『ヨハネスブルグの天使たち』 宮内悠介 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) 敢えて言うけれども、この小説は美少女の夕立、次々と落ちていく美少女型ロボットという情景を書くためだけに書かれた作品なんじゃないかと思う。それぐらい、このモチーフは強烈だ。 短編連作の中で、美少女ロボットDX9は落ち続ける。ヨハネスブルグの廃墟と化したマンションから、911を再現するために再建されたツインタワーから、落下傘降下でアフガンの空から、イエメンの脆い土壁の摩天楼から、そして、東京の下町に広がる団地の屋上から。 DX9は言わずと知れたYAMAHAのシンセサイザーの名機だ。そして、この名前が唄うために作られた美少女型ロボットに付与されたとき、当然のようにそこにはYAMAHAのVOCALOIDが浮かび上がる。宮内氏は隠れボカロPなんだそうな。さもありなん。 落ち行く美少女の情景に、さらに“テロ”というテーマ