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贈る言葉
shirayuki221.hatenablog.com
春、という言葉が、こんなに怖くて、悲しくて、つらいものになると、いったい誰が予想できただろう。 田口淳之介くん。きみのいない春がやってくる。 海風が心地よい、わたしの地元にもももうすぐ春が来る。幼き日の田口くんは、かつてこの街にいた。 彼がこの街にいたことを地元の友達から聞いたのは、彼がこの街からいなくなったずっと後のことだった。だから、なにか思い出があるとか、そういうことじゃない。ただ、自転車で海っぺたを走ったり、電車の車窓から川沿いを眺めたり、そういうとき、ふと、彼もこの風景を見たんだろうかと思う。しょっぱい香りの海開きも、明るい夏祭りも、彼はこの街で迎えたんだろうかと思う。 そういうことを考えながら過ごすうち、彼のことを好きになっていた。テレビで見かける度、会ったこともないのに、懐かしいような気がした。おかしな話だけど。 大学入試の国立前期で落ちて、落ち込む暇なく後期試験になった。そ
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