テレビ局の三階、Aスタッフルームと書かれた白い扉を開けると、新プロデューサーは独り中央のデスクに座ってタブレット端末を操作していた。窓の締め切られた十六畳程度の室内は、見た目の清潔さに比して少々埃臭い。占い師は露骨に顔を歪め洟を啜ったが、すぐに表情を戻し軽く会釈した。 「先日はどうも」 「占い師の円筒将門先生、だっけか」机から頭を上げ、渕崎はてらてら光る頭部を二、三度撫でやった。「事件について質問があるとか」 胡乱な眼差しは前回と変わりないが、憔悴の色濃い顔貌に反抗の意思は見られない。肩書は増えたのに、以前の尊大さはすっかり鳴りを潜めていた。 その理由も、ここで明らかになるのだろうか。本格的な初仕事に壱八は逸る気持ちを抑えきれず、将門の横で焦れたように両拳を握ったり開いたりしている。 「渕崎さん、プロデューサーへの昇進、まずはおめでとうございます。あ、南さんにつきましてはご愁傷さまでした。