この世界に終焉が訪れることになる。 よく考えて、願いを叶えることだな。 終末の使者と成り得る者よ」 灰色の、枯れた枝のような指を見つめながら、もともとない頭を使って考えをめぐらす。 別に悲観的な心情に毎日が染まってい
身を打つ強い衝撃が。 それと共に唐突な眠気に襲われ、抗うことなく瞼を閉じた。 そして、朝が来たから、という当然の流れのようにして私は目覚め体を起こした。 という、そんな感じだったが、瞬時に違和感を感じた。 どうしてこんな硬いアスファルトの上に寝そべっているのかと疑問に思うのと同時だった。急にその自分と乖離したようにして分かれ、足元に置き去りにした一方の私を眼下に焦る。 この光景が理解できず、とりあえず手足をじたばたとさせてもがいてみたのだが、そのままゆっくり、ゆっくりと、空へと吸い寄せられ、横たわったまま動けずにいるもう一人の私と距離ができていく。 そこへ、私を跳ね飛ばした白いワゴン車から恐る恐る降りてきて屈みこむ、中年のおっさん。真っ青な顔。ちょっぴり禿げ頭。 自分の背丈を越え、電柱の高さも越え、たくさんの建物の屋根や屋上が見渡せるようになると体を吹き抜けていく風が心地よくもあり愛おしく
預金通帳を開いたまま、ATMのすぐ横で立ちつくす。 貧弱な残高を見つめていた。 当然のことながら一円も入金はされていない。 この惰性な生活も2年目に突入した。 今となれば、感情に任せて唐突に仕事を辞めたことを後悔している。 未練がましく、振り込まれることのない未払い給与に期待しては、こうして病的に通帳記入を繰り返してきたが、いい加減に止めにしないと。 嗚呼、今朝から財布を何度覗いてみても、500円玉が一枚とそのほかの小銭が数枚だけだ。 これまでずっと独り身を謳歌してきた。 それなりに貯蓄はあった。 しかし再就職に失敗し、自暴自棄となり、高が外れて散財した結果がこの様だ。 来年には40歳を迎えるいい歳したオッサンが、いよいよ本気でお金がない。 誰かそんな状況を察して救いの手を差し伸べてはくれまいか。 無理か。 そうか。 すれ違った若い高校生の男女。 談笑しながらアイスクリームをスプーンですく
隣に座る彼女が面白いゲームがあるから、と小声でささやきながら、俺の開いたノートの上に通信端末をもってきた。 なんで授業中に、このタイミングで。 相変わらずこの娘の考えが掴めないなぁ、と思いながらチラリと目をやると画面にはその掴めないはずの特徴を上手に捉えた、隣に座る彼女によく似たキャラクターがいた。 彼女の顔を伺えば、授業中の顔に戻っていて正面を見つめている。 俺が視線を戻すと、腕は引っ込んでいた。 その授業が終わって放課後に突入した瞬間だった。 キミもやってみようよ、とそのゲームに誘われる。 思春期だか成長期だかしらないが、数時間前に学食でたらふくカレーを胃に詰め込んだはずなのにもうお腹が鳴っている。 その腹の音が届いたのかは知れないが、おごるからさ、ゲームについてのことでちょっと付き合ってよ、ときたもんだ。 彼女がこの言葉で俺を誘い出すときはいいことが起きた例がないのだが、目の前の餌に
店を出ると、寒空には月が浮かんでいた。 ちょっとだけ、洋服のバーゲンを覗いてみるつもりが、もうこんな時間に。 彼氏を誘ったが、どうやら荷物持ちになることをやっと学習したようで連れ出せなかった。 次に誘う時には、もう少し良さげな餌を撒く必要がありそうね。 白い息を吐きながら、駅から自宅までの帰り道。 住宅街を進んでいると灯りが途切れ、暗闇があらわれた。 ぽっかりとした空き地があるのだ。 普段は立ち入らない、その足元の悪い空き地を今日は通り抜けることにした。 一日中動き回った上に、寒さからなのか足の感覚が鈍くなってきていた。 足早に。もうすぐで空き地を抜け出すというところで、突然強い風が吹きつけてきた。 「いたいっ」 目にゴミが入ってしまった。 なんとかして取り除きたいのに、両手は紙袋でふさがっている。 どうしたものかと。 体をかたむけて片手に荷物を預け、空いた手を使って、まぶたのふちを指でな
母は産まれて間もない私を抱いて、こう言ったそうだ。 「この子は世界地図と一緒に産まれてきたんねぇ」 生まれながらにして背中が痣だらけであった。 母の言葉の通り、地図でも描かれているかのようにして、生まれ持った灰色の痣が背中を巡っていた。 それについて医師は、痣は徐々に薄くなり、その内に消えてなくなるでしょうと言ってのけたそうだ。 しかし、成長するにつれてその痣は躰を蝕むように広がっていった。 ある程度の読み書きができる頃には、痣は背中を抜け出し、手や足、首筋、そして顔にまで飛び火し始めていた。 あたしはそのまだら模様の頃のことをなぜか今となってはよく思いだせない。 聞けば、小さい頃から既に周囲と距離があったそうだ。 しかし、あたしはいつも自分の意思で一人を過ごしていたつもりだったから、そんな風に見られていたことが意外だった。 一人の時間はいつもノートに何かを綴っていた。 学校や家で起きた日
まだ明け方で部屋は薄暗かった。 うつ伏せで寝ていたからだろうか。 顔の下に敷いていた左腕に、よだれが滴っていてみっともないなと感じる。 もう片方の右腕はというと、何かを掴もうとするかのように前方へ伸びている。 でもその先には見慣れない壁があるだけで何もない。 そうだ。 あたしはこの連休を旅行にあてたのだった。 喧騒から逃れるようにして、たどり着いたのは地方の田舎町。 温泉があるわけでも豊かな自然があるわけでも、珍しい特産品があるわけでもない。 高速道路が町の脇を通っていて、通過されるだけのこの土地は失礼ながらないもの尽くしだ。 そんな町をどうしてあたしが選んだのかといえば、あれ、どうしてだったかを思い出せない。 とりあえず起きて左腕を拭おうと思ったけれど、でも、あたしは動けずにいた。 視線の先、目の前の伸ばした右腕の上を、とことこと歩き出す小さな人のようなものが見える。 寝ぼけているのかも
これは何も、過疎化が進んだ地方の話だけではない。 住人が居なくなり、取り残された空き家がこの国では増えている。 都会の片隅でも注意して歩けば、老朽化したまま放置された民家やビルは案外すぐ見つかるものだ。 俺は、そんな主を失った建物を解体する会社で働いている。 職場環境は屋外ということもあって夏場冬場は過酷だ。 現場作業員としての仕事を唐突に辞めたくなったことはこれまでに何度もあった。 が、朝目覚めてとりあえず昼までは会社に行こうと体を起こせば、なぜか夕暮れ時までは勝手に手足が動いてしまうのだった。 何だかんだで続けられるということは、現状では適性があるということなのかもしれない。 十五歳で親元を離れてからずっと一人暮らしだった。 学校には中途半端に通い、ぱっとしない成績を修め、何事も面倒くさそうに生きる私に対して両親や担任の教師は何をどのように失望したとは具体的には言い表せはしないが、俺と
狭い飛空艇の操縦席。 唸るエンジン音に耳が慣れてくると震える鼓膜の更に奥、私の脳は静けさを感じ始めていた。 人には仕事終わりに一息つく趣味のようなものだと告げているが、本音としてはそんな気の休まるようなものではない。 雲を突き抜け、高度が安定してしばらくすると体がいつものようにがたがたと震え出した。 格安で仕入れたおんぼろのふたり乗り飛空艇では空調も自動操縦もあまり機能していない。 微かな隙間風が吹き抜けるおまけつきだ。 分厚い防寒着を身にまとったまま、狭い操縦席で身体をひねり、後ろの席に転がっている湯の入った水筒を手繰り寄せる。 こぽこぽと用意していたカップにお湯を注ぎ、インスタントコーヒーを啜る。 操縦桿に軽く手を添え、曇ったゴーグルを外し、窓に顔を近付けて夜空をうかがう。 上空は今日も大きく波打ち、その高波の奥で月が滲み揺らめいている。 天の川と聞いて、天体のことを思い浮かべる人はも
そんなことがあるものかと、疑われて当然だとは思うが。 喧嘩をしてから実に4年間、私たち夫婦はずっと口をきかなかった。 子どもがいない、二人すれ違いの家庭生活を振り返ってみて何が残ったのか。 はじめは笑いの絶えない夫婦だったのにな、とそんな思いに耽りながら自室のベランダの柵から半身を乗り出したり、隅にある彼女が手入れをするプランターを覗き込んだりしてみる。 指先ほどの小さな羽毛が茎と葉の間で包まっていたので、それをつまんで伸ばし、目の前で浮かばせてみる。 羽はゆっくりと向きを変えると、風に流され柵を越えていった。 喧嘩の原因を遡って突き詰めれば、明確な答えが導き出せるのかもしれない。 けれど、このようにややこしく凝り固まった喧嘩というものは原因が一つではない。様々な不満や鬱憤が絡まり合い、不穏な感情が蓄積された結果が見えない壁を形成して、こうしてお互いの間に距離を生んだ。 そして予め告げてお
医者の言う通り、ものわすれが激しくなっていることをいよいよ認めざるを得ないのだろう。 悪い足を引きずりながら居間に立ち竦んで、いったい何のために動いたのかを思い出そうとするのだが答えが見当たらない。 昨晩、娘との通話で何を言われたか。それがヒントのような気がするのだが。 母さんや娘からは延々と言われ続けていたことなのだが、幾つになっても他人の言葉に耳をかさない性分は相変わらずである。 失敗を何度か繰り返した後に、ようやくその忠告のありがたさを思い知るという厄介な生き物が私だ。 最近は毎朝の日課として、冷蔵庫の横の壁に設置してある大きなボードを目にして、その日の予定を確認することにしている。 よく会社で使われるようなでかでかとした大きなもので、一月の予定が書き込めるという代物だ。 どうせならしっかりしたものをと思い、こんな一般家庭に見合わないものを買ったのだが、どうも失敗だった。 一人娘の忠
「担当の編集者から度々打診されてはいましたが、これまでに自分のことを語ることはありませんでした。 そんな私が自分語りするのはどうも不慣れでむつかしく感じるので、小さな頃からのエピソードなどを順に思い返して語ろうと思いますがよろしいでしょうか?」 「はい。どうぞ先生のペースでよろしくお願いします」 「私、小さい頃は嘘ばかりをついて生きていました。 昔を思い返すと、いつも真っ先にそんなことを思い出します。 一人っ子でしたので、もしかすると寂しかったのかもしれませんね。 先生や親に性分を隠し、友人を困らせるのが楽しみでした。 それでもなぜでしょうかね、彼らから嫌われたり怒られたような記憶がないのが不思議です」 「子どもは嘘も真実も垣根のないところがあったりするからでしょうか。 わたしもよく嘘をついて兄弟を泣かせていたような記憶がありますし、友達もよく嘘を並べて遊んでいたような気がします。今となっ
私なりの幸せを追い求めていたはずだった。 大きな夢や明るい希望はなくとも、この身の丈に合った生活を迎え入れる事こそが最良で、帰宅後の僅かな時間と休日でその余韻を余すことなく嚙みしめる。 こんな調子で人生を終えるのも良しと言い切れる、質素で無欲な自分がきっと好きだった。 しかし、そんな小さな世界で満足できていたはずの私の身にある日変調をきたしたのだ。 いつか来ると想定していた老いや衰えなどではなく、それは突発的に現れると一瞬で距離を詰めてきた。 ちいさなちいさな、でも大切な城がある。 そのコツコツと築き上げてきた私の城が制圧されようとしていた。 その悪魔は、夜中や朝方の眠りの最中に忍び寄ってくるようになった。 突然の気持ち悪さの中で目を覚ますと視点が定まらない。 目が回っているのだ。 視界のハンドルをきっては戻り、またきっては戻りを繰り返している。 その僅かに傾く、繰り返しの景色から逃れよう
目を閉じると直ぐに白い空間が広がった。 私には睡眠中、強制的に別の世界で目を醒まし、そこで時を過ごさなければならないという不思議な習性がある。 その現象が起きるのは幼少の頃からで、眠りに入れば必ずやってくる。 白い世界をしばらく歩けば、周囲に白いドアが浮かび上がってくる。 そのドアの先には現実世界とは全く違う生き物が蔓延っていたり、異なった思想や文化を持つ世界が広がっていたりする。 しばらくその世界に浸っているうちに、私の脳裏にはその世界の常識や生きる術が染み渡ってくる。 まるで、初めからその世界の住人であったかの様に同化していくのだ。 今日は現実世界で仕事の疲れが溜まっていてへとへとだった。 目の前がチカチカして、頭痛が酷かった。 そんな時には、思い切って白い空間に身をゆだねることも一考だ。 命の危険に晒されることも多々あれど、現状としては翌朝には現実に戻って来れている。その変わらぬ事実
「ゆびわ」をなくしていることに気付いたのは、タワー型登録借地を昇った後だった。 がらんとした平地を前に、左薬指を見つめて呆然としていた。 「ゆびわ」が手元にないということは、身に着けているもの以外のすべてを失ったということになる。 電話も財布も、わたしの身分を証明するものも何もかもだ。 退社する時、ゆびわを使って「衛星プリンター 空-sora-」に鞄ごと預けてしまったものだから、この場では何もしようがない。 白くなった息を吐きながら見上げた夜空には、小さな輝きが広がっている。 その光のほとんどが衛星プリンターだ。 この無数に瞬く光こそが、当たり前のように続く何気ない日常を演出してくれていたのだと、今更ながらに思い知る。 ー ー ー ー それにしても、「ゆびわ」はどこでなくしてしまったのか。 しかたなく、上着のポケットに入っていた電車のICカードを頼りに会社までの元来た道を辿ることにした。
子どもの手をとり、行き交う車と距離を取る。 横断歩道の前で、信号が切り替わるのを待つ。 「…おとうちゃん」 私の娘は最近になって車を怖がるようになってきた。 不安そうな顔で見上げてくるので、つないでいる手を大きく上下に揺らしてみると少し表情が和らいだ。 目の前を忙しく横切る視界の向こう側。まだ赤信号だ。 不意に昔の記憶がよみがえってきた。 あれはまだ私が幼かった頃のことだ。 ー ー ー ー 20年くらい昔のことだ。 全国の通学路で危険視されていた交差点を中心に、新型の飛び出し君が順次設置されていった。 飛び出し君といえば、それまでは黄色い帽子をかぶった子どもや人気キャラクターに似せた形の板が道路脇に立てられ、ドライバーへの注意を促す役割を果たしていた。 その進化版として登場したものが、この新型の飛び出し君だった。 試みが実施された当時は、その物珍しさゆえに大きな話題となった。 仕組みとして
嫁がの次に選んだの素組みが完成しました。 ひらひらしたクリアパーツは「ビームマント」だそうです…。 ↑ 嫁が作った2体を並べてみる。 唯のガンダム…えらいシンプルだな…。 するとどうだ!?…一体が前に乗り出した。 ミドリ「これからは…俺の時代だ!」 シロ「おい、新参者よ。調子に乗るな。」 ミドリ「なんだと?やるのか?」 ↓ 「 シュッ!! 」 ↓ ミドリ「は…はやい…」 シロ「…そんなレベルで戦場に出てみろ… ネットの海でこのブログのように恥をかくぞ…」 ミドリ「わ…わかりました…先輩…」 頑なに「合わせ目消し」用の接着剤を購入することを拒む嫁…。 Mr.セメントS 流し込みタイプ MC129 出版社/メーカー: GSIクレオス メディア: おもちゃ&ホビー クリック: 5回 この商品を含むブログ (6件) を見る Mr.セメント DX徳用 MC127 出版社/メーカー: GSIクレオス
↑ 行くならば今日だったんですけども…。 嫁が休日にしては早起きだったので、もしかしたら…と(・ω・` ))様子をうかがっていたんですけど、雨も降っている為か本日は自宅で待機→このまま「終戦」の流れとなりました。(まだ平日も開催されていますけどね…) やっぱり私が行っても違うだろうと。 嫁の意思ではじめたことですから。行きたくないのなら、それでいいんです。 ・・・・・・・・・・・・作成報告・・・・・・・・・・・・・・・・・ 二日前 ↓ 手の向きがやっぱりおかしい? なぜか置いてあったポーズがゾイドの←こいつっぽい状態で…。 ↓ で、本日確認したらウェポンが付け足されていました。 まだ素組み完成ではないそうです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー WORLD ORDER WORLD ORDER ダンス ¥150 provided courtesy of iT
約一月前、嫁が人生で初めて挑戦したプラモデル作り。 ガンプラ作成記録 ↓ ↑ ここからはじまって… ↓ ここに至る。 rasinban.hatenadiary.jp 次の段階として、 ↑ を塗装する予定となっていました… が… 先日、新しくできたショッピングモールに嫁と一緒に行くと、同じホビーショップをそこでも発見! //////////////////////////////////////// 時系列 ↓ /////////////////////////////////////////////////// ガンプラコーナーが入り口から奥に広がるのが2人の目に入る。 (大きな体をしたお兄ちゃん達が狭い路地で遊女を選ぶかのようにプラモデルを吟味している) ↓ なぜかここで嫁が軽くストレッチを始めてから入店。 (…入るのか?…なんかちょっと臭うジャージ姿の人が目の前にいるぜ…?) ↓ いろ
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