刑事訴訟法256条1項により、検察官が公訴を提起するには、起訴状を裁判所に提出しなければならない。 起訴状には、公訴事実を書かなければならないのだが、刑訴法256条3項により、その際には、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。 かつて起訴状には、被害者の氏名を書かなければならず、これが性犯罪被害者が告訴を躊躇する原因となっていた。見ず知らずの人間から性犯罪被害に遭っただけでも辛いのに、わざわざ自分の氏名を伝えることを望む被害者などいない。 ある検察官が、刑訴法256条3項の「できる限り」の意味に幅があることに注目し、被害者の氏名を秘匿する形で起訴状を作り、これが認められた。 平成25年あたりから、被害者の氏名の一部をひらがなで書いたり、被害者の親の氏名を書いたり、被害者の事件当時の人相着衣などを書いたりして被害者の特定を試みた起訴状が、次々と