ユダヤ教やキリスト教、イスラム教にまつわる史跡が数多く残り、今も世界中から巡礼が訪れる「聖都」エルサレム。多様な文化が混じり合う街の魅力を、まるで美術館を巡るように丹念に解説した『エルサレムの歴史と文化 3つの宗教の聖地をめぐる』が好評を博しています。作者の浅野和生さんに、執筆の背景を伺いました。 ――これまでのご研究、専門分野について教えてください。 浅野: 学生のとき以来、ビザンティンの美術史を専攻しています。これまでの人生の中で、イスタンブールのアギア・ソフィア大聖堂の歴史を掘り下げたり、トルコにあるビザンティン時代の遺跡を発掘したり、教会の壁画や工芸品を取り上げてそれが制作されたいきさつと制作年代を突き止めようとしたり、という研究をしてきました。 ――そうした中で、今回エルサレムを主題に選んだ理由はなんだったのでしょうか。 浅野: 今回エルサレムを主題にしたのは、エルサレムもかつて