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おみそ汁
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トウガラシは現代の中国料理に欠かせないものだが、この植物が中国に伝来したのは16世紀のことだ。その後、数百年をかけて改良され、現在、中国は世界一のトウガラシ生産国だ。(PHOTOGRAPH BY MARIAH TAUGER, LOS ANGELES TIMES/GETTY IMAGES) 米国の家庭がとても欲しがり、レストランでは大胆なレシピを生み出しているもの。その正体はチリクリスプで、今や食品界のスターだ。トウガラシ、油、そしてニンニク、タマネギ、サンショウ、さらには発酵大豆などが入った中国の調味料であり、その万能性と刺激で存在感を示している。 しかし、どうしてこのような調合になったのだろう? ここでは、チリクリスプがどのように生まれ、なぜ今これほど愛されているのかを紹介しよう。 スパイシーな始まり 「トウガラシは昔から中国にあったわけではない」と米ウィットマン大学の歴史学教授で、『T
アントニオ・ビバルディを描いたと思われる肖像画だが、はっきりしたことはわかっていない。作者不詳。(SCALA, FLORENCE) ビバルディの『四季』と言えば、クラシック音楽のなかでも最も愛されている不朽の名作の一つだ。それぞれの季節を表す4つの協奏曲から成る音楽は、1725年に発表された当時と変わらず、今も人々の心を躍らせる。ところが、第二次世界大戦前は、音楽家の間でもこの曲を聴いたことがある人は少なく、アントニオ・ビバルディという名前すら、音楽史の脚注で言及される以外ほとんど知られていなかった。 若かりし頃のビバルディは、イタリア、ドイツ、フランス、イングランドで、バイオリンの名手かつ優れた作曲家として知られ、もてはやされていた。その才能は留まるところを知らず、40曲以上のオペラと、数百もの協奏曲を生み出した。それらの曲はヨーロッパ中で演奏され、同じ時代に活躍したヨハン・セバスチャン
SFに出てくるようなスーパーパワーではないかもしれないが、フィリピン、マレーシア、インドネシアに暮らすバジャウ族の人々は、酸素を効率的に使えるように遺伝能力を進化させ、優れたフリーダイバーになった。インドネシアのトギアン諸島に暮らすダフリン・アンボタング氏(写真)は、ひと息で最大4分潜ることができる。 人間離れした強大な力「スーパーパワー」は実在する。もちろん、人間は、マーベル・コミックのスーパーヒーローチーム「X-メン」のウルヴァリンのように巨大な爪を生やしたり、サイクロップスのように目からエネルギー光線を発したりはできない。だが、科学者によると、人間の体と脳には、超人的な離れ業をやってのける可能性が秘められている。 X-メンのストーリーにも少し似ているが、遺伝子の変異からスーパーパワーが生じることもある。たとえば、ヒマラヤのシェルパ族は、体力と持久力を高める遺伝子のおかげで高地に適応し
今回紹介するのは認知症に関連する脳波リズムと脳のクリーニングに関する話題である。2016年に書いた第61回「脳の掃除は夜勤体制」のその後のブレークスルー研究の話を紹介したいと以前から考えていたのだが、すでに5年前の2019年に「Science」誌に掲載された研究であるため、いささか「古いネタ」になってしまい紹介しそびれていた。ところが今年3月に、米国マサチューセッツ工科大学が「Nature」誌に発表した非常にユニークな研究が正にこの領域に関するもので、相互に深い関連があるので改めて一緒に紹介したい。この領域とは脳のリンパ系である「グリンパティックシステム」である。 つい最近マサチューセッツ工科大学の研究者らが、アルツハイマー病モデルマウスを飼育箱に入れて、40Hzの発光ダイオードによる光刺激と、同じく40Hz/60デシベルの音刺激を同時に1時間与えたところ、脳内に蓄積したアミロイドβの除去
「永遠の化学物質」と呼ばれるPFASは、米国では広く飲料水に含まれており、取り除くのは極めて難しい。しかし、PFASは精巣がんや早産などの重篤な健康問題を引き起こす可能性が指摘されている。(PHOTOGRAPH BY THEA TRAFF, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 米環境保護局(EPA)は2024年4月10日、飲料水に含まれる有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)に対する初の規制を発表した。PFASは環境にいつまでも残留するため「永遠の化学物質」と呼ばれる。 EPAによると、新たな規制は、体内に蓄積して多くの健康問題を引き起こすことが知られている6種類のPFASから、1億人もの米国人を守ることにつながるという。PFASとの関連が指摘される健康問題には、腎臓がんや精巣がん、妊娠高血圧症候群、早産、肝
コウテイペンギンのひなが高さ約15メートルの棚氷の崖から飛び降りる様子を初めて撮影した。この映像は、2025年4月の「アースデイ」にナショナル ジオグラフィックとディズニープラスが放送する『ペンギンの秘密(Secrets of the Penguins)』シリーズに登場する予定。(Video by Bertie Gregory) まるで最初に湖に飛び込む勇気のある人を待ちながら、崖の上に群がる10代の若者のように、生後数カ月のコウテイペンギン数百羽が、高さ約15メートルの南極の棚氷の上に集まっている。 空腹に駆られたひなたちは、崖の縁をのぞき込み、まるでこの高さから南極の海に飛び込んでも大丈夫かどうかを考えているかのようだ。 そして、1羽のひなが飛び込んだ。 傍観していたひなの中には、首を伸ばしてそのひなが真下の氷の海に落下し、水しぶきを上げる様子を見つめる者もいる。数秒後、ひなは水面に浮
マイクロプラスチックはあらゆる場所で見つかっている。私たちの血管内も例外ではなく、その存在は心臓発作や脳卒中のリスクの上昇に関連していることが示された。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NAT GEO IMAGE COLLECTION) マイクロプラスチックは環境の至る所にあって、私たちの体内にも入り込んでいる。このほど3月6日付けで医学誌「The New England Journal of Medicine」に発表された新たな研究により、血管内にたまった微小なプラスチック粒子と、心臓発作(心筋梗塞)、脳卒中、死亡のリスクの高さが初めて関連づけられた。 脂肪などでできた沈着物であるプラークが動脈の壁の中にたまる「アテローム性動脈硬化」になると、血管の壁が厚くなるため体の各部への血流が悪くなり、脳卒中や狭心症、心臓発作のリスクが高まる。プラークは通常、コレステロール
6700万年前、南米のパタゴニア中部に生息していたと思われる新種のティタノサウルス類の復元図。(ILLUSTRATION BY GABRIEL DÍAZ YANTÉN) 南米のパタゴニアで、新種の恐竜が見つかった。ティタノマキア・ギメネジ(Titanomachya gimenezi)という学名がつけられたこの恐竜は、長い首を持つ巨大な草食恐竜ティタノサウルスの仲間だ。ただし、この恐竜は成長しても大型のウシほどの大きさにしかならない。論文は、4月10日付けで学術誌「Historical Biology」に発表された。 新種の恐竜は、アルゼンチンにあるエジディオ・フェルグリオ古生物博物館の古生物学者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもあるディエゴ・ポル氏の研究チームが発見した。同氏らは、南米における恐竜時代の終焉を探る研究を行っており、それが今回の発見につながっ
米ワシントンD.C.にあるフォード劇場には、リンカーン大統領が暗殺された夜に大統領のポケットに入っていた私物が展示されている。(PHOTOGRAPH BY ARCHIVIO GBB, CONTRASTO/REDUX) 1883年12月、ヘンリー・ラスボーンとその妻クララ・ハリスを悲劇が襲った。 当時夫妻は、3人の幼い子どもたちを連れて米国を離れ、ドイツに滞在していた。ラスボーンは、過去に経験したあまりに衝撃的な出来事が忘れられず、いつかまた同じような恐ろしいことが自分の身に起こるのではないかという不安を振り切れなかったと、周囲の人々は後に語っている。(参考記事:「なぜジャクリーン・ケネディは夫の暗殺前から喪に服していたのか」) その衝撃的な出来事とは、1865年4月14日のエイブラハム・リンカーン大統領暗殺事件だ。その日、ワシントンD.C.にあるフォード劇場の大統領専用ボックス席で、ラスボ
一部の文化では、加齢は常にデリケートなテーマだ。しかし、予防的なしわ治療やソーシャルメディアのフィルター加工の台頭によって、私たちが抱える「老いて見えること」への嫌悪感は新たなレベルに高まっている。そして、思春期の子どもたちでさえ、この強迫観念にとらわれている。(PHOTOGRAPH BY WESTEND61, GETTY IMAGES) 最近、鏡がおかしい。鏡をのぞくと、髪の毛が白くなっているのだ。目の周りには細かいしわが刻まれ、頰と口の間は割れ目のようになっている。そして、43歳の私(筆者のエリン・ブレイクモア氏)の顔には、もはや隠しきれないマリオネットのような線がある。夜のスキンケアをアップグレードした方がいいのだろうか? インターネットで調べてみると、もっとおかしな仲間がいることがわかった。年齢にこだわる12歳以下の子どもたちだ。このいわゆる「セフォラ・キッズ」が、米国などでセフォ
不気味な火の玉の正体 湿地にはもう一つ、不気味な言い伝えのもととなった超自然現象がある。夜の暗闇のなか、ぼうっと浮かび上がる火の玉を見たという話だ。 英国では「ウィル・オ・ウィスプ(ウィロー・ザ・ウィスプ)」「ジャック・オー・ランタン」などと呼ばれ、火の玉が夜道を行く旅人を惑わし、それに誘われて沼に引きずり込まれた者は二度と戻れなくなると恐れられた。今では目撃談がほとんど聞かれなくなったが、J・R・R・トールキンの『指輪物語』に描かれている死の沼やハロウィンに飾るカボチャなどの現代文化に、その名残を見ることができる。 湿地の生態系は、時折火の玉のようなかすかな光を発生させることがある。科学者たちは、水面から沸き上がったホスフィン(リン化水素)ガスによるものではないかと考えている。(PHOTOGRAPH BY PAUL HART)
センチネル族。(PHOTO ILLUSTRATION: IAN WOODS. SOURCE PHOTOS: GAUTAM SINGH, ASSOCIATED PRESS (ISLAND); NUTU, ALAMY STOCK PHOTO (BOATMEN)) 2018年11月、米国人の若い宣教師がインド洋に浮かぶ孤島のビーチに漁船から泳いで上陸したところ、島の孤立部族に弓矢で殺害された。アンダマン・ニコバル諸島の小さな島、北センチネル島でのこの事件の知らせは、世界中の人々を魅了した。ほとんどの人は、今でも外界からほぼ完全に隔絶された状態で暮らしている狩猟採集民が現代でも存在することを知らなかった。 自信に満ちた26歳の宣教師ジョン・アレン・チャウ氏は、「サタンの最後の砦」かもしれないと感じたこの島の部族を改宗させることを目指していた。しかし、彼の短い訪問は、21世紀らしい別の栄光をもたらし
免疫系が不調をきたして自分の細胞を攻撃すると、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、関節リウマチなど80種類以上の自己免疫疾患が引き起こされる可能性がある。写真は、皮膚筋炎と呼ばれる自己免疫疾患で現れた全身の発疹。(PHOTOGRAPH BY LULIIA BURMISTROVA, GETTY IMAGES) 健康な免疫系は、体を病気や感染症から守ってくれる。しかし、およそ10人に1人(その8割が女性)は、体の免疫系が不調をきたして、自分自身の細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患にかかる。最近の研究によると、男性より女性の方がかかりやすい理由は、女性が持つ2つのX染色体のうち1つを停止させるメカニズムと関連している可能性があるという。 女性の体の細胞では、「Xist(イグジスト)」と呼ばれる分子の働きで、2つあるX染色体の1つが不活性化している。2月1日付けで学術誌「Cell」に発表された米ス
英国イングランド東部ケンブリッジシャー・フェンズの凍った湖。この地方には様々な湿地や泥炭地があり、そこから幽霊や妖精の伝説が数多く生まれた。(PHOTOGRAPH BY PAUL HART) 深い霧に包まれた沼や湿地は、いかにも怪談やホラー映画の舞台になりそうだ。暗闇に光る火の玉や霧の向こうの黒い魔犬、妖精がつくる謎の輪など、昔から奇怪なものを見たという目撃談に事欠かない英国のイングランド東部も例外ではない。今でも、日が沈んで暗闇に包まれた沼地にひとたび迷い込めば、腐った水と黒い泥に足を取られ、底なしの沼に引きずり込まれてしまわないとも限らない。(参考記事:「人間の足が続々漂着「セイリッシュ海の謎」、科学で解明」) 北海からケンブリッジまで広がる面積約3900平方メートル(ほぼ滋賀県の面積に相当)の沼沢地帯は、地元では「ザ・フェンズ」と呼ばれている。フェン(fen)には英語で「沼沢地」とい
写真のようなフルフェイスのLEDマスクは、米国で数千ドル(数十万円)することがある。皮膚に赤色光を当てると、コラーゲンの生成や血行を刺激し、アンチエイジング効果も期待できるが、光治療はその他の肌トラブルの万能薬ではない。(PHOTOGRAPH BY TONJE THILESEN) 1960年代半ば、ハンガリーの医師エンドレ・メスターが、増殖する腫瘍に対する影響を調べるため、剃毛したマウスの皮膚に低出力レーザーを当てたところ、予想外の効果を観察した。赤色の光が、マウスの発毛を促進しているらしいことがわかったのだ。さらに、その後の研究で、この光には傷を治す効果があることも示された。 それから60年後、この偶然の発見は、今や発光ダイオード(LED)を使った医療処置や家庭用器具の一大市場へと発展している。 フェイスマスクから全身マスク、持ち運び可能なスティック型の機器まで、高い熱を発しない低出力の
九州南方沖の海底火山、鬼界カルデラが起こした7300年前の「アカホヤ噴火」が、完新世(1万1700年前~現在)で世界最大の噴火であることが分かったと、神戸大学の研究グループが発表した。海底に堆積した噴出物の量を船で詳しく調べるなどして判明した。この噴火は南九州の縄文人に壊滅的な被害を与えた。研究グループは「このような噴火が発生すれば、火砕流や火山灰が現代文明に及ぼす影響は計り知れない」としている。 鬼界カルデラは鹿児島市の南約100キロにあり、長さ25~15キロほどの楕円(だえん)状。噴火でマグマが一気に噴き出し、地下の空洞になった所が落ち込んでできた陥没地形「カルデラ」が、巨大噴火の繰り返しにより複合しているとみられる。直近の巨大噴火がアカホヤ噴火で、火山灰は東北地方の一部にまで飛んで積もっており、考古学などで年代判定の手がかりとして利用されている。カルデラの縁は外輪山と呼ばれ、噴火を繰
英国南西部の丘の斜面に、石灰岩を利用して描かれた「サーン・アバスの巨人」。身長が18階建てのビルに匹敵し、「サーン・アバスの野蛮人」とも呼ばれている。(PHOTOGRAPH BY 4 SEASON BACKPACKING, SHUTTERSTOCK) 英国南西部の農村地帯、サーン・バレーの丘の急斜面に、全長55メートルもの巨大な裸の男の絵が描かれている。いつの時代のものなのか、誰も知らない。その白い線は、緑の草を取り除いて白い石灰岩をむき出しにすることによって作られている。「サーン・アバスの巨人」として知られるこの絵は、それが何なのかを説明しようとする人々を長年の間困惑させてきた。しかし学術誌「Speculum」2024年1月号に発表された最新の研究は、これがいつ、何のために描かれたのかを、歴史との関連とともに明らかにしている。 異教の神か、政治風刺画か、神話の英雄か 男は片方の腕を伸ばし
心血管疾患リスクを下げる効果は、座る時間がどちらのグループも1日4300歩程度から確認されるようになり、座る時間が長い人たちでは10%低下した。歩数が1日9700歩では、その効果も21%に倍増した。 死亡のリスクも同様に、座る時間が長い人たちでは1日4100歩歩くと20%下がった。歩数が1日9000歩では、リスク低下率は39%とほぼ倍増した。1日6000歩ほど歩くと、座る時間の長い人たちの死亡リスクは、短い人たちと同じ程度にまで下がった。 米ニューヨーク市のモンテフィオーレ医療センターの心臓科医マリオ・ガルシア氏によると、平均的な米国人の歩数は1日4000歩ほどだという。つまり、健康増進の余地はたっぷりあるということだ(編注:厚生労働省が行った2019年の国民健康・栄養調査によると、日本の成人男性の平均歩数は1日6793歩、成人女性は1日5832歩)。 「(新型コロナウイルスの)パンデミッ
アイルランド、ケリー州の遊歩道「ディングルウェイ」を歩く人々。最新の研究によれば、1日あたりの歩数が4300歩を超えれば、心血管疾患のリスクは1万歩程度までなら歩くほどに下がっていく。(PHOTOGRAPH BY SHUTTERSTOCK/NAT GEO IMAGE COLLECTION) 1日9000~1万歩歩くことにより、死亡リスクは30%以上減り、心血管疾患のリスクは少なくとも20%減少する。だが、それより少ない歩数でも効果を得られることが、英国の7万2000人以上を対象とした新たな研究により示された。研究結果は3月5日付けで学術誌「British Journal of Sports Medicine」に発表された。 「何らかの活動をすれば必ず有益になります。われわれは、(1万歩程度までなら)1日あたりの歩数が多いほど、死亡リスクと心血管疾患のリスクが低下することを発見しました」とオ
写真の「センテナリーダイヤモンド」は世界最大級の無傷のダイヤモンドで、原石の重さは599カラットもあった。デビアスが所有する南アフリカのプレミア鉱山(現在の名称はカリナン鉱山)で1986年に発見された。センテナリーとは百周年の意で、デビアス社100周年を記念して名づけられたもの。(PHOTOGRAPH BY PATRICK LANDMANN, GETTY IMAGES) 1960年、グラディス・バブソン・ハンナフォードは、米フロリダ州立大学で課外授業を行った。「ダイヤモンド・レディー」の名で知られる彼女は、ダイヤモンドの「専門家」としてダイヤモンドに関する「教育的」な講演を年間数百回も行っていたが、実は広告代理店に雇われた人物だった。彼女に与えられた使命は、野心的かつシンプルなもの。それは「米国の女性にダイヤモンドを欲しがらせること」だった。(参考記事:「約5億円で落札、謎のブラックダイヤ
今回見つかった新種のヤモリには、暗い背景に金色と青の鮮やかな模様が浮かんでいる。まるで名画「星月夜」のようだ。(PHOTOGRAPH BY AKSHAY KHANDEKAR) フィンセント・ファン・ゴッホが「星月夜」を描いてから133年。そこから遠く離れたインドの西ガーツ山脈の岩陰で、イシャン・アグラワル氏が小さくてカラフルな新種のヤモリを見つけたとき、心に浮かんだのは、その名画だった。 このヤモリは、一般名として「ゴッホの星月ドワーフヤモリ」という意味の「van Gogh starry dwarf gecko」、学名にはゴッホに由来する「Cnemaspis vangoghi」という名前が付けられた。学術誌「ZooKeys」の最新の研究で示された、Cnemaspis属の2つの新種の1つだ。 アグラワル氏は、西ガーツ山脈について、「その信じられないほど多様な動物相については、まだほとんどわか
米ニューヨークで合法的な嗜好用大麻の販売が開始された日、大麻販売店の外にできた列に並んで喫煙する客。(PHOTOGRAPH BY JEENAH MOON, BLOOMBERG/GETTY IMAGES) 米国では近年、23の州とワシントンD.C.で娯楽用大麻が合法化されており、フロリダを含むいくつかの州では2024年11月に合法化を巡る投票が予定されている。こうした変化によって消費量は劇的に増加し、2022年の薬物使用と健康に関する全米調査(NSDUH)によれば、過去1年間に大麻を使用した米国人は約6200万人に上った。しかし、合法化されたからといって、大麻の日常的な使用にまったく危険がないわけではない(編注:日本の外務省は「大麻(マリファナ)が合法の国であっても、日本で罪に問われることがあります」と HP で注意を喚起している)。 大麻による健康上の問題は、単なる口の乾きや疲労感にとどま
米シアトルのティルス・フェスティバルで並べられたニンジン。(PHOTOGRAPH BY SAM ABELL / NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION) 風邪にはビタミンCがいい? 天気の良い日はビタミンDがたくさん取れるチャンス? それらの真偽はさておき、ビタミンが健康維持に欠かせないのは常識だ。しかし、ビタミンはどうやって名前が付けられたのか? それに、ビタミンはそもそもいつ発見されたのだろうか?(参考記事:「「ビタミンCで風邪を予防」のウソ、誤解生んだノーベル賞化学者」) ビタミン発見の前は 人間は、食事が健康に関係していることを古くから理解していたが、化学や物理学、生物学の発展に支えられて現代の栄養学研究が登場するまでには長い年月を要した。初期の栄養学で実験の中心となったのは、1772年に発見された窒素だった。そこでは、食べ物の中に窒素があるかどう
PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS,NATIONAL GEOGRAPHIC 写真は米国カリフォルニア州のフンボルトレッドウッズ州立公園内で、最も広いセコイアの古木の森。 世界の巨木が次々と死んでいる。世界の森の木々が枯死するペースは年々速くなっており、特に大きい木、古い木ほどその傾向が強い。2020年に発表された学術誌「サイエンス」の論文によれば、そのせいで森林がより若くなり、生物多様性が損なわれ、重要な植物や動物の生息地が失われ、二酸化炭素を貯蔵する能力も低下しているという。(参考記事:「世界で巨木が死んでいる、115年間で原生林の3分の1超が消失」)
レオナルド・ダ・ヴィンチの有名な肖像画「白貂を抱く貴婦人」。ミラノ公の女官だったチェチェリア・ガッレラーニとオコジョが同じ方向を凝視している。1491年頃の作品。このようなオコジョには鋭い爪があるうえに肛門腺からは悪臭を放つので、愛玩動物には適さない。この作品のオコジョは、イタリアのアーミン勲章またはガッレラーニの妊娠を暗示しているというのが専門家の見解だ。(PAINTING BY LEONARDO DA VINCI) 小さくふわふわしていて、誇り高い王や皇帝、専制君主の必需品、それがイタチだ。 このしたたかな小動物は、現在、生息数が次第に減少している。わずかに黒い部分がある白い毛皮は「アーミン」と呼ばれ、数百年にわたって、王室の威厳や権力、壮麗さの象徴として、君主や貴族に長く珍重されてきた。 いったいイタチの毛皮は、なぜ、どのようにして、王族に欠かせない装いとなったのだろうか。 アーミン
米国オハイオ州出身の画家アーチボルド・ウィラードが米国独立戦争を描いた「‘76の精神」。この絵画には元々「ヤンキードゥードゥル」という題が付けられていた。英国兵が植民地兵を揶揄した歌だが、より古い歌の替え歌の可能性が高い。(Archbald Macneal Willard, Graphicaartis, Bridgeman Image) ニューヨーク・ヤンキースは、121年前にメジャーリーグベースボール(MLB)が発足した当初から存在した。MLBが開幕した今、あらためてヤンキーの語源を探ってみたい。それは侮蔑的な言葉なのか? あるいはさまざまな文化圏の人が混ざり合って生まれた発音の間違いなのか? はたまた単なる無害なスラングなのだろうか?(参考記事:「大リーグに欠かせないオルガン演奏、歴史は80年前に始まった」) オランダ語を探れ 「ヤンキー」は米国北東部ニューイングランド地域の出身者を意
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