村民運動会。 リレーのアンカー。 ぶっちぎりでトップ。 ゴールテープをきる自分の姿が頭を掠める。 一位は当然、自分。 通信簿は、いつも2ばかり並んでいたが、足の早さだけは自信があった。 まわりの歓声がどんどん大きくなっていく。 ゴールテープを切るのは、毎回、じつに気分がいい。 きっと、あと数分後だ。 走る。 走る。 走る。 あれ? おかしい、 走っても走っても、ゴールテープがないと思ったら、ゴールへと直進せずに、 カーブを2周目へと、全力で走っていた。 「ちがーう」 「そっちじゃなーい」 「なにやってんだよー」 慌てて戻ってゴールして、結果は当然ビリ。 まわりの歓声だと思っていたのは、一人だけゴールを間違えて、走っている事を教えるみんなの声だった。 村民運動会。 村中の人が、笑っていた。 40年以上経っても、時々思い出すらしい。 今の夫は、冷静でいかにも失敗しなそうな、落ち着いた雰囲気を醸