2018年3月に米国の通商法301条に基づく対中制裁措置の発動が発表されたことをきっかけに、米中貿易摩擦はエスカレートし、その後に起こった双方の間の関税引き上げ合戦に象徴されるように、貿易戦争の域に達している。これまでの米中関係は、いろいろな問題を抱えながらも、特定の分野における摩擦にとどまり、今回のような貿易戦争に発展することがなかった。貿易戦争は、相手だけでなく、自国にも大きなダメージを与える。米国がなぜ大きな代償を覚悟しながら、貿易戦争を仕掛けたのかを巡って、「中国異質論」を展開する米国側と、米国における「中国脅威論」を批判する中国側の主張が対立しているように見えるが、どちらも一面で真実を捉えているように思われる。 中国が欧米と異なる政治経済体制(いわゆる「中国モデル」)を維持しながら、経済大国として台頭してきたことを背景に、米国は、対中政策を「関与」から「抑止」に転換した。中国に対