日本交通は、東京を拠点に営業する国内最大手のタクシー会社である。 「タクシー王」と呼ばれた川鍋一朗の祖父、秋蔵が1928年に創業。83年に父・達朗が跡を継いだものの、不動産事業への積極展開があだとなり、経営が悪化した。川鍋が入社した2000年には、グループ全体の負債は1900億円に達していた。 川鍋は、そんな会社の実態を全く知ることなく、幼いころから3代目になるための準備を着々と進めてきた。幼稚舎から大学まで慶応義塾。大学卒業後は米国へ留学し、MBA(経営学修士)を取得。帰国後は外資系コンサルティング会社マッキンゼーに入社し修業した。 「何らかの変化があれば、会社がおかしいなって気付いたかもしれないけど、街を歩けば、日交のタクシーがたくさん走っている。それらがすべて、多額の負債の上に成り立っていたなんて、思いもよらなかった。当時、自分の人生の課題は、あとは結婚だけと考えていたくらい。素晴ら