「イントロダクション」より抜粋 C・ニクシー『信じる者は破壊せよ――古代ギリシア・ローマ、キリスト教が招いた暗黒の世紀』松宮克昌訳 私は、もともと本書を紀行記として著そうと考えていた。 ユダヤ教徒だった聖パウロが地中海を横断してジグザグに進んだように、ダマスキオスの旅路をなぞることは興味深いと思った。彼が旅したシリア、ダマスカス、バグダッド、エジプトの一部、トルコの南部の境界のすべての地に到達することはけっして容易ではなかったが、それはほぼ達成可能だった。 だが、この着想と本書を執筆する間に経過した何年かに、これを行うのは現実的に不可能になった。 これから書くように、それ以来、シリア内戦はシリアの一部を新たなイスラム国カリフの支配下に置いてしまった。音楽は禁止され、書物は燃やされた。英国外務省はシナイ半島北部へのすべての旅に注意喚起した。 2015年、イスラム国の民兵はイラクの都市モスルの