すこし不恰好で、しかしひたすらに完璧すぎるボーイ・ミーツ・ガール譚 なにはなくとも、すさまじく「心つかまれる」映画だ。どのシーンも、カットも、すべてが愛おしく、忘れがたい印象を残す。その残像が、胸のうちで一生涯反響し続けていたとしても、おかしくはない。昨年11月より公開されたアメリカおよび各国ではすでに絶賛の嵐、ポール・トーマス・アンダーソン監督の出世作『ブギー・ナイツ』(97年)に『パンチドランク・ラヴ』(02年)を足してさらに拡大させたかのような傑作だという評判だったのだが――それでは言葉が足りないほどの一作が、この『リコリス・ピザ』なのだ。まるであの『アメリカン・グラフィティ』(73年)が今日的にヴァージョン・アップされたかのような、映画史上に燦然と輝く名作が、いまここに誕生したことを確信する次第だ。 本稿では、そんな一作の見どころを紹介しつつ、後半では僕が調査したところの結果――じ