山本潤さんは、父親からの性暴力によって「私」を失った。13歳のときのことだ。それから父親と離れて暮らすようになるまでの7年間、日常的に被害を受けることになる。『13歳、「私」をなくした私~性暴力と生きることのリアル~』(朝日新聞出版)には、そんな山本さんが自分を取り戻していく過程がつづられている。表紙の写真が印象的だ。現在の山本さんはこの写真のように自分の足で歩き、生きている。しかし、そこに至るまでには長い長い時間を必要とした。 看護師・保健師として医療現場で活躍すると同時に、「性暴力と刑法を考える当事者の会」代表も務める山本さんに、本書に込めた思いや願いをうかがった。 ――当事者としてみずからの被害、そこからの回復を本として著した背景にはどんな思いがあるのでしょうか? 山本潤さん(以下、山本)「たとえば『痴漢に遭った』『性的虐待を受けた』と性暴力の事実を伝えると、多くの人は大変だっ