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おみそ汁
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ビルマで生れ、幼時に母と死別して故国イギリスの厳格な伯母の手で育てられたサキ。豊かな海外旅行の経験をもとにして、ユーモアとウィットの糖衣の下に、人の心を凍らせるような諷刺を隠した彼の作品は、ブラックユーモアと呼ぶにふさわしい後味を残して、読者の心に焼きつく。「開いた窓」や「おせっかい」など、日本のSFやホラー作品にも多大な影響をあたえた代表的短編21編。 中村能三 訳 出版社:新潮社(新潮文庫) 解説でもある程度、触れられているけれど、サキの短篇は悪意と強烈な皮肉に満ちている。 O・ヘンリーと並び称されているようだが、O・ヘンリーの作品にある暖かさとはずいぶん対照的だ。 それを個人的に強く感じたのが、『運命』、『休養』、『おせっかい』あたりである。 特に『おせっかい』の毒には、軽くへこんでしまった。 ラストに来る直前まで、暖かい予感に満ちていて、希望さえ見えたのに、ラストの一文で、登場人物
“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。 二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。 高橋和久 訳 出版社:早川書房(ハヤカワepi文庫) 本書は物語を物語る作品ではなく、設定を物語る作品なのだな、と読んでいて思った。 抽象的な言い方だが、この小説は人物の動きを描くことで、物語にダイナミズムを生み出そうという一般的な小説手法からずれていると感じたからだ。 本書はまず確固とした設定の物語世界を描き、その設定の枠組みから、キャラクターを照射しようとしているように感じられる。 実際、本書の設定は練りに練られている。 この
その夜、ある家の晩餐の席で一つの賭けがなされた。美食家を自認する客の一人が、食卓に出た珍しい葡萄酒の銘柄を判定できると言いだしたのだ。賭けられるのは美食家の邸宅と当主の令嬢。絶大な自信を持つ当主は賭けに応じるが…… 賭博に打ち込む人間心理の恐ろしさを描く「味」をはじめ、鬼才ダールが描く、幻想とユーモアと恐怖をちりばめた珠玉の15篇を収録。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞を受賞した傑作集。 田村隆一 訳 出版社:早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫) ロアルド・ダールの作品は『Charlie and the Chocolate Factory』しか読んだことはないのだが(なぜか原文で読んだ)、この人はちょっと皮肉な作品を書くのが得意なのかな、という印象を受ける。 本作には15の短篇が収録されているのだが、概ねオチがアイロニカルだからだ。 そして皮肉であるがゆえに、ちょっとしたおかしみだったり
肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却……。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。 出版社:新潮社(新潮文庫) ハードカバーで一度読んでからの再読なのだが、今回読み直してみて、改めて村上春樹の上手さを再認識させられた形だ。 メタファーに富んだ言葉を巧妙にちりばめる技術は、さすが一流。相変わらず会話はへんてこだが、これだけの技巧を見せられれば、多くは望むまい。何よりいまさら春樹にそれを望んでも仕様がないだろう。 さて、この作品集のタイトルは「奇譚集」と銘打っているということもあってか、奇妙な物語が多い。 僕は、この作品集の共通テーマを、
ラテンアメリカ文学巨匠の待望の新作を本邦初紹介。画家ゴーギャンと、その祖母で革命家のフローラ・トリスタンの激動の生涯を、異なる時空をみごとにつなぎながら編み上げた壮大な物語。 池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 Ⅰ-02 田村さと子 訳 出版社:河出書房新社 この作品では、後期印象派の画家ゴーギャンと、その祖母で社会活動家のフローラ・トリスタンという、二人の主人公の人生が交互に語られる。 その一方の主人公、怒りんぼ夫人、こと、フローラ・トリスタンが本当にすばらしいのだ。 彼女ほどキュートで、うざくて、はた迷惑で、人間としての活力と魅力に富んだ人はいまい。 フローラは行動的で、情熱に満ちている。 彼女の行動理由は、労働者を、そして女性を、不利な立場から解放しようという、利他的なものだ。 彼女は労働者を(留保をつけながらも)信じ、労働者の側から労働組合をつくるべきだ、と下からの改革を訴え、社会変
日付が変わろうとしている深夜の時間帯、ひとりの女性、マリがデニーズで本を読んでいた。そのテーブルを通りかかった男が彼女に声をかける。同じ時間帯、マリの姉のエリが眠り続ける部屋に、何かが侵入し始めていた。 ひとつの夜を舞台に闇と光を描いた、村上春樹の長編小説。 出版社:講談社(講談社文庫) 世間的には本書の評価は低いけれど、今回再読してみて、やはりそこまでけなすほどひどいものとは思わなかった。確かに地味ではあるが、ストーリーテリングの上手い春樹だけあり、再読でも充分に楽しんで読むことができる、優れた作品に仕上がっている。 人気のない理由のひとつかもしれないが、本書ではそれまでの春樹の文体とは異なっている。 「私たち」という人称で、カメラアイという中立的な視点を用いており、できるだけ感情を排そうとしているのがわかる。そういった感情を殺した文体が象徴しているかもしれないが、ここではいままでの春樹
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