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ほかの国々の成長を前に、停滞を続ける日本経済。輸出は減少し、高齢化に歯止めはかからず、グローバル化の波からは取り残されてしまった……転落一直線に見えるこの国に、未来はあるのか。フランス人歴史家クリスティアン・ケスレーが仏紙「フィガロ」で指摘した日本の問題点と、回復の条件。 GDPランキングでドイツに抜かれ、世界第3位の座を失った──このニュースは、日本のあらゆるメディアによって盛んに報じられた。 2010年、中国に抜かれて第3位となった日本は、さらにドイツによって──ドイツ経済もここ数ヵ月、低迷気味であるが──降格を余儀なくされた。これについてはすでに2023年10月の時点で、国際通貨基金(IMF)はドイツの名目GDPがおよそ4兆4000億ドルなのに対し、日本は約4兆2000億ドルに止まっていることを公表していたため、驚くには当たらない。 とはいえ、隣国の中国に追い越された苦い経験を持つ日
なぜわれわれは考え過ぎてしまうことがあるのか。考え過ぎて不安になってしまったら、どうすればいいのか。ニュージーランドの臨床心理学者がその心理学的な仕組みと対処法をわかりやすく解説する。 臨床心理学者である私のところには、考えが頭のなかでグルグル回ってやりきれないというクライアントがよく来る。 反芻的思考と考え過ぎは同じものと考えられることが多いが、少し異なる(ただし、つながってはいる)。反芻的思考は、頭のなかで考えが反復されることだ。それが考え過ぎにつながりうる。つまりそうした考えを、解決策もないまま分析する状態だ。 レコードが曲の同じパートを何度も何度も再生するみたいなものだ。レコードならその原因はたいていキズだが、われわれが考え過ぎる理由となると、話はもう少し複雑になる。 なぜわれわれは考え過ぎるのか? われわれの脳は脅威を予期し、そうした脅威への対処策を練り、自分を守るようにできてい
ADHDの患者が急増する一方、その治療薬は不足している Photo: Trevor Williams / Getty Images どこを探しても薬がない 米国では、ADHD(注意欠如・多動性障がい)の人たちの多くが、精神刺激薬のアデロール(日本では未承認)を頼っている。このアデロールが不足していると米国食品医薬品局(FDA)が発表したのは、2022年10月のことだった。 だが、深刻な状況はいまも続いており、常に薬が足りておらず、困っている人が大勢いる。何十軒もの薬局に電話し、車を走らせて探し回るも、手に入らないという。「独立系薬局の経営者の97%が、2023年初めにはアデロール不足を報告した」と米誌「インク」は報じている。 米「CBS」によれば、その主な原因は「ADHD治療を必要とする患者からの薬の需要の高まりと、政府による供給制限」だ。「新型コロナのパンデミックを境に、ADHD治療薬の
なぜナショナリズムが台頭しているのか? ──ヨーロッパ大陸各地のナショナリスト勢力の動きをどのようにとらえていますか。これが将来の欧州議会のバランスを変えることはありえますか。 これには歴史的な側面と民主主義の側面の二つがあります。まずは後者の民主主義の話からしましょう。いまヨーロッパの国々を見ると、多くの国で、民主主義が足りていません。 どこでも政治に携わるのが代り映えしないエリートたちばかりなので、政策の些末な違いこそあれ、政治は基本的には誰がやってもほとんど同じものになっている、というのが庶民の感覚です。誰も人民の声に耳を傾けず、誰も人民の声を尊重していません。 人々が非エリートの政党に目を向ける風潮が出てきているのはそれが理由です。非エリートの政治家なら、真剣に人民の声に耳を傾けてくれるのではないかと希望を託したくなるからです。 民主主義がうまく機能していないというこの問題を多くの
低成長を続ける日本経済が回復する兆しはなかなか見えず、世界3位を維持してきた名目GDPも2024年2月にドイツに抜かれた。欧州議会の顧問などを務める経済学者ダニエル・グローは日本経済低迷の原因を独自に分析し、欧州諸国に「同じ失敗をするな」と警鐘を鳴らす。 日本はもっと、よくなっていいはずだ。 労働者の教育レベルは高く、かつよく訓練されているし、社会全体としての投資額は多くの先進諸国を上回っている。たとえば日本における研究開発費はGDPの3.3%を占め、最近まで米国よりも高かった。にもかかわらず、日本経済は相対的に低迷しつづけている。 ドイツ人経済学者で欧州政策策定協会の所長でもあるダニエル・グロー。欧州各国の政府や中央銀行の顧問を経て、現在は欧州議会の顧問を務める。米シカゴ大学で経済学の博士号を取得。専門は金融・財政政策、為替レート、気候変動など Photo: Puramyun31 / W
インドの成長は欧州を凌ぐ ──インドは中国と同じ経済成長の道を歩むのでしょうか。 難しい質問です。私は常にインドについては楽観的でした。政治の問題点は多いですが、ゆっくりながらも所得の増大は続くでしょう。 インドの成長は急激であり、数年で中国の成長を上回ると思います。その成功はテクノロジーとインフラの発展、エリート層の知的水準の向上に支えられているのです。
なぜロシアと協力する? ──あなたはロシアのプーチン大統領と近い関係にあると、EU加盟国の多くから批判されています。中国ではプーチンと握手を交わしています。ご自身の価値観は、EUよりもプーチンに近いと感じていますか。 ロシアはヨーロッパとはまったく異なる文明に属します。自由を価値観の根幹に据えるヨーロッパ大陸の文明と比較するのは無理です。ヨーロッパでは、政治の究極の目的は自由です。政治とは、市民にできるだけ多くの自由を与えるためのものになっています。 ところが、ロシアはそうではありません。ロシアの最大の課題は、一つにまとめあげるのがほとんど不可能と思える広大な領土の統一を保つことであり、市民の自由ではないのです。 ですから、ロシアがだんだんヨーロッパの国のようになると期待するのは妄想の類であり、絶対に無理な話です。ロシアの歴史、政治、地理、伝統のどれを見ても、ヨーロッパの国とは異なるのがわ
「格差が減った」と感じにくい理由 ──あなたによれば、私たちは「格差の大収斂」の時代に生きていて、世界はこの100年間で類を見ないほど平等になっています。しかし、そのように感じる人がほとんどいないのはなぜでしょうか。 人々は、主に自分の国で起きていることに集中します。1980年から国家内部での不平等の増大がみられました。フランスのような例外もありましたが、米国や英国、中国、インドで起こっていたのはまさにそれであり、それらの国々の人々の関心を占めていました。 そして、経済学者のトマ・ピケティが『21世紀の資本論』を出版してからは、世界で不平等が増大しているという認識は一段と広まりました。 私が提唱した「エレファント・カーブ」では、グローバルで見ると、1%の富裕層とアジアの中間層が、他グループとは対照的に所得を増やしている事実を示しています。 世界的な不平等が縮小していることは、アジアで起きて
チリ最古、そしてもっとも過密な監獄で生きる囚人たちには、慰めの存在がある。塀に登り、檻をすり抜け、受刑者のベッドで眠る……猫たちだ。 ネズミを捕らせるために連れ込まれたと話す人もいる。ただ紛れ込んだだけだという説もある。 ともかく、このチリ最大の監獄の住人、職員たちのあいだで、最古参の者たちに至るまで一致している意見はこうだ──いまいる人間の誰よりも前から、この監獄には猫たちが住んでいた。 何十年にもわたって、彼らは監獄の高い塀の上を闊歩し、トタン屋根の上で日向ぼっこし、一部屋あたり10人の男たちが詰め込まれた雑居房のあいだを走りぬけてきた。看守たちにとってみれば、彼らはちょっと気になるやつらというだけで、おおかた無視されていた。猫は増えつづけ、やがては数百匹にもなった。 そのとき、看守たちはあることに気がついた。猫たちの存在はネズミ問題を解決するだけでなく、囚人たちに良い影響を与えていた
温水洗浄や自動乾燥の機能を備えた多機能なトイレは日本の“お家芸”として世界中のメディアから注目されてきた。 そうした“トイレ先進国”の日本の公衆トイレ改修プロジェクトに携わった英国人専門家について英紙「テレグラフ」が報じている。同紙によると「日本人のためにトイレを作るというのは、炭鉱で栄えた英ニューカッスルに石炭を売りつけるような行為」。 この専門家はプロジェクトへの参加を通じて得られたさまざまな知見を英国にも共有したいと話しているが──。 改修プロジェクト、参加外国人は2人 東京・幡ヶ谷の水道道路と中野通りの交差点の角にある公衆トイレでは、VIP級の体験ができる。 洗浄機能付きの暖房便座が設置され、「サウンド・プリンセス」を意味する音姫と呼ばれる洗浄音を出して排泄時の恥ずかしい音を消すことができる装置が組み込まれている。 建物は白い壁に囲まれており、明るく風通しも良い。この場所では、い
【今回のお悩み】 「本当の意味で『優しい人』とは、どんな人なのでしょうか?」 自分に有害な影響を与える人と一緒にいたいと思う人はいないでしょう。また、自分がそんな人間になりたいとも考えないはずです。では、「優しい人」ならどんな行動をするのでしょうか? どんな意見でも受け入れてくれる人? 相手が必要なことを何でもやってくれる人? アドラー心理学に詳しい岸見一郎先生に訊いてみました。 優しい人は何事も自分で決めようとはしません。自分が決めたらその決断には責任が伴うからです。たとえば、一緒に食事をしようということになったときに、何を食べるかを自分で決めずに、必ず一緒に食事をする相手に何が食べたいか尋ねる人がいます。そのような人は、「優しい人」と思われるでしょう。 相手の意見を聞かないで決める人がいれば、そのような人をリーダーシップがあって頼りがいがあると思う人がいるかもしれませんが、二人の関係が
見直されたトヨタの決意 この10年間、自動車業界でもっとも声高にハイブリッド車を擁護してきたトヨタの経営陣が、いま、ある種の正当性を感じていたとしても不思議はない。 バッテリーと従来の内燃機関(エンジン)を組み合わせたハイブリッド車に多額の投資をするというトヨタの頑固なまでの決意は、これまで投資家と環境保護団体の双方から批判を浴びてきた。 消費者は割高なEV(電気自動車)の購入をためらうに違いないと、トヨタは繰り返し訴えてきた。そしていま、欧米市場で価格の高止まりと充電インフラの不備への懸念から、バッテリー電気自動車への熱狂が冷めつつあるなか、かつて異端扱いされていたトヨタの主張が見直されつつある。
日本の既婚者のセックスレス率が高いことは世界でも広く知られているが、最近の調査によれば夫婦仲は良好だという人が多いという。夫婦の夜の営みの障害となる日本独特の要因を中国紙が考察した。 日本の夫婦のおよそ7割が、セックスレスだという。 ネット広告などを手がけるレゾンデートル社が2023年10~12月に20〜59歳までの4000人の既婚者の性生活を調査した。その結果、24.3%が「ほぼセックスレス」、43.9%が「完全にセックスレス」だと回答。つまり20~50代の夫婦の68.2%がセックスレスの傾向にある。 20代の既婚女性でセックスレスと答えた人の割合は約50%だったが、これが30代になると67.8%に上がる。20代の既婚男性の場合は53.4%、30代では71.4%になった。もっともその比率が高いのは50代で、女性は77.4%、男性は80.8%だった。 リプロダクティブ・ヘルス/ライツの啓発
2014年、米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリーが、IS(いわゆる「イスラム国」)によって斬首された。月日が経ち、彼の母親ダイアン・フォーリーは、自身の息子を殺したIS戦闘員の一人に会いに行く──。 この緊迫した瞬間を共にしたのが、アイルランド出身の作家コラム・マッキャンだった。彼はダイアンとIS戦闘員の対面をノンフィクションとして描き、2024年1月に上梓した。新著について、仏紙「ル・モンド」がマッキャンにインタビューしている。 ISの危険性を知らしめた映像 インタビューの途中、作家のコラム・マッキャンの青い目に何かが起こり、急にそのまなざしの圧が強くなった。『世界を回せ』(2009年全米図書賞受賞)などの小説で知られるこの作家は、こう言った。 「人生に何度か訪れる、特別な瞬間ってありますよね。そのときのことが頭にこびりついて離れず、人生の終わりの日々まで繰り返し話すことになるよ
なぜ古代世界には「去勢」の風習があったのか? 去勢された者はどんな存在と見られていたのか? 古代ローマ世界での場合を中心に、イスラエル紙「ハアレツ」の考古学記者が深掘りする。 世界で初めて故意になされた雄の去勢が何だったかは、永久に不明のままだろう。現代の歴史家たちは、去勢は畜産から始まったと示唆している。それは、望ましくない繁殖を減らし、より穏やかで、より肥えた牛や豚を生み出すためだったというのだ。 人間の男性の去勢はどうやら、罰の一種として最初に導入されたようだ。古代の史料は、誰が最初にそれを始めたのかを明快に語っている。これほど倒錯したことを思いつけるのは、女しかいないだろうと──。 ギリシャの歴史家ヘラニコス(前5世紀末に著述活動)は、アケメネス朝ペルシア(前550〜前330年)の王妃アトッサ(在位前520〜前486年)が最初の宦官を生み出したとしている。古代ローマ後期、ローマの住
英「エコノミスト」誌は約200年前から、毎年1月に、その年を予測する記事を掲載してきた。しかし2020年1月のその記事は、間もなく世界を襲う致命的なパンデミックには一言も触れていなかった。また2022年の予測のいずれも、ロシアがウクライナに侵攻する可能性には言及していなかった。この由緒ある経済誌には、いずれの恐ろしい出来事も予測し得なかった。それは誰にもできないことだった。 だが、もし最大のリスクは常に予見できないものだとすれば……、もし今年、角を曲がったところで得体の知れない怪物が私たちを食べようと待ち伏せしているとしたら……、予測する意味はあるのだろうか。何かに備えることは完全に無駄なのだろうか。 「無駄ではない」とモーガン・ハウセルは言う。元ウォール・ストリート・ジャーナル紙の米国人経済アナリストで、行動投資の専門家で、成功目覚ましいベンチャーキャピタル「コラボレーティブ・ファンド」
「建築界のノーベル賞」とも呼ばれるプリツカー賞の2024年の受賞者に山本理顕が選ばれた。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が審査員の評価や山本へのインタビューを交えながら、彼の建築が人々に愛される理由に迫る。 「なぜこんな奇妙な家を?」 控えめな建築で、コミュニティやつながりを静かに強調する建築家の山本理顕(78)が、建築界最高の栄誉であるプリツカー賞を受賞した。 受賞者が発表された3月5日、審査員は山本をこう称えた。 「個人住宅であれ、公共インフラであれ、学校、消防署、市庁舎、美術館であれ、彼の設計には常に公共的で友好的な側面がある。コミュニティに対する彼の絶え間なく、慎重かつ実質的な配慮は、人々がさまざまな方法で集うきっかけとなる公共のインターワーキング(相互作用)スペースのシステムを生み出した」 パブリックとプライベートの領域の境界をなくしたいという山本の思いは、1977年に完成した彼の
デニス・レイダーは10人以上の女性を残虐な手口で殺害しながら30年以上も逮捕を免れ、全米を震撼させた。「B.T.K.キラー」の名でも知られるこの凶悪犯罪者の娘ケリー・ローソンは現在、父の犯行とみられる未解決事件の捜査に協力している。 愛憎入り混じる複雑な感情を抱えながら、父の犯行の軌跡をたどることは「癒しのプロセスだ」と語るローソンに米紙が取材した。 ケリー・ローソンは自分の人生を、父親が連続殺人犯だと判明する「前」と「後」に分けている。 「前」の人生では休暇になると、キャンプや釣りに出かけた。父親と一緒にツリーハウスを建て、庭仕事をし、毎週日曜日には教会に通った。 「後」の人生は2005年、ローソンが26歳のときに始まった。数十年にわたり残虐で凶悪な殺人を繰り返した容疑で、父親のデニス・レイダーを逮捕したとFBIに告げられたのだ。
2020年に国家安全維持法が施行された香港では政治を公に批判できなくなり、表現の自由は失われた。その状況に幻滅し、香港の未来を悲観する人々が続々と、英国をはじめとする民主主義国に移住していった。 2020年末の香港の人口は750万人弱だったが、非営利組織の「フリーダム香港財団」によると、2021年から2023年半ばまでに香港から約50万人が去ったという。 そんななか、米メディア「ブルームバーグ」によると、最近、香港から中国本土に大勢の人が押し寄せるようになっているという。大半の人々が向かうのは、国境を越えてすぐのところにある深圳市だ。かつて漁村だった同市は、いまではファーウェイやテンセントなど中国最大のハイテク企業の本社を擁し、人口1300万人の大都市になった。 ほとんどの人々は深圳の安い物価に魅了され、週末に買い物や娯楽を楽しむために香港から向かう。一方、家賃の安さなどを理由に、香港から
ポジティブに聞こえる言葉であっても、ときには権力の濫用や相手への圧力につながるおそれがある。80年代から令和へのタイムスリップをテーマにしたドラマ『不適切にもほどがある!』の第一話では、便利な「頑張れ」という言葉が槍玉にあげられた。 これは、「努力主義」が現代日本人のためになるのかという問題ともつながると、英紙は指摘する。「頑張れ」という言葉の使われ方には、よりセンシティブになる必要があるかもしれない。 あらゆる場面において、「頑張って」という言葉は、日本の原動力として長く君臨してきた。努力や粘り強さ、精神力、行動を後押しする、ニュアンスに富み、文脈依存性の高い呼びかけだ。 その意味は、可能なことに対しては「あなたならできる」であり、不可能に対しては「ベストを尽くせ」となる。また、土木技師に向けては「どんどん大きくしろ!」、半導体技術者には「できるだけ小さくしろ!」となり、試験の前に厳かに
ニューファンドランド・ラブラドール州の州都セント・ジョンズにあるクイディ・ビディ Photo: Michael Winsor ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』を東京で観る機会があった。あの9.11同時多発テロに世界が揺れるなか、カナダ東端ニューファンドランド島にある小さな町ガンダーであった実話を基にしたシナリオだ。 このミュージカルで私が感動したのは、ニューファンドランド地元民たちの熱い人情、そして人種、宗教、ジェンダー、果ては生物種を問わず、誰でも受け入れるオープンさだ。まさに9.11とそれに続く戦争のアンチテーゼともいえる世界がそこにあった。 劇場を後にして有楽町辺りを歩きながら、ニューファンドランドに想いを馳せているとき、ラッセルのことを思い出した。ちょうど20年前、私がカナダ西岸の都市バンクーバーに留学したとき、カナダ東岸のニューファンドランド島からやってきた、
自衛隊で最も新しい駐屯地は、石垣島に建設された。米軍普天間基地の辺野古への移設問題で、国と沖縄県は激しく対立している。 こうした軍事化が急速に進むなか、沖縄に暮らす人々はどう考えているのだろうか。台湾有事を想定しておこなわれている避難訓練を取材しつつ、現地の人々の声と「世代間のギャップ」を米紙「ロサンゼルス・タイムズ」が深掘りした。 「日本中が危険だ」 最初の空襲警報が鳴ったとき、草で覆われた公園でうろうろしていた人々はほとんど動かなかった。5歳になるサノ・タエは母親の手をつかんだ。 周りにいる黄色いビブスをつけた人のなかには、心もとなく歩きだす人もいた。だが、本当に緊迫感が高まったのは、困惑した群衆のなかを青いユニフォームを着た男性が駆けていったときだった。 「もう一度やります」と、その男性はメガホンで叫んだ。 またサイレンが鳴り響くと、「たったいまミサイルが発射されました。ただちに避難
クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 米フォード・モーターの電動ピックアップトラック「F150ライトニング」を生産するミシガン州の工場は、かつて熱気に包まれていた。 2021年にはジョー・バイデン大統領が来訪し、驚異的なスピードを誇る同車に試乗した。22年春に第1号車が完成する前から、フォードは同工場を拡張して生産可能台数を4倍にすると発表した。 そうした熱気は急速に失われつつある。フォードは同工場の生産台数を半減し、従業員は他の工場に異動している。その多くはガソリンエンジンのピックアップトラックやスポーツタイプ多目的車(SUV)を生産している工場だ。 デトロイト郊外のフォード工場でピックアップトラックの検査を担当しているマシュー・シュルテさんは、突然の変化に「少し驚いた」と
「一緒にセルフィーを撮りたくなる」25歳のカリスマ議員 ヨーロッパ各地で、極右政党が相次いで支持を伸ばしている。これを下支えしているのが若者で、ヨーロッパ全体の政治情勢を再形成しつつあると、米紙「ワシントン・ポスト」が報じている。 たとえば、3月10日に総選挙が実施されたポルトガルでは、極右政党のシェーガが議席数をこれまでの約4倍に伸ばした。 シェーガは、高失業率、低賃金、手頃な住宅価格などの社会経済問題に対処するという約束を掲げているが、成功の最も大きな秘訣は「魅力的なソーシャル メディア・キャンペーン、そして、カリスマ的な若いインフルエンサーを起用していること」だ。
海外からの投資が過熱する日本有数のスキーリゾート地ニセコでは、いまコスト高騰などが原因で手を引く開発業者が増えている。 米誌「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」が、開発計画を断念したニセコの事業者たちに話を聞いた。 開発コストは10年前の「3倍」 近年、ニセコから巨額の利益を得ようとしている開発業者らの思惑が外れつつある。海外の投資家たちからの投機により、日本の地価が史上最大レベルに高騰しているからだ。 ニセコで何年間も働いてきた開発業者たちによると、10年前と比べて開発費用が3倍にも跳ね上がったという。この2年間だけでも約30%もの値上がりだそうだ。銀行からの融資が難しくなったことや、行政が大規模な開発を制限したこともあり、新規投資のハードルは高くなっている。 「いまニセコに投資する人は、かなりのチャレンジャーです」と、ニセコの不動産会社ニセードの創業者ジョナサン・マーティンは語る。
トヨタといえばEVシフトへの遅れを指摘されていたが、ハイブリッド車に注力するという決断が効を奏していると、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じている。 EVに「無気力だった」トヨタ 今日のようなハイテク、ハイリスクな自動車業界では、運勢はすぐに変わってしまうものであり、トヨタ自動車ほどその好例はない。 少し前まで、トヨタは電気自動車の分野で危険なほど遅れをとっているように見えた。電気自動車のパイオニアであるテスラは急成長を遂げ、世界で最も価値のある自動車メーカーとなった。テスラの成功を見て、ゼネラル・モーターズやフォード・モーターといった他社は、多くの消費者がバッテリー駆動の自動車やトラックに乗り換える準備が整っていると判断し、遅れを取り戻すために数百億ドルを投資し始めた。 しかし、トヨタはもっと慎重だった──あるいは無気力だった、と批判する向きもある。トヨタは、これまで米国でわずか2車種
ゴールドマンにもの申す! 人呼んで、「七人の侍」。2月下旬にゴールドマン・サックス証券のアナリストたちが発表したタイムリーなレポートが東京で話題となっている。 それはアメリカの株式市場を支配する7銘柄を示す「マグニフィセント・セブン」(映画『荒野の七人』の原題)の日本版ともいうべき、日本国内の有力銘柄を示すものだった。 ゴールドマン・サックスが一流銘柄をふるいにかけた結果、残ったのは以下である。 トヨタ自動車、スバル、三菱商事。これに加え、SCREENホールディングス、アドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロンの4つの半導体企業である。 個人的には半信半疑の内容だ。スバル? ホントに? 本家「マグニフィセント・セブン」は、ただ有力銘柄をまとめただけの用語ではない。バンク・オブ・アメリカのアナリスト、マイケル・ハートネット発案のこの用語が人に知れ渡ったのは、これらの銘柄の成績が良いというだけ
米国の生活において文化的、歴史的、美学的に重要な音楽として、米国議会図書館に登録された『スーパーマリオブラザーズ』のテーマ曲。同曲を作った任天堂の近藤浩治から、ゲーム音楽作りの秘訣について米紙「ワシントン・ポスト」が聞いた。 米国の歴史にも重要な曲 近藤浩治(62)は、米国議会図書館の「国家保存重要録音登録簿」に登録される音楽がどんなものなのか、理解していなかった。そのリストに並んでいたのは、ジョン・レノンの『イマジン』、ビリー・ホリデイ、マイルス・デイヴィス、アレサ・フランクリン、『イパネマの娘』などだった。 「並んでいるのは有名な曲、もっと有名なもの、それより著名な曲…という感じでした。調べれば調べるほど、どれも信じられないほど重要なものだったんです」。近藤は通訳を介して米紙「ワシントン・ポスト」のインタビューにそう答えた。 2023年、名古屋出身の近藤の作品は、米国での生活にとって「
景気回復の高揚感はない 1980年代の日本は株価と不動産価格の高騰によって年平均4%の経済成長を遂げ、輝かしい時代を謳歌していた。 だが同年の夏には、この状況を案じる人がいた。現在、日本銀行の総裁を務め、当時は東京大学で教鞭をとっていた植田和男だ。彼は「最近の株高はバブルであり、いつ崩壊してもおかしくない」と日本経済新聞のコラムで警鐘を鳴らした。 その年の5月、日銀はインフレを未然に防ぐために利上げを実施し、1990年8月までに公定歩合を2.5%から6%へ段階的に引き上げた。資産価格は急落し、金融機関や不動産業者が大量の不良債権を抱え込むと、これが金融危機の引き金となる。その後、日銀は利下げに転じ、1999年までにインフレ率は実質ゼロを下回った。 2000年代、日本経済は長く低迷し、実質GDP成長率の平均は0.7%ほどだった。穏やかなデフレ状態が続く一方、日本国民は給料が上がるなどという期
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