I. はじめに 今や、歴史研究に限らず、パソコン、インターネットに代表されるデジタル環境は、切っても切り離せないものとなってきている。CiNiiやJSTORなどを介して国内外の学術雑誌・紀要文献が瞬時に利用可能な現在、一昔前の苦労が嘘のようにも思える。また、紙媒体の書籍、とくに洋書に関しては、今ではAmazonなどのインターネット・サービスを通じて購入する方が大半となってきているのではなかろうか。 やがて紙媒体の本はすべてデジタルに取って代わられるなどとも言われつつ、結局のところ、そこまでドラスティクな変化はなく、紙媒体の書籍は全体としては衰微しつつも生き残っている。そして、一時期、鳴り物入りで諸方面から発売された電子書籍リーダーがさほど巷で見受けられないことにその裏返しを看て取ることもできるかもしれない。 書籍という物体には、おそらく、人類的な営みの中で一朝一夕には切り捨てられない深い身