FBI美術捜査官 奪われた名画を追え 著者:ロバート・K.ウィットマン 出版社:柏書房 ジャンル:社会・時事・政治・行政 FBI美術捜査官―奪われた名画を追え [著]ロバート・K・ウィットマン、ジョン・シフマン これが映画や小説ではない現実に起きた話だけに面白い。現実も捨てたものではない。なんて呑気(のんき)なことを言っているが、本書は歴史上類を見ない名画窃盗事件の火中に飛び込んだFBI美術犯罪捜査官で、百戦錬磨の知的駆け引き術で窃盗団の一味をじらしたり追い込んだりするいかがわしい美術商を演じた男の回想録である。 暗黒街とコネクションを持ち、盗まれた絵画を仲介して金にしようとたくらむ2人のフランス人相手に、アメリカの美術館から盗まれたフェルメールとレンブラントをなんとか回収しようと、ダリ、クリムト、オキーフなど6点の贋作(がんさく)絵画を麻薬ディーラーに売る現場を見せる大芝居を打つ。交渉は
本の魔法とは「活字だけで読んでもわからないが、単行本の装幀や装画と相まってわかってくる本の魔力」を意味する。 本書は著者が装幀を手がけた、愛惜してやまない十五冊の本について「本の魔法にかかって、びりびりと感じたものの記録」である。 対象は武田泰淳『富士』や古井由吉『杳子・妻隠』に始まり、中上健次『岬』や森敦『月山』を経て小川国夫の遺作『弱い神』に及ぶ。戦後文学を総覧する勢いである。 核になっているのは、これらの作家や編集者との、時に信じ難いような痛飲と狼藉を交えた濃密な交流である。また、取材中のポーランドで出会った狂気の詩人J・Wとのエピソードなど、一篇一篇がさながら短編小説を読んでいるかのような趣がする。 他方「テキストを深読みしてかえって不評を買うこともあった」という著者は「『富士』は、武田さんにとって百合子さんを知りつくすために、書かれたといえるかもしれない」と作品の本質を抉る。 問
イギリス国王ジョージ五世が戴冠(たいかん)式を挙行した一九一一年。 それは、世界戦争の暗雲が立ちこめて、「世界に冠たる大英帝国」が凋落(ちょうらく)に向かう時代でもあった。政治の主役はもはや国王や貴族ではない。大衆民主主義が時代の潮流となる。 この困難な時代に、国民と王室の紐帯(ちゅうたい)を守り、国民の幸福を強く願っていたのがジョージ五世であった。本書は、イギリス史家の君塚直隆氏が、名君ジョージ五世の生涯とその時代を描いた魅力的な評伝だ。それでは、かの国王は、いかにして危機を乗り越えたか。 ジョージ五世は次のように語る。「私は決して賢い人間ではない。しかし、もし私がこれまでに出会ってきた優れた頭脳たちから何も引き出すことができなければ、私はただの阿呆(あほう)と言っていいだろう」。危機の時代に国王ジョージ五世は、謙虚にまわりの者たちの言葉に耳を傾けた。そして国民が求めるものを、誠実に感じ
ボストンの刑務所で図書室の司書をしていた著者によるノンフィクション。 司書は職員だが、刑務官とは違う。本は他者と何かを共有するためのもの。それだけに、受刑者との距離の取り方が難しい。著者は悩み、刑務所にとって図書室とは何なのか迷い、さらに社会にとって刑務所とは、と考える。愚直とペダントリーの往復運動のような筆致で、自身の個人的な歴史(正統派ユダヤ教徒の家庭で生まれ育った少年時代、ホロコーストを経験した祖母の記憶)を織りこみながら、刑務所を立体的な世界として描いてゆく。 その世界とは一種の煉獄(れんごく)だ。たとえ図書室や運動場を持つ近代的な建物であろうとも、服役が社会的な死を意味するという以上に、そこは切実に死に近い。たとえばジェシカという女性受刑者は、二十年前に捨てた息子を同じ服役者のなかに見つける。彼女が窓から運動場の息子を見つめる様は、この本でもっとも印象的な情景だ。が、息子への手紙
石巻日日新聞――東日本大震災で多くの犠牲者を出した石巻市に本拠を置く地域紙だ。 部数1万4000(震災以前の数字)の同紙を世界に知らしめたのが、震災の被害などを伝えた手書きの壁新聞である。 書評子にとって壁新聞と言えば、記者になり立ての1976年の夏を思い出す。ロッキード事件で田中角栄前首相が逮捕されたため、「張り出し号外」という形で手書きの新聞を作り、配属されていた支局の外壁に張り付けた。35年前、新聞社はこんな形で速報を流していたのだ。 それから月日は流れ、IT全盛の世の中になった。「壁新聞」などはもはや死語かと思っていたが、どっこい、震災でよみがえった。 石巻日日新聞は、震災による停電で輪転機が使えなくなった。このため、油性ペンと新聞用紙を使って壁新聞を作製、震災の翌日から6日間にわたって市内の避難所などに掲示した。 この壁新聞発行のいきさつが読売新聞などで報じられ、世界に転電された
東日本大震災で妻と自宅、店舗を失い、宮城県気仙沼市から群馬県中之条町に移り住んで古書店「唯書館」を再開した梅川忠昭さん(51)が、妻が発送しようとしたまま断念した古本36冊を「妻の最後の仕事を成し遂げたい」と、全国の注文先に無料で届けている。(佐賀秀玄) 事情を知った注文者から激励の手紙やメールが相次ぎ、梅川さんは「心を受け止めていただいた」と感激。初盆の今月中にすべて発送し終える予定で「これをひと区切りに、新たなスタートにしたい」と誓っている。 大震災が起きた3月11日、梅川さんと妻文恵さん(46)は書店で働いていて、梅川さんは午後2時頃に外出。「じゃあ、行ってくるね」が最後の会話になった。 文恵さんもその後、長女(23)と孫(1)を市内の病院に連れて行くため、車を運転中に地震に遭った。2人を送り届けた後、店に戻り、同28日に津波で壊滅的な被害を受けた店内で見つかった。 そのとき
講談社が人文系学術書シリーズ「講談社選書メチエ」「講談社学術文庫」の電子書籍版を購入・閲覧できるiPhone/iPad用アプリ「選書メチエ&学術文庫」を無料で公開開始したそうです。INTERNET Watchの記事によると、人文学術系書籍を集めたアプリの配信は国内初とのことです。 選書メチエ&学術文庫(iTunes) http://itunes.apple.com/jp/app/id445525307 講談社「選書メチエ」「学術文庫」を電子書籍化、iOSアプリを配信 (INTERNET Watch 2011/8/12付けニュース) http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20110812_467372.html
四六判 / 876ページ / 上製貼箱入 / 価格 16,500円 (消費税 1,500円) ISBN978-4-588-11028-3 C1395 [2011年07月 刊行] 本巻には、狭義の文芸評論から遠ざかり、政治の改革者あるいは文明評論家として現れた嶺雲が、北清事変への従軍から帰って『中国民報』の主筆となり、それを辞して東京に去るまでの「岡山時代」のうち、1901~04年の評論及び感想を収録。嶺雲の発禁評論集第一号となった『壺中観』を巻頭に収め、人種的・社会的・性的な平等が確保された世界共同体の形成を展望する思索の総体が明らかにされる。 田岡 嶺雲(タオカ レイウン)1871年,土佐国高知(現・高知県高知市)に生まれる。本名は田岡佐代治。自由民権運動の興隆を受け、1880年代には高知市内の民権結社にも加入していた。1890年、上京し水産伝習所(現在の東京海洋大学水産学部)に入学、後
大阪維新の会が教育基本条例の素案をまとめた。 知事・市長による教育目標の設定や教育委員の罷免権など、教育委員会に対する政治主導を明記したほか、校長による教職員への権限強化など組織管理の徹底も打ち出している。 その趣旨は基本条例の冒頭に示されている。 「教育行政からあまりに政治が遠ざけられ、教育に民意が十分に反映されてこなかったという不均衡な役割分担を改善し、政治が適切に教育行政における役割を果たし、民の力が確実に教育行政に及ばなければならない」。 教育の独立性についても、従来の教育現場からは違和感のある理解が示されている。 「教育の政治的中立性や教育委員会の独立性という概念は、従来、教育行政に政治は一切関与できないかのように認識され、その結果、教員組織と教育行政は聖域扱いされがちであった。しかし、教育の政治的中立性とは、本来、教育基本法(平成18年法律第120号)第14条に規定されていると
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く