宇宙飛行士の古川聡さんが、国際宇宙ステーション(ISS)の長期滞在を終えて地球に帰還した。まずは、無事帰還を心から喜びたい。 古川さんの宇宙滞在は167日で、1回の飛行では日本人最長だ。日本人の宇宙滞在は通算615日になった。米国とロシアには遠く及ばないものの、ドイツを抜いて世界3位の宇宙滞在実績である。 医師の経歴を持つ古川さんは、地上と宇宙空間を結ぶ遠隔診療システムの実証試験など多くの医学実験に取り組んだ。将来の月や火星への有人飛行に向けて、過酷な宇宙環境が人体に及ぼす影響を調べることが本来の目標だ。 だが日本では、こうした宇宙滞在実績や医学実験で得られた知見をどんな形で継承するかの大方針が定まっていない。政府の宇宙開発戦略本部は、将来の有人宇宙開発のあり方をめぐる議論を棚上げにしてきたからだ。 日本は米スペースシャトルとISS計画を通じて有人宇宙活動の大半を学んできた。シャトルは引退