AI時代にこそ「ベーシックインカム」の実現を 汎用AIの普及が人間の仕事を奪い、包括的な社会保障制度が必要になる 井上智洋 駒澤大学経済学部准教授 ベーシックインカムとは何か? ベーシックインカム(BI)は、政府が国民全員に対して生活に必要な最低限のお金を給付する制度である。私はこれをよく「児童手当+大人手当、すなわちみんな手当」と言い表している。 例えば、月7万円といったお金を老若男女を問わず給付する。個々人に対して給付するので3人家族ならば合計21万円、4人家族ならば合計28万円の所得がBIによって得られることになる。 ベーシックインカムの起源と負の所得税 誰がBIを最初に考案したのだろうか? 起源をたどると、16世紀のトマス・モア、18世紀のトマス・ペインとトマス・スペンスという3人のトマスに行きつく。3人はいずれもイギリスの思想家であり、ファーストネームがトマスであるのは全くの偶然