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雑学
news.yahoo.co.jp/byline/sonodahisashi
容疑は(母親に対する)自殺幇助ということである。自殺幇助とは、他人の自殺を手助けするということであるが、なによりも死因について疑問が残る。 司法解剖の結果、死因は向精神薬による中毒死だということである。好ましいとは思わないが、すでにマスコミ報道で実際に使われた薬物名が公になっている。報道では、猿之助に処方された薬を、かれが両親に手渡したといわれている。量としてはそれが大量であったとは思われないし、医療の専門家の間では、この薬だけで死に至ることはほぼ不可能だという意見である。 報道では、亡くなった両親の顔にはビニール袋がかぶせてあり、猿之助が両親の死亡を確認してからそれを取り除き、薬のパッケージとともにゴミとして処分したという話もある。 これらを総合すると、死因が薬物による中毒死だとする警察発表には疑問が晴れない。もしも死因が中毒死以外で、かりに窒息死だとすると、実際に手を下して両親の命を止
■はじめに 先日、中田敦彦氏の〈YouTube大学〉で、今大きな話題になっている「ジャニーズ、児童虐待問題」が取り上げられました。私もこれを視聴しましたが、複雑な内容が丁寧にまとめてあって、問題(事件)の本質がよく理解できたとともに、彼の勇気ある行動に感服し賞賛したいと思います。一人でも多くの人に観ていただきたい動画だと思いました(現在、再生回数が300万回を超えています)。 ところが残念なことに、この動画を観た方々のコメントを見ると、法的な理解についての誤解が散見されますので、刑法学者として少しだけ法的な状況について補足したいと思います。 動画の〈41:46〉あたりから日本の法的状況についての説明があります。だいたい次のような内容です。 明治40年制定の刑法が、刑法の一部改正があった2017年までアップデートされてこなかった。つまり、強姦罪(現在の強制性交等罪)の被害者は女性のみであり、
■はじめに 1970年に制定された規制物質法(Controlled Substances Act、以下ではCSAと略す)は、アメリカの薬物規制に関する最も重要な法律である。現在、連邦法上、マリファナ(大麻)の栽培、所持、流通、消費は、このCSAによって厳格に禁止されている。 CSAは、規制するすべての薬物について5つのカテゴリーを設定し、それに応じて法律に従わない使用を罰している。マリファナはヘロインやLSDなどとともに、もっとも厳しい〈スケジュールⅠ〉で管理されているため、CSAはマリファナを規制するというよりも、実質的には禁止しているに等しい。 しかし、州レベルに照準を合わせると、現在約3分の2以上の州が、医療目的か、あるいはさらに進んだ娯楽目的でのマリファナ使用を認めており、マリファナ規制について連邦と州のねじれた関係が続いている。連邦政府も州のそのような動向には理解を示してきたとは
■祈りと法 身の周りで理不尽な出来事が生じたときや、真摯な努力が少しも報われず逆運に嘆くときなどに、人は「なぜ」という根源的な問いを発し、その答えを求めて苦悶します。 たとえば、愛する人が理不尽な死を遂げたとき、その死の意味を求めて人は苦しみます。医師から、死因は窒息ですとか、心臓麻痺ですといった説明をいくら受けても、その苦しみが消えることはありません。「なぜ、死んだのか」という根源的な問いに対する答えは、自然科学の次元には見つからないのです。 このようなとき、人は〈祈り〉に向かいます。自らの日常的な現実を超え、超自然的な、人知を超えた大きなものに自己を委ねようとするのです。そのときに修行を積んだ祈祷師や霊媒師、僧侶などに共に祈ってもらい、心の平穏が得られることはよくあることで、それに謝礼を贈り、また受け取ることにも問題はありません。 しかし、その方法が社会的に許容される限度を超えたときに
■はじめに 阿武町誤振込み事件で山口地検は、6月8日、電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)で容疑者を起訴しました。 阿武町4630万円誤給付 容疑者を電子計算機使用詐欺罪で起訴(毎日新聞) - Yahoo!ニュース阿武町誤入金、容疑者を再逮捕 別の業者に300万円振り替え容疑(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース これについては、私はすでに同罪の成立は難しいとする論考(下記)を発表していますが、今回の起訴を受けて、改めて検討しました。 ■電子計算機使用詐欺罪について 刑法246条の2(電子計算機使用詐欺) 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者
■はじめに 4630万円の給付金誤振込み事件が思わぬ進展を見せ、とうとう国会で岸田総理がオンラインカジノを取り締まると約束しました。 オンラインカジノは、以前からとくにお金の不透明な流れが指摘されていました。しかしこれを賭博という観点から問題にするならば、刑法の根本的な整理が必要です。 岸田総理、オンラインカジノ「厳正な取り締まりを行う」(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース ■賭博罪の具体的な内容 まず、最初に刑法の条文を確認しておきます。 (賭博) 第185条 賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。 (常習賭博及び賭博場開張等図利) 第186条 常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。 2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以
■はじめに 山口県阿武町の給付金誤振込み事件。口座から4千数百万円を引き出して使ってしまったと言っている誤振込みの受取人が、電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)で逮捕されました。 この電子計算機使用詐欺罪とはどのような犯罪で、この事件に適用可能なのかについて検討してみました。 4630万円誤送金問題 男を逮捕 - Yahoo!ニュース【速報】山口・阿武町4630万円誤送金問題 田口翔容疑者(24)を逮捕「ネットカジノで使った」容疑認める 電子計算機使用詐欺の疑い 山口県警(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース ■昭和62年にできた比較的新しい犯罪類型本罪ができたきっかけ 1980年代あたりからビジネスのさまざまな場面にコンピュータが使われ出し、これを悪用する事案が目立ってきました。とくに銀行のオンライン端末を不正に操作した巨額の横領・詐欺事
■はじめに 先日、阿武町が、四千数百万円あまりを引出して返還を拒否し、行方不明になっている24歳男性(以下では、「A氏」とする)に対して、不当利得返還請求の訴えを起こし、公金の回収に動き出しました。 その後、町はこれまでの経過を説明した文章を町の広報誌「あぶ」に掲載し、ホームページで公開しました(現時点では、アクセスが集中しているためか、つながらない)。この一連の措置は説明責任のある町としては当然のことですが、気になったのは町がA氏の住所と氏名をネットで一般公開したことです。それは、次の二つの点で問題だと思われます。 ■A氏の生命身体を危険にさらしたことにはならないか A氏はすでに振り込まれた口座から誤振込みになった金額をほぼ全額引き出し、一部は他の口座に移したことが判明しているものの、その他の金銭についてはどのような形になっているのかが現時点では不明です。したがって、現在行方の分からない
■はじめに 山口県阿武町の職員が、1世帯10万円の給付金463世帯分を誤って1世帯に過剰に振り込んだ事件がありました。返還を求める町に対し、世帯主は「金は別口座に動かし、元に戻せない。罪は償う」と拒否しているということです。 これは誤振込みといわれている事案で、ときどきニュースにもなりますが、法的には難しい問題があって、阿武町も解決に苦慮しているということです。法的な問題状況について整理しました。 給付金4630万円を1世帯に誤送金、返還拒否の世帯主「罪は償う」…議長「打つ手ない」 : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン4630万円誤給付受けた申請者が返金拒否 「既に金動かした」 | 毎日新聞4630万円「返還拒否」は罪に問えない?後味悪い給付金誤入金(産経新聞) - Yahoo!ニュース ■法的な問題はどうなっているのか学説の状況 誤振込みされた金額については、以前は、たとえば郵
世界的な超巨大ハイテク企業は、何年もの間、娯楽用はもちろんのこと、医療用または産業用大麻の合法化を頑なに拒否してきました。ところが、世界的に大麻規制緩和の動きが進んできたことで、2021年6月にAmazonが「大麻合法化を支持する」と表明して、大きな衝撃が走りました。 今までAmazonは、一般の企業と同じように、薬物検査で陽性反応が出た従業員を解雇してきましたが、今後は、連邦レベルでの大麻の合法化を支持し、大麻使用の犯罪記録を抹消すると発表し、他の企業も大麻合法化を支持するべきだとしたのです。 Amazonが「大麻の合法化」を支持すると表明 - GIGAZINEAmazonが大麻合法化に向けて動き出した(園田寿) 世界的な超巨大企業の決定ですから、その影響力は間違いなく想像以上に大きなものがあります。 そして、ほとんど気づかれなかったのですが、実は、Appleもほぼ同じ時期に大麻の合法化
■はじめに 最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)が、コインハイブ事件について無罪の結論を出しました。 最高裁(第一小)令和4年1月20日判決]([裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan 本稿では、下級審で判断が分かれたのは何が問題だったのか、そして、最高裁はそれにどう答えたのかについて解説したいと思います。 ■コインハイブ事件とは何だったのかコインハイブ(Coinhive)とは何か 本件は仮想通貨(暗号資産)に関して生じた事件ですが、そもそも仮想通貨とは、そしてコインハイブとは何でしょうか。 仮想通貨もいわばデジタルのお金ですが、国が紙にお金としての価値(信用)を与えている円やドルなどの法定通貨とは根本的に異なります。 仮想通貨は、特定のネットワークにつながった人たち(仮想コミュニティ)の中で「ある情報」を「お金」として認め合った上で「お金」として使用されているものです
■はじめに 先日、京都のアロマ・リラクゼーション店で、施術する男性から客の女性がわいせつな行為をされ、警察に被害を訴えるも、担当の女性検事から立件は無理だといわれるという事件がありました。 「“仰向けになってください”って言われて、この辺を施術されたとき、手がだんだん紙のブラジャーの中に入ってきてるなって。これは何なんだろって思って、“ちょっとやめてください”って言うのも、ここの密室でほかに誰もいないし、抵抗したほうが何されるかわからないかなって」 「だんだんエスカレートして胸をなめてきたりもしましたし、紙パンツも脱がされ・・・」(被害者の女性) 【ABC特集】リラクゼーション店でわいせつ行為 被害女性に立ちはだかる司法の壁(ABCニュース) - Yahoo!ニュース 記事の中で私も少しコメントしていますが、法的に複雑な問題があって分かりにくいと思いますので改めて補足的に説明したいと思いま
■はじめに 日本では、令和2年1月に新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」)にり患した患者が発見されてから1年になります。その間、いくつかの法改正によって、新型コロナに関する新たな法的義務が作られましたが、全体としてかなり複雑になっていますので、現時点における新型コロナに関する国民の義務という観点からそれらを整理しておきたいと思います。 1.新型コロナに関する国民の義務に関しては次の3本の法律が重要です。 1. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、「感染症法」) 2. 新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、「特措法」) 3. 検疫法(検疫法は、海外からの航空機や船舶などの乗員、乗客、動植物によって病原体が国内に侵入することを防ぐことが目的ですので、本稿では対象外とします)。 感染症は、当然のことながらその感染力や致死率などに違いがありますが、既知の感染症
■はじめに 東京第6検察審査会は、賭博罪や収賄罪で告発され不起訴処分となった黒川弘務元東京高検検事長について、賭博は「起訴相当」、収賄は「不起訴相当」との議決を行いました。 この議決書は、江川紹子氏が次のところで公表されています(以下、引用もこれに依ります)。 江川紹子「元検事長の賭けマージャン・検察審査会が『起訴相当』を議決(議決書全文掲載)」 本件については審査会内部での議論も大いに紛糾したことが予想され、難しい判断だったと思います。本当にご苦労さまでした。しかし、議決書を読んで、私は違和感を覚えました。 ■賭博についての考え検察官と審査会の判断 検察官が不起訴にした理由はいろいろありますが、要するに本件麻雀が娯楽性が高く、射幸性も低い(いわゆる「点ピン」で、一人あたり一晩で数千円から2万円程度が動く程度)というのが主な理由でした。 これに対する審査会の判断は、(1)賭け金や賭け率(射
小池百合子氏に学歴詐称があるのではないかと問題になっています。 彼女は、今までにマスコミに何度かカイロ大学の卒業証書だとして、それらしきものを示していますが、どれも映像がはっきりせず、客観的にそれが本物だと断定されていません。 そのような中で、カイロ大学みずからが、「小池百合子氏が1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する。卒業証書はカイロ大学の正式な手続きにより発行された」との声明を出すにいたり、問題は一挙に沈静化する兆しを示しているようです。 小池都知事は「1976年に卒業」 カイロ大学が声明 確かに、カイロ大学が正式に〈小池氏は卒業生である〉と述べているならば、小池氏に〈学歴詐称〉はないことになり、公職選挙法(235条2項)の虚偽事項公表罪は成立しないことになります。 しかし、それで問題はすべて解決するかといえば、そうではありません。カイロ大学の声明が真実であ
渦中の人、訓告処分を受けた黒川弘務元検事長に対しては、私も行政処分としては懲戒が妥当で、そうすべきだったと思います。しかし、それは黒川元検事長が「賭け麻雀をしたから」ではなく、彼が長年にわたってマスコミ記者といわゆるズブズブの関係で、問題となった夜も記者が提供したハイヤーに便乗し、その中で特別に取材を受け、情報提供していたという、その行動が懲戒に相当するのではないかと思われるからです。これらの行為は、場合によっては収賄罪とか国家公務員法(国公法)上の守秘義務違反の罪に発展する可能性があるような重大な行為で、事によっては懲戒免職のみならず刑罰も科せられる可能性があります。 そもそも賭け麻雀については、どのような意味においてそれが犯罪なのかについて曖昧な点がありますので、賭け麻雀ばかりが強調されますと、本当に問題とすべき行為が霞んでしまうのではないかと心配です。 公務員が違法行為を行った場合の
渦中の人、黒川弘務東京高検検事長の賭け麻雀疑惑という衝撃ニュースが報じられました。 文春オンライン:黒川弘務東京高検検事長 ステイホーム週間中に記者宅で“3密”「接待賭けマージャン」 週刊文春(5月28日号)によると、黒川検事長は、5月1日夜、知り合いの新聞記者3名とそのうちの1名の自宅マンションで6時間半にわたって「賭け麻雀」を行い、記者が用意したハイヤーで帰宅し、13日にも同じ行動が繰り返されたということです。 検察官の定年延長を規定する検察庁法改正法案が審議され、しかも東京都はいわゆる三密を避け不要不急の行動を自粛するように要請している中での行動だけに、国民の厳しい目が向けられています。 直近のニュースでは、黒川検事長は、21日夕刻に安倍首相に対して辞表を提出し(22日の閣議で承認予定)、〈訓告処分〉を受けたとのことです。 毎日新聞:黒川検事長が首相に辞表提出 訓告処分、賭けマージャ
コロナ禍で国民生活が大打撃を受けている最中、議論がこれだけ紛糾することになった事の発端は、今年(2020年)1月31日の閣議決定です。 政府は、1月31日に東京高検黒川弘務検事長の定年延長を国家公務員法の解釈変更というかたちで閣議決定しました。 そして、その後検察庁法を大きく変える改正法案が提出されたわけですが、なぜこのような時期に、しかも今まで準備されてきた法案とまったく異なる唐突な法改正となったのかについては、どうも黒川検事長を次期の検事総長にするためではないか、あるいは解釈変更を後付で正当化するためではないのかといった憶測が渦巻いています。その理由はこうです。 1.現行の人事システム まずは現行の人事システムがどうなっているかを確認します。 検察庁法22条は、「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。」(第22条)と規定しています(図1
■はじめに 検察官の定年延長を規定した検察庁法改正法案の審議が国会で始まっています。自民党は、今週内にも衆議院を通過させる意向ですが、この検察官の定年延長については批判的な意見が強く、ツイッターでは何百万もの国民が反対の意見を表明するという異常な事態になっています。 他方、多くの批判的意見があるものの、定年の引き上げあるいは延長は社会一般の流れでもあり、法案について何が問題なのか分からないといった声も多く聞こえてきます。改正法案の条文がかなり複雑で難解なものになっており、一般国民も一読しただけではその内容が明確に把握できないことも議論が混乱している一因ではないかと思われます。 そこで以下では、この改正法案の重要部分について、分かりやすく読みくだいて問題点を明らかにしたいと思います。 ■改正法案の具体的内容 まず、検察官の組織は、検事総長をトップに、次長検事、検事長、検事、そして副検事から成
4月7日に史上初の緊急事態宣言が出され、その効果が顕著に現れたところがある一方で、東京都内の公園ではむしろ人出が増えたところもあるそうです。いわゆる「三密」(密閉・密集・密接)の状態にある場所が、新型コロナに感染するリスクが極めて高いと言われています。確かに公園などは「密閉空間」ではありませんので感染のリスクは低くなるかもしれませんが、緊急事態宣言下で行動の自粛が求められている中、このような場所にわざわざ出向いて少なくとも密集・密接の状態の一部になるということについては控えた方がよいのではないでしょうか。 都内の公園 緊急事態宣言後 人出増加の所も ビッグデータ分析 不要不急の外出の自粛が呼びかけられる中、東京都内の公園では、今月7日に緊急事態宣言が出されたあとも人出が増加している場所があることがビッグデータの分析で分かりました。 出典:https://www3.nhk.or.jp/new
黒川弘務検事長の定年延長は、「第二の指揮権発動」だと言われることがありますが、指揮権発動よりもひどいものだと思います。 検察権は、立法・司法・行政の三権の中では、行政権に属しています。だから、検察官の任免権は法務大臣が持っていて、内閣が検察権の行使については国会に対して責任を負うことになっています。しかし、検察権は法の厳格、公平公正な執行という意味では司法権と密接な関係にあり、検察権の行使が時の政党の恣意的な判断によって左右されるようなことがあれば、法に対する国民の信頼が地に落ち、国家の土台が崩れることになりますから、検察庁は法務大臣からは独立した組織として位置づけられています。 法務省内の特別な機関としての検察庁と検察権の独立という2つの課題に配慮して、検察庁法には次のような規定が置かれています。これが、法務大臣の検事総長に対する指揮権と呼ばれるものです。 検察庁法14条 「法務大臣は、
■はじめに 公共の場で、35人もの女性に体液をかけ、その動画を撮影し、ネットにアップした男性が逮捕されました。 11日、警視庁は盗んだスマートフォンでわいせつな動画を撮影し、インターネット上に投稿したとして、33歳会社員の男を窃盗の疑いで逮捕したことが報じられた。 報道によると、事件容疑は2016年8月。JR山手線の西日暮里~浜松町間で、会社員の女性の鞄からスマートフォンを盗んだ疑いが持たれている。 また、容疑者の男は盗んだスマートフォンを使って、2016年の9月~12月の間に都内や近郊の駅や電車内で女性のスカートや脚などに体液をかける動画を撮影していたという。 出典:公共の場で女性35人に体液かけ、動画を撮影した男 犯行の全貌が歪みすぎ この種の事案は、想像する以上に多いと思われます。裁判例として公表されているものでは、射精して被害者の衣服に精液を付着させた行為について、前橋地裁平成27
■はじめに 検事長の定年延長問題が紛糾しています。この混乱の背景にはさまざまな問題がありますが、ここでは法の解釈運用という技術的な観点から問題を整理したいと思います。 政府の見解と反対の見解は、おおむね次のようなものです。 〈政府の見解〉 検察庁法は、国家公務員法(国公法)の特別法である(検察官も一般職の国家公務員)。特別法に書いていないことは一般法である国公法の規定が適用される。検察庁法22条には、検察官の定年年齢は書いてあるが、延長については何も書かれていない。そもそも検察官に定年延長がないのはおかしい。したがって、検察官の延長については、その規定がある国公法が適用される。 〈反対の見解〉 検察庁法の性格と趣旨に照らせば、退官年齢を規定する検察庁法22条は、「定年延長を認めない」と解するのが当然の解釈であり、かつての政府の解釈もそうであった。国公法81条の3第1項は、「前条第一項の規定
■はじめに 性犯罪規定の2017年改正によって、「暴行・脅迫」による「姦淫」を処罰していた強姦罪(3年以上の懲役)が、被害客体と行為態様を拡張するかたちで強制性交等罪(5年以上の懲役)へと改正されました。 審議の過程では、この暴行脅迫要件を撤廃して、相手の同意のない性行為を「不同意性交罪」として処罰する規定を設けるべきだという意見も出されましたが、行為を限定せずに広く処罰することや不同意の立証の困難性などについて強い反対論が出て、この要件はそのまま残されています。しかし、本年(2019年)3月に性犯罪に関して4件の無罪判決が続き、再び暴行脅迫要件を撤廃すべきであるとの議論が再燃しました。 とくに岡崎支部の事件(準強制性交等罪の事案)では、改正前の強姦罪と準強姦罪の関係性が改正後も維持され、「反抗を著しく困難にする程度」とされてきた(旧)強姦罪の暴行脅迫の程度に連動して、準強制性交等罪の「抗
■はじめに 連日、「桜を見る会」(平成31年4月13日開催)についての疑惑が報道されています。ただ、今の段階では情報が錯綜し、情報過多の中での空虚感という逆説的な気持ちを抑えることができません。 「桜を見る会」についてはさまざまな問題が指摘されていますが、ここではホテルニューオータニで会の前日に行われた前夜祭(「夕食会」)に焦点を絞って、刑事法的観点からみた疑問点をまとめてみました。 詳細な事実関係はまだ明らかではありませんが、報道等によると、どうも次の3点は事実のようです。 夕食会の主催者は「安倍晋三後援会」であり、「安倍晋三事務所」がホテル側と具体的な段取りを行った。参加者に渡された領収書から判断すると、ホテル側に支払われた夕食会の総額は、少なくとも1人5,000円×約800人=約400万円だった。ニューオータニの宴会場で、立食形式のパーティーを催す場合の費用は、最低でも1人11,00
■はじめに 現在、18歳未満の児童に対する性犯罪には多くのものがありますが、それらを処罰する条文はかなり複雑になっています。中には重複するようなものもあり、条文の解釈、適用も混乱していると思われるようなこともあります。 そこで、議論を整理する意味からも、児童に対するこの複雑な性犯罪規定をわかりやすく整理してみました(資料的な価値はあるのではないかと思います)。 ■児童に対する性犯罪にはどのようなものがあるのか 児童に対する主な性犯罪は、刑法、児童買春処罰法、児童福祉法、売春防止法、健全育成条例などにおいて規定されています。 これらを一覧表にしたものが次の表です。 [拡大されたものはこちら] また、それぞれの法定刑(懲役刑)の重さをイメージ的に比較したものが次の表です。 [拡大されたものはこちら] 以下、これらの犯罪規定について見ていきます。 ■刑法上の罪強制わいせつ罪(刑法176条) 暴行
今大問題になっている「老後2000万円」の報告書をめぐって、野党側が予算委員会での集中審議を求めていますが、自民党の森山国会対策委員長は、「この報告書はもうなくなっているので、予算委員会にはなじまない」と述べ、野党の要求に応じないという考えを示しました。 老後2000万円「報告書はもうなくなった」自民 森山国対委員長(NHK NEWS WEB) 問題となった文書は、金融庁の審議会が今月3日に公表した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書。この報告書は、庁内の審議会に設けられた有識者会議の1つである「市場ワーキング・グループ」が作成した報告書で、大学教授や金融機関の代表者ら21人の委員が去年9月から12回議論を重ねて、正式かつ最終的に「報告書」として取りまとめたものです。 「報告書はもうなくなった」って、誰が、いつ、どのような手続きで、廃棄したのでしょうか? これって、大丈夫なのでし
■はじめに カナダでは、2018年10月17日から大麻が解禁され、使用が合法化されています(州法の規定に基づいて、18歳以上の者は合法的に30グラムまでの大麻を所持したり、他人と共有することが可能)。日本を含めて世界中の圧倒的大多数の国は、現状では大麻について厳しい態度を取り続けていますので、カナダのこの試みは、国を挙げての壮大な実験といえるでしょう。ただし、これは後戻りがほぼ不可能な実験です。大麻の規制については、緩和の方向にあるのが世界の流れかもしれませんが、大麻解禁によって、これからのカナダ社会がどのように変化していくのかについては、世界中が注目していることと思います。 ところで、カナダには毎年、たくさんの日本人が旅行や留学などで訪れています。カナダで大麻が解禁されたことから、彼らが大麻パーティなど、現地で大麻に触れる機会も出てくることと思います。また、好奇心でみずから大麻を購入し、
■はじめに無修正の有料わいせつ動画サイト「カリビアンコム」を通じてわいせつ動画を配信していた被疑者らが、警視庁によって逮捕されました。被疑者らは、日本人の女優を使って制作したわいせつ動画を、台湾にある別会社を経由して、アメリカにあるとみられている「カリビアンコム」の運営会社に納品し、アメリカにあるサーバから配信していたようです。 無修正わいせつ動画制作、有料配信の疑い 台湾出身の女ら6人逮捕 台湾と米経由でわいせつ動画配信の疑い 社長ら逮捕 アメリカにあるインターネット・サーバにアップロードされたわいせつ画像は、他の世界中のアダルトサイトにある画像と同じように、もちろん日本からも見ることができますが、今回、警視庁が被疑者らを逮捕した理由はどのようなものなのでしょうか。 ■刑法の適用についての原則日本の刑法は、犯人の国籍を問わず日本の領土内で行われたすべての犯罪行為に対して適用されます(刑法
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