ロシアのウクライナ侵攻は3年目に入った。戦時の市民が直面する苦難や奮闘ぶりを点描する。「卵1個が17フリブナ(約65円)」。2023年1月に報じられた国防省幹部による軍の調達に絡む汚職疑惑はウクライナ国内で衝撃を広げた。卵やジャガイモなど市場価格の2倍以上の水増しがされていた例もあった。国防省の内部資料から疑惑を暴いたのは反汚職の調査報道記者として知られるユーリー・ニコロフ氏だ。同氏の報道で
11月の米大統領選に向けて、トランプ前米大統領が共和党候補に指名される可能性が高まっている。関連報道が増えるなかで、米メディアは事実とは異なる内容や誇張表現が多い前大統領の発言をどう報じるかに頭を悩ませる。特に、事前にファクトチェック(事実の真偽確認)ができない前大統領の演説を生中継するかの判断はメディアによって分かれている。1月、中西部アイオワ州で共和候補指名争いの初戦となる党員集会が開か
メディア空間考 喜園尚史 メリル・ストリープ演じるワシントン・ポスト紙の社主は、自室に並べられた全米各紙を見て、少し笑みを浮かべた。実話に基づく米映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」の一場面だ。 1971年、米政府がベトナム戦争の機密文書掲載差し止めを求めた訴訟で、最高裁はポスト紙とニューヨーク・タイムズ紙勝訴の判決を出した。その直前、各紙が両紙に続いて機密文書を報じた。社の命運を決める日を前に、それは何よりの援軍に思えたのだろう。 昨年、耳の痛いコメントが朝日新聞デジタルに載った。他社に先行された独自ニュースを報じる際、そのことに触れなくていいのか。情報法などが専門の曽我部真裕・京都大大学院教授の指摘だ。同業他社のスクープへの「リスペクト」を欠いているのではないかという(2023年4月27日、コメントプラス)。 自らの記者生活を振り返ると…
国会議員が関係する政治団体の2021年分の政治資金収支報告書計約4万枚を調べたところ、議員186人の関係団体が「贈答品」や「ギフト代」などとして計約9200万円を支出していたことがわかった。ただ、何を誰に贈ったかは明記する必要がなく、不適切な使われ方をしていないかチェックできない仕組みになっている。 朝日新聞は今回、データサイエンスの専門会社と協力し、公表済みのうち最新の21年分の報告書を調べた。対象としたのは参院選直後の昨年8月時点で国会議員だった約700人。議員の「関係政治団体」として、総務相か都道府県の選挙管理委員会に届けられている約1900団体の全報告書約4万枚を、報告書の全ページを人工知能(AI)の技術も用いながら画像解析し、「贈答」や「土産」などの支出を抽出した。記者による確認も加えた。 支出があった議員(昨年8月時点)は、所属政党別に、自民党164人▽立憲民主党9人▽日本維新
昨今、問題視されている「ニュース離れ」。英国ロイタージャーナリズム研究所によれば、世界で「ニュースを避ける傾向がある」と答えた人の割合は、2017年の29%から38%に拡大したという。「気分に悪影響がある」「信頼ができない」などが、ニュースを避ける主な理由だ(※1)。 今、メディアは世界中で苦境に立たされている。それは日本でも同じだ。日本の新聞の発行部数は、1990年代には5,000万部を超えていたが、現在では、3,000万部割れ寸前のところまで来ている(※2)。また、紙媒体だけではなくネットのニュースサイトすら、閉鎖が相次ぎ話題になった。世界でもメディアの資金難は深刻化し、人員削減の嵐が吹き荒れているのだ。 そんななか、米国の団体「デモクラシー・ポリシー・ネットワーク(Democracy Policy Network)」が政策立案し、ワシントンD.C.の議員たちがメディアを救済する法案を
小川たまかさんによる「【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性」という連載が、Yahoo! Japanニュースで行われていました。 で、私が目を疑ったのは、以下の部分です。 Colabo側は和解の条件に、指名したライターによるA氏へのインタビューを盛り込んだ。A氏がこれを了承し、筆者とジャーナリストの安田浩一氏が都内でインタビュー取材を行うこととなった。インタビューが行われたのは9月中旬。取材には、Colabo弁護団の弁護士2名が同席した。 紛争の一方当事者の代理人たる弁護士が2人も同席していたら、インタビュイーが、当該一方当事者に阿った受け答えをするリスクが高まるので、まともなジャーナリストならそれは避けるのではないでしょうか。同席していた弁護士がインタビュー中どういう態度だったのかわかりませんが、自分たちの意に沿わない発言をインタビュイーがした場合に「違うではないか」と声を荒
Studying digital journalism, platforms, and publishers Led by director Emily Bell since our founding in 2010, our team of researchers examines digital journalism's industry-wide economic trends, its cultural shifts, and its relationship with the broader, constantly changing world of technology. Operating as an institute within Columbia University’s Graduate School of Journalism, the center provide
国境を越え、政治や社会に大きな影響力を持つ巨大IT企業が、報道の領域も揺さぶっている。ニュース配信をめぐり、IT企業と政府との攻防は激しさを増している。 「この法律は、ニュースを配信して市場を支配するデジタルプラットフォーム事業者に対し、カナダの報道機関と公正、誠実に交渉することを義務づけるもの…
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻。21世紀のヨーロッパで始まった戦争では、住民や兵士らによってネット上に大量の情報が投稿されている。そうした公開情報を収集して戦場の実相を明らかにする活動、オープンソース・インテリジェンス(OSINT)が民間人の間で盛んに行われ、戦争報道や研究に大きな影響を及ぼしている。 中でも、撃破された兵器の写真や動画をカウントし、ロシア・ウクライナ両軍の損耗兵器をリスト化しているオランダの軍事情報サイトOryxに世界的な注目が集まっている。Oryxが作成した損耗リストは、ロシア軍の多大な損害を物証付きで明らかにしており、CNN、BBC、NHKといった世界中のメディア、さらにはイギリス国防省でも信用できる情報源として引用されている。現在、Twitterのフォロワーは約43万人だ。 ロシア軍の損害をカウントするOryxのページ(Oryxサイトより) その
小泉悠・東大先端科学技術研究センター専任講師=東京都目黒区の同センター、2023年4月6日、田中成之撮影 「せめて38ノースぐらいのことは(日本でも)できるようになろうぜ」。「38(サーティーエイト)ノース」とは、米シンクタンクが運営するサイト。北朝鮮の核・ミサイル情報の分析が、日本国内の報道でよく引用されている。2022年秋の東京都内の出版イベントでこんな発言をしたのは、ウクライナ侵攻の解説で注目されているロシア軍事戦略の専門家、小泉悠さんだ。米宇宙技術企業のマクサー・テクノロジーズが提供する衛星画像サービスを22年4月にポケットマネーで契約した理由を問われた時の答えだった。どんな意気込みが込められていたのか。小泉さんが専任講師を務める東大先端科学技術研究センターの研究室を訪ねてみた。【田中成之】 「僕はこれを毎日みてます」 「これなんだ? 『射撃』?」。畳1枚ほどもあるモニターの前で、
テロ事件の容疑者の生い立ちや動機は論じるべきではない――。選挙演説会場で岸田文雄首相のそばに爆発物が投げ込まれた事件のあと、責任転嫁や同情につながるという懸念から、そうした意見がネットを中心に飛び交った。事件の背景を知ることの意味を考えた。 「物語化」と英雄視への懸念 事件をめぐっては、和歌山県警が兵庫県川西市の無職、木村隆二容疑者(24)を威力業務妨害容疑で現行犯逮捕。火薬類取締法違反(無許可製造)容疑で再逮捕された木村容疑者は黙秘しているという。 事件後、ジャーナリストの佐々木俊尚さんはツイッターにこう投稿した。 「テロリストの半生の屈折をことさらに取りあげて『社会が悪いからテロリストになった』というような物語を勝手に付与してしまうと、それは容易に英雄視につながってしまいます」 なぜこのような投稿をしたのか。佐々木さんに取材すると、事件の「物語化」への懸念を語った。 昨年7月の安倍晋三
バーゼル大学で英語とメディアを専攻し、デジタル化時代のジャーナリズムとニュースに大きな関心を持つようになる。2020年にSWI swissinfo.chのコミュニティエンゲージメント&ソーシャルメディアチームに参加。 焦点:デジタル時代のニュースとジャーナリズム、社会、在外スイス人、健康と科学 イニシャル:ib
3月下旬、アメリカのトランプ前大統領が逮捕されるのではという情報が出て、緊張が高まっていたとき、世界に広まった画像がある。 「警察に取り押さえられるトランプ前大統領」の偽画像だ。 AI=人工知能を使えばこうした画像さえ簡単に作られるようになることに、世界のメディアで「ファクトチェック」に取り組むジャーナリストたちが危機感をあらわにしている。 (科学文化部 籔内潤也 / World News部 田中千尋) 「見たものが信じられないとなると、ニュースはどうなってしまうのか」 3月末、ロンドンで開かれた「TNI」=「信頼できるニュースに向けたイニシアチブ」と呼ばれる会合。イギリスの公共放送BBCが主導する各国メディアとITプラットフォームなどが参加する連絡組織の年次総会で、14か国のおよそ30人のジャーナリストなどが集まった。 私たちは日本のメディアとして初めて参加した。 セッションでは、それぞ
去年11月、東京の入管施設で自殺したイタリア人の男性。男性が生前残していた映像には、彼の精神状態を示す重要な手がかりがありました。イタリア人 ルカさん(56)「こんにちは、東京福生市です。ホームレスにな…
ロシアの全面侵攻を受けるウクライナでは1991年の独立後、言論の自由が大きく国の方向を左右してきた。ただメディアの歩みは腐敗や圧力との戦いだった。戦時体制下の今、メディアに何が起きているのか。代表的なインターネットメディア「ウクライナ・プラウダ」編集長のセウヒリ・ムサイエワさんに聞いた。 セウヒリ・ムサイエワSevgil Musayeva 1987年生まれ。ウクライナ南部クリミア半島出身。2011年から13年まで「フォーブス・ウクライナ」誌記者。14年から現職。 ――戦時体制下で、ウクライナのメディアにはどんな影響が出ていますか。 「たとえば、我々はウクライナ軍の死傷者の数は報じません。戦時では機密情報にあたり、我々はそうした制約を受け入れています。ただ、私たちが今議論しているのは外からの圧力ではなく、記者たちによる自己規制についてです。たとえば、汚職を報じることが欧米の不信を引き起こし、
日本ではまだあまり話題になっていないが、ニュースやコンテンツを作るメディアとそれを配信するプラットフォーマーとの関係を巡る対立が一部で先鋭化している。2021年にはオーストラリア議会がフェイスブックに対し、地元メディア企業が配信するニュースコンテンツの利用料を支払うべきとする法律を可決したことがきっかけでフェイスブックがニュース配信を停止するという事態が起きた。これと同じことが米国でも起こる可能性が高まっている。米国議会で議論される予定のJCPA(ジャーナリズム競争・保護法)という法案が原因だ。 バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テ
https://twitter.com/mizloq/status/1594608637208850434 https://twitter.com/mizloq/status/1594554415045742592 WJSの調査をまとめ直しただけなのだけれど、こういう視覚化が珍しかったのか、たくさんの反応ありがとうございました。 わたしが注目していただきたかったことhttps://pbs.twimg.com/media/FiEvYdVacAIZ4Rg?format=jpg&name=medium あの表から読み取っていただけることはいくつもある中で、表を作ってTwitterに投稿した者として是非注目していただきたかった点は次のとおり。 「事実をありのままに伝える」がトップでないのはこの中で(中露も含めて)日本だけであること、「客観的な観察者であること」をきわめて重要/とても重要な役割とする
米国の政府や報道関連機関がSNS上の偽情報の拡散を食い止める取り組みを強めている。ウクライナ侵攻をめぐるロシアのフェイクニュースや米大統領選、新型コロナウイルス対策などをめぐる真偽不明の主張が社会の混乱や報道への不信を招き、ひいては「民主主義の破壊」にもつながりかねないとの危機感が背景にある。一方、日本でも非営利団体などが偽情報への対抗に乗り出しているが、その取り組みは海外に比べて遅れていると指摘されている。 数年前の軍事訓練の音声米国務省は8月下旬から9月中旬にかけて、調査報道に携わる海外記者向けに研修プログラム「IVLP(インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム)」を実施した。その内容からは、現在のネット空間をめぐる米国の強い危機意識が浮き彫りになっていた。 「この射撃音をネット上の音声データと突き合わせると、数年前に撮影されたフィンランドでの軍事訓練の音声と一致する」
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く