2013年8月号の国際科学雑誌『Nature』に、日本の科学コミュニケーションに関する調査結果が掲載された。この調査は科学技術振興機構(JST)の科学コミュニケーション・センターが行ったもので、僭越ながら、私もこの調査に参加させていただいている。本調査の仮説を作成している時には気づかなかったが、改めて『Nature』を読み返してみると、次第に違和感を感じてきた。 1. 9千人の科学者へのアンケート結果 本論でいう科学コミュニケーションとは、科学者が研究成果や自然科学の面白さ、時にはそのリスクについて、一般の市民に伝える行為である。特に、3.11の原発事故以降、科学者は科学コミュニケーションに努めるよう、政策的にも強く勧められている。 アンケート結果は次のような内容である。 JSTは2012年に、9000人の自然科学者に対してアンケートを実施した。その結果、64%が何ら かのかたちで科学コミ