日本軍の占領下におかれたインド人の動向については、インド国民軍などの研究がいくつかあるが、それ以外のインド人の動向についてはほとんど関心が向けられておらず、その実相はよくわかっていない。またインド国民軍に参加したインド人はナショナリズムに燃えていたという側面だけでとらえてよいのだろうか。ここでは、インド国民軍に参加しながらも醒めた目で見ていたインド人と、インド国民軍に参加することを拒否したために労務隊として南太平洋に送り込まれたインド人の二人の体験記を紹介する。その分析から、インド国民軍に加わった者にはナショナリズムだけではなくかなり実利的な理由があったこと、インド国民軍の募集にあたって脅迫強制がなされていたこと、参加を拒んだ者たちが労務隊に編成され南太平洋に送られ多大の犠牲を出したこと、日本軍のインド人への態度が中国人とは明らかに違っていたこと、などを明らかにした。このことによって、日本