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装丁を味わう
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平日の朝9時台。PCを片手に筆者がコーヒーチェーンに向かうと、決まって同じ男性を見かける。60代ぐらいの定年後とおぼしき紳士で恰幅良く、肌つやもいい。 昼近くまで新聞や単行本に目を通したり、外の景色を眺めたりしているが、手持ち無沙汰のように見えなくもない。 この男性のような若々しいシニアは、地域の図書館でも多く見かける。 そのたびに勝手ながら思ってしまうのだ。現役を引退するには早すぎるのではないかと――。 定年後も働きたいシニアが増加 「高年齢者雇用安定法の改正」(2021年4月)により、事業主に対し、「70歳までの就業確保措置(努力義務)」が施行された。 法改正初年度の厚生労働省の調査によれば、実施している企業の割合は、25.6%。4社に1社が実施している状況だ。 一見、多いように思えるが、実施企業の大半はあくまで「雇用継続支援」という形をとっている。70歳まで働けるといっても、適用要件
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中国のEV(電気自動車)最大手、比亜迪(BYD)の躍進が止まらない。同社は3月26日、2023年の通期決算を発表。同年の売上高は前年比42%増の6023億1500万元(約12兆6291億円)、純利益は同80.7%増の300億4000万元(約6299億円)に達し、大幅な増収増益を達成した。 BYDの祖業は電池であり、EVやPHV(プラグインハイブリッド車)用の車載電池を自社で開発・生産するほか、社外にも販売している。また、スマートフォンの受託製造などのエレクトロニクス事業も手がけている。 事業分野別の業績を見ると、2023年の自動車および車載電池関連事業の売上高は4834億5300万元(約10兆1368億円)と、前年比48.9%増加。総売上高に占める比率は前年より3.7ポイント上昇し、80.3%に達した。エレクトロニクス関連事業の売上高は前年比20%増の1185億7700万元(約2兆4863
4月11日、テレビCMでお馴染みの猫用おやつ「CIAOちゅ~る」やツナ缶で有名な大手企業・いなば食品で新卒採用者の大量入社辞退が発生したと『週刊文春』が報じました。 「近頃の若者はこらえ性が……」といなば食品に同情しかけたところで、併せて文春が報じた同社の社宅のオンボロぶりと、この報道に対する「ボロ家報道について」という身も蓋もない正式プレスリリースに目を疑いました。 上場はしていませんが、4000人以上の従業員を抱え、売上高1000憶円を超える大企業の対応とは思えません。このトラブル、そしてそこへの対応は同社の経営に影響するのか検証してみます。 「ボロ家」と自分で言ってしまう危機管理のなさ 文春報道が火を点けた、いなば食品のトラブル。それは新卒採用で静岡工場へ配属予定だった内定者の9割が入社を辞退したというもの。 私は20年ほどコンサルタントと大学教員の二足のわらじを履き続けていますが、
人間の体は蚊柱のようなもの 小泉 以前にも一度対談したことがありますよね。 福岡 ええ。あの対談は『エッジエフェクト(界面作用) 福岡伸一対談集』(朝日新聞出版)という本に収録されましたね。 小泉 あっ、『エッジエフェクト』、そうだ、そうだ。そのときに人間は蚊柱みたいだというお話が出て、それは納得がいくというお話をしたんですよね。 福岡 そうです。人間の体はかちっとした個体みたいに思われているけれど、じつはたえまなく入れ替わっているんです。蚊柱のようなものです。蚊柱は柱みたいに見えますが、柱ではない。出ていく蚊がいれば入ってくる蚊もいて常に入れ替わっているんですね。 人間の体もじつは環境から絶えずエネルギーが流れ込んできて、やがてまたそれがどんどん環境に戻っていくということを繰り返しています。 消化器の上皮細胞などはすごい速度で入れ替わっていて、2、3日で新しい細胞と古い細胞が入れ替わりま
また、自社の信用を高めるために、ホームページに取引先一覧を掲載している会社もありますが、これもセキュリティの観点からは危ない。 いわゆる「サプライチェーン攻撃」ですが、最終的に攻撃したい大企業の情報を持っていると推測され、サイバー攻撃を受けるリスクが高まります。一般に大企業よりも中小企業のほうがセキュリティは甘く、攻撃者はその弱点を狙ってくるのです。 セキュリティに関する情報を集約、ルール化して ――ホームページやパンフレットでの情報発信から事故が発生するのを防ぐには、どのような対策が有効ですか。 情報セキュリティ委員会を立ち上げて、セキュリティに関する情報がそこに集約されるような仕組みが望ましいです。 前述の通り、攻撃者は社員の名前を入手するとメールや郵送などさまざまな手段で接触してきます。「個人情報やメールアドレスの掲載、拠点の電話番号など掲載する場合は必ずここに一報を入れる」とルール
「死の谷はいつまで続くのか」――。いま、テレビ局の将来をそう憂う声が日増しに強まっている。 電通が2月に発表した「2023年 日本の広告費」によると、日本の総広告費は過去最高の7兆3167億円を記録した一方、地上波テレビの広告費は前年比4%減の1兆6095億円となった。 コロナ禍では、ネットフリックスやU-NEXTなど動画配信サービスの利用者が急増。それに押されるかたちで2021年以降、地上波テレビの視聴率は低下に拍車がかかり、テレビ局の収益柱である広告収入の減少がいっそう鮮明となっている。 「3冠獲得」に燃えるテレ朝 日本民間放送連盟(民放連)の定める放送基準では、節度ある広告などを目的に、週間でのテレビCMの時間を総放送時間の18%以内とする規制が明記されている。 放送できるCMの本数(時間)に限界がある以上、カギを握るのはCM1本当たりの単価だ。一般的に、視聴率が高いほど広告主がCM
糖尿病は「カロリー」とは関係ない 「食事量を減らしましょう」「カロリーを減らしましょう」「食べる量に気をつけましょう」 減量のためのアドバイスとして、これまでの50年間、繰り返しこう言われてきた。 だが、これほど肥満がまん延している現状を目の当たりにすれば、このアドバイスこそが大災害であったといえるだろう。カロリーを減らそうというアドバイスが繰り返されるのは、体重が増えてしまう原因を誤って理解しているからだ。 なぜ肥満になるのだろう。私たちは立ち止まってこの根本的な問題を考えてみようとはしない。答えならとっくに知っていると思いこんでいるからだ。 わかりきったことじゃないか、と誰もが思っている。カロリーを摂りすぎると肥満になる。消費するカロリーよりも多くのカロリーを摂ると体重が増える。こうしたエネルギーバランスの法則を、私たちは子どもの頃から刷り込まれてきた。
ドル円レートは、2015年頃以降、 1ドル=100円から110円程度の幅で推移してきた。ところが2021年から急激な円安が進んだ。現在の購買力平価は1ドル90円程度なので、市場レート150円は、これより大幅に円安だ。両者の差がこれほど開いたのは、1980年代前半以来のことだ。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第118回。 円の購買力は1990年頃の半分に低下 現時点の為替レートは歴史的な円安だと言われる。通常、それは150円という市場為替レートの水準を過去の水準と比較することによって言われる。しかし、1980年代の市場レートは、150円よりずっと円安だった。いまがなぜ「歴史的な円安」なのかを理解するには、購買力平価と比較することが必要だ。 購買力平価は理解しにくい概念だ。これには、いくつかの異なる概念がある。 第一
「ずっと結婚しないままでいると、若いうちはいいけど老後は一人ぼっちで寂しくなるよ」という声が特に既婚の高齢者から寄せられます。 確かに、結婚し子や孫に囲まれて過ごす老後と比較すれば、一人のままで暮らす人の生活は、客観的に見て「寂しい」ものと映るのかもしれません。実際、生涯未婚の人はやがて親も他界し、会社を定年退職した後は他者とのつながりもなくし、終日誰とも会話することのない日々が続く人もいます。 結婚したとしても「老後一人ぼっち」に しかし、「結婚すれば一人ぼっちにならないか」といえば、必ずしもそうではありません。たとえ、結婚したとしても、配偶者との離婚で一人に戻る可能性もあります。離婚だけではなく、仲睦まじい夫婦であっても老後の配偶者との死別は避けられません。必ずどちらか一方が先に亡くなり、残されたほうは一人になってしまいます。 つまり、有配偶者であっても、生涯未婚者と同様「老後一人ぼっ
4月8日に公表された最新の景気ウォッチャー調査は、「ドキッ」とさせられる内容だった。 前回の「『物価と賃金の好循環』は本当に持続可能なのか」(3月30日配信)では、「問題はこの賃上げを受けて、個人消費がちゃんと伸びるのか。4月以降の消費と物価のデータを、しっかりウォッチしていく必要がある」という趣旨のことを書いたのだが、しょっぱなから冷水を浴びせられた感がある。 「大幅賃上げ」なのに景気浮揚にほとんど効果なし? すなわち3月の現状判断DI(指数)は前月比▲1.5の49.8、先行き判断DIは同▲1.8の51.2となった。特に現状判断DIの季節調整値が、50を割り込むのは昨年1月以来のことだ。「前年比5%台の賃上げ」は市場にとってはサプライズであったし、それで日銀も政策変更に踏み切ったのだが、今のところ足元の景気浮揚にはほとんど効果がないようである。 そもそも今年の春闘で大幅賃上げが可能になっ
[Book Review 今週のラインナップ] ・『統計学の極意』 ・『「まちライブラリー」の研究 「個」が主役になれる社会的資本づくり』 ・『円の実力 為替変動と日本企業の通貨戦略』 ・『科学がつきとめた 中年太りのすごい解消法』 評者・神戸大学教授 末石直也 キャッチーなタイトルから抱くイメージとは裏腹に、本書は一流の研究者によって著された深い洞察に満ちた統計学の入門書である。 数式は登場させないスタイル 「問題解決志向」の統計学入門 著者のシュピーゲルハルターは、「逸脱度情報量規準」という指標の提案者として知られる統計学の理論研究者である。同時に、医療統計学の分野において優れた貢献を果たしてきた応用研究者でもある。そんな著者による本書は、数式が登場しない読み物のスタイルを取りつつも、統計学の基本概念を厳密性を損なうことなく解説している。 本書のいちばんの特徴は、著者の言葉を借りると「
バターチキンカレー。巨大なナン。セットで800円。壁にはエベレストの写真が貼られている。切り盛りしているのは、インド人のような人で、気さくな感じがある……。 こんなカレー店に行ったことがないだろうか。これらは「インネパ」と呼ばれ、ネパール人が切り盛りするインドカレー屋として、ここ20年ほど、日本で激増している。そういえば、店内にはさりげなくネパールの国旗が飾ってあったりもする。 でも、よく考えたら疑問ばかりが浮かんでくるのではないだろうか? なぜ、インドカレー屋なのにネパール人がオーナーなのか? なぜあそこまで安くカレーを提供することができるのか? そもそも、どうしてこのような「コピペ」したかのような店が全国各地にあるのか? 謎は尽きない。 そんな「インネパ」の謎に迫ったのが、ジャーナリストの室橋裕和さん。室橋さんは3年もの月日をかけ、インネパの実態に迫り、それを『カレー移民の謎 日本を制
以上の回答を公式統計などから検証してみよう。 厚労省が発表している「児童虐待相談における主な虐待者別構成割合の年次推移」を見ると、近年は父親が虐待する相談の割合が増えている。 2014年度では主な虐待者のうち52.4%が実母だったが、2018年度では47.0%に減っている。一方、同じ期間では実父が34.5%→41.0%と増加傾向にあり、数年も経てば、実父の割合が実母の割合を超えるかもしれない。 もちろん、単独親権にも虐待事案はあるため、「子どもファースト」で親権制度を見直すなら、共同親権ならではのメリットとして子ども自身のニーズを確認する必要がある。そのためには、すべての子どもが親権のメリットとデメリットを理解できるよう、丁寧に説明できる機会を創出することが避けて通れないだろう。 そのうえで、両親の離婚を経験した当事者や、虐待されて保護された未成年、大人になった虐待サバイバーなどに広く意見
4月3日朝に発生した台湾東部の沖合を震源とするM7.7の大地震は、東部に大きな被害をもたらし、台北の通勤ラッシュも直撃した。MRT(都市鉄道)の橋桁が大きく揺れる姿や列車が立ち往生する様子が即座にネット上で出回り、筆者の職場でも子どもを学校に送り届けられず直接連れてきたり、在宅勤務に切り替える同僚がいたりするなど、多少なりとも混乱が見られた。 また、翌日から「清明節」と呼ばれる大型連休を迎えるタイミングだったため、地震の影響による交通機関の不通が東部への帰省の足を直撃。発生当日は、震源地に近い花蓮や台東方面への特急列車は全て運休、道路も橋桁が滑落し通行止めとなるなど北部から東部へのアクセスが断たれた。 しかし、驚くべきことに鉄道は翌4日から通常運転を再開した。道路は連休最終日の7日まで復旧に時間がかかった中、鉄道がスピード復旧した背景には何があったのだろうか。観光への影響も含め、地震発生後
チルチルとミチルの『青い鳥』で有名なベルギーのメーテルリンク(1862~1949年)の戯曲に『盲目の人たち』(Les Aveugles)という作品がある。その1つは、こういう話だ。 ある盲目の老人が、「誰か部屋に来ていないか?」と何度も部屋の中の人たちに尋ねるのだが、そこにいるすべてのものが、「いや誰も来ていない」と答える。老人は、いや部屋には誰かいると不安げに何度も問いかけるが、また「誰もいない」と答える。 メーテルリンクの戯曲『盲目の人たち』 老人は娘の死の予感に苛まれ、誰か知らせに来ていないかと尋ねたのである。結局、老人の予感通り、それから数時間後、娘の死を知らせに1人の人物が現れる。 フランスで、シルヴィー・カウフマンという女性ジャーナリストが書いた『盲目にされた人たち―ベルリンとパリはなぜロシアに道を自由に開いたのか』(Les Aveuglés,Stock,2024)という本が、
『花束みたいな恋をした』は、ファミレスの物語だ。坂元裕二が脚本を書き、2021年に公開された同作は、主人公2人の甘く、苦いラブストーリー。それは、ファミレスでの告白からはじまり、ファミレスでの別れ話で終わる。 ちなみに筆者はこうした「ファミレスでだらだらするシーン」が出てくる物語を「ファミレス文学」と呼んでいるが、本作は「ファミレス文学」の代表格といえるだろう。 学生が社会人になっていくときの心の動き、そしてある種の「子どもだった自分たちへのノスタルジー」を多分に含んだ本作は、深夜のファミレスで過ごした時間が、どこか夢のような、幻のような空間だったことも表している。ファミレスで、恋人とだらだら話した時間は、もう戻ってこない。本作を見終えたあとに感じるのは、そんな気分だ。 そして、現実に、そんな「だらだらできたファミレス」は過去のものになっているのかもしれない。 苦境に立たされるファミレス
評論家の與那覇潤氏は、2015年から2017年までリワークデイケアに通った。そこにはさまざまな人が集まっており、ゲームのメンバーもそのときによって異なっていた。診察等のために途中で抜けたり交代したりする人もいて、ルールをよく知っている人とまったくわからない人が交ざってプレイしていた。初心者は放っておくと大敗するため、自ずと周囲がフォローすることになる。この積み重ねが、與那覇氏の心にじわじわと効いた。 「うつ状態の僕は、『ほとんどの人間は信用できない』という精神状態に陥っていました。でもゲームをしていると、たまたまそこで同席しただけの人がすごく優しくしてくれるわけです。ルールを教えてくれるのはもちろん、自分が不利になっても手助けしてくれることも珍しくない。『あれ、人間って意外に信用できるぜ』と思えたことが大きかったですね」 ここ数年、ボードゲームは教育の場でも急速に広まった。学校図書室に複数
近畿日本鉄道は特急車両の顔ぶれが豊富な鉄道会社だ。名古屋と大阪を結ぶフラッグシップ特急「ひのとり」には「アーバンライナー」、伊勢志摩方面への豪華特急「しまかぜ」には「伊勢志摩ライナー」というように先輩格となる車両が存在する。 一方、地味に見えてユニークな経歴を持った一般車両も多くある。その1つが名古屋線系統で通勤通学を中心に活躍する「2000系」だ。デビューは1978年。2階建て特急車両「ビスタカー」の先代「10100系」の台車を履いた編成があれば、観光列車に転身した編成もある。 往年の名車「2代目ビスタカー」 かつて国鉄と名阪間で競争を繰り広げていた近鉄は、大阪線が標準軌(1435mm)、名古屋線が狭軌(1067mm)とレール幅が異なっており、途中駅での乗り換えがネックとなっていた。ビスタカー10100系は1959年、伊勢湾台風の甚大な被害を機に予定より前倒しして標準軌に統一された名阪間
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