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id:jkondoが聞く、はてなブックマークリニューアルの舞台裏

2008年11月25日に大規模なリニューアルを行った「はてなブックマーク」。日本最大級のソーシャルブックマークサービスとして多くのユーザーに利用されてきましたが、今回のリニューアルでデザインや機能が大きく変わりました。はてなのサービスの中でも特に大規模なものとなったリニューアルについて、はてな代表取締役のid:jkondoがはてなブックマークのディレクターであるid:naoyaにインタビューしました。

はてなブックマークリニューアルを振り返る

「最初は一人で全部作るつもりだったんですけど」
jkondo
まず振り返ってみたいんですが、いつからリニューアルにとりかかったんですか?
naoya
京都にオフィスが移ってきた頃に本格的に開始しているので、3月からですね。正味9ヶ月。
jkondo
9ヶ月、すごいですね。3/4年という長期間ですけど、最初は1人で?
naoya
最初は一人でしたね。最初というか、かなり一人でしたね。デザイナーのid:nagayamaが隣でデザインを作っていたんですが、システムとデザインは最初ばらばらなので、システム開発自体は2〜3ヶ月の間実質一人でした。
jkondo
だんだんブックマークチームのメンバーが増えていったんですよね。どんな経緯で増えたんですか?
naoya
最初は一人で全部作るつもりだったんですけどかなり見積もりが甘くて。自分の能力を過信し過ぎてて、これは無理だということに。
jkondo
一人で、いつをめどにリニューアルするつもりだったんですか?
naoya
夏ぐらいまでに。どれだけ自分に過剰な自信を持ってるんだって感じなんですけど。チームになったのは、一人では無理というのもあったんですが、会社全体が組織でものを作る方向にシフトしていて、その方がいいものが作れるという事例がはてなフォトライフのリニューアルなどを見てわかってきて。自分もその前の1年間はインフラをチーム体制でやっていたので、チームの方がいいだろうという判断で、人を少しずつ増やしていったんですね。
jkondo
最初は一から作り直すかどうかについてかなり考えていたと思うんですが、結果的には作り直したんですよね。
naoya
もともと検索やテキスト分類、お気に入り機能をもう少しフィーチャーするなどの大きい変更を加えたかったんですよ。そのためにどうするかというのがそもそもの出発点で、単にコードが汚くて嫌だから作り直すという理由は途中で捨てていました。また、チームで作っていくとなると、ある程度コードベースがしっかりしていないとつぎはぎだらけになっていくのが目に見えていたので、1から作り直した方がいい状態でした。
jkondo
最初は既存のコードをベースにリニューアルをしようとして、途中でやっぱりこれは、という感じになってきたと。
naoya
そうです。最初の1〜2週間は既存のコードの整理をしていたんですが、これはもう本質的に作り直さないとどうにもならないということがわかって。
jkondo
既存のコードを使う場合と使わない場合がこれからも出てくると思うんですが、これはスクラッチから書いた方がいいっていう決め手は何なんでしょう。
naoya
決め手……勢いでした。
jkondo
勢い?(笑)
naoya
いや、最初に2週間くらい、スクラッチから書いてみたらどれくらいのスピードで書けるかを、自分で試してみたんですよ。思いのほか進みがよかったので、どこまで行けるかなと。
jkondo
その時は一人で、夏までに……
naoya
一人でいけると。
jkondo
(笑)
naoya
全く無理だった、というオチですね。
jkondo
振り返ってみて、スクラッチから書こうという決断はどうでした?
naoya
正しかったと思っています。リニューアルをして、見た目が変わって機能もいくつか便利になったけど、そんなに変わったという印象を持たれないユーザーさんもいると思うんですね。でも内部的な話でいうと、開発チームの体力が、昔が1なら今は100くらいあるので。
jkondo
それは開発力?
naoya
開発力も企画力も、すべてにおいてです。例えば正式リリースして今までちょうど1週間くらい(2008年12月4日収録)なんですが、その間にはてなアイデアに登録されたアイデアを100個以上実装済みにしたんですよ。もし既存のコードベースのまま、僕一人でチームを作らずにやっていたら、絶対無理だと思います。新しいコードをベースに作り直して、かつそのプロセスの中に少しずつチームビルディングを加えて体制を整えてきたおかげで、これから先、やりたいことができる状態までかなり持ってくることができました。スクラッチから書かなかったら次のフェーズには行けなかったという感じがします。
jkondo
今は作る力が100倍くらい?
naoya
そうですね。実際そうだと思いますよ。
jkondo
じゃあ、今までよりも100倍のペースで新機能が……(笑)
naoya
100倍って相当速いですよ(笑)。まあ10倍くらいかな。

ブックマークチーム内の役割分担

「エンジニア主導の体制が今のはてなブックマークらしさにつながっている」
jkondo
今、ブックマークチームには何人いるんですか?
naoya
メインで開発に携わっているのは7人ですね。
jkondo
チーム内での、メンバーの役割分担を教えてください。
naoya
僕がディレクションを担当して、全体の方向性を決めたり、開発のマネジメントやスケジューリングをして、指示を出しています。僕もコードは書くんですが、書く時間は1日の中で1/3くらいしか使っていません。一方で、それぞれのメンバーには100%開発に集中してもらっています。id:secondlifeはインターフェースや新機能など、ユーザーさんに一番近いエンジニアリングをやっています。アルバイトのid:suzakはもう少しバックエンド寄りで、テキスト部分のエンジンなどを担当しています。id:nanoliaはちょうどid:secondlifeとid:suzakの間ぐらいのところにいて、サーバサイドを主にやっています。id:nagayamaがデザインと、アルバイトのデザイナーのid:htomineのマネジメント・ディレクションをやっていますね。id:htomineはデザインとライティングをしています。id:taraoは今、グラフ理論を使って、自分のお気に入りの中からおすすめのお気に入りユーザーをさらに推薦してくれるというシステムを作っています。
jkondo
ディレクターがいて、その下にフラットな感じでエンジニアが5人とデザイナーが2人いるんですね。規模的にはどうですか?
naoya
現状はちょうどいいくらいだと思います。役割分担もかなりしっかりできているし、それぞれ得意分野が違うので、これといったらこの人というのが自動的に決まるような感じになっています。
jkondo
開発のスタイルとして、プログラムをまず書いてインターフェースをのせるというエンジニア主導のやり方をしていると思いますが、それについてはどう思っていますか?
naoya
メリットとデメリット、もちろん両方あります。メリットの1つとして、技術者の視点じゃないとできないサービスになっていると思っています。そこがITやコンピュータを得意とする人たちが集まるコミュニティにつながっている気がします。エンジニアリングが分からない人が普通にサービスを作ったら、検索やテキスト分類のようなものは出てこないと思うんですが、そういうことができているという利点はありますね。あと、別のチームのデザイナーのid:tikedaから「はてなブックマークのデザインは他のサービスに比べてかなり動きがある」と言われたんですが、何をするにも最初に動きから考えるので、確かにそれはそうだろうなと思います。デメリットは、開発が中心になるのでどうしてもエッジの効いたサービスになりがちというか、ほんわかやわらかほがらかゆるふわみたいな感じにはなかなかならない。
jkondo
そんなん作ろうと思ってるんですか?(笑)
naoya
思ってないです(笑)。それはあえてその方向を選択しているんですけどね。あとは、デザイナーにどうしても最後に負荷がかかってしまうというところですね。普通は、最初に画面があって最後にエンジニアがひいひい言いながら納期ぎりぎりになって作るんですけど、ブックマークチームでは先にエンジニアが実装を全部済ませてからデザイナーに依頼がいくのでid:nagayamaが死亡気味になるという、そういう違いはありますね。
jkondo
むしろエンジニア主導の方が今のはてなブックマークらしさにつながっていますね。その体制を変えていくということはありませんよね?
naoya
ないですね。エンジニアリングが中心となっている体制で作られて、日本の中でここまでたくさんのユーザーを集めているサービスって、たぶんそんなにないと思うんですよ。レアケースとしてちゃんと結果を出していきたいなと思っています。
jkondo
エンジニア主導でサービスを作った時、最後にユーザーさんがちゃんと使えるようになっているかどうかのインターフェースのチェックが難しくなる場合も多いと思うんですが、その辺は誰がコントロールを?
naoya
ユーザビリティテストを積極的にするようになりました。作り手の側の人たちは、ここがこういう風に使いにくいとロジカルに説明されてもなかなか受け入れられないんですよ。だから使っている様子を見るのが重要なんですね。社内でも先にサービスを公開してスタッフに使ってもらい、それをエンジニアが後ろで見るということをやるようにしています。最後の細かい詰めではエンジニアが自主的にやっていることが多いです。結構id:secondlifeなんかはスタッフの後ろに出かけていって「ちょっと使ってみてください」と言って、実際に使ってるところを見て「ああこれじゃだめだ」って直したり。
jkondo
チーム内でどんどんやっていってるんですね。
naoya
一般的な認識として、エンジニアリングができる人はエンジニアの気持ちにしかなれないから、ITリテラシーがそんなに高くない人向けのインターフェースは作れないという先入観ってありますよね。僕はそうじゃないと思っています。必ずしもエンジニアリング中心のチームだからといって、使いにくいものしか作れないということはないと思うんですよ。ちゃんと能力がある人がものを組み立てると、どうすればどんなふうに動くかを最後まで知っているので、むしろエンジニアリングのことがわからない人向けに使いやすいものを作れる、そういうことを追求していきたいんですね。
jkondo
それには僕も同意です。要は誰が使っている姿を想像しているか、誰に向かって作っているかという意識を、どの範囲まで持てるかという問題ですね。
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