1970年からの半世紀。それまで成長の世紀を享受した日本の近代出版は、奇しくもバブル期において頂点を迎え、デジタルというパラダイムの転換に遭遇し、その本質を理解しないままに没落を迎えた。著者はデジタルに本の未来を見ているが、言語文化の継承なき未来はないという立場だ。「戦記」で描かれたのはどんな戦いだったのだろうか。 なぜ「戦記」か、なぜ見えにくいのか 「戦記」の構成は、過去(第1、2章)・現在(第3章)・未来(第4章)の三部構成。あえて過去を重くしたのは、懐旧の情からではなく、コンテクストとしての現在(あるいはEPUB)を理解し、所与ではなく当為としての未来を問題にするためであることは、終章で語られる。そして、本書そのものが「未来の本」の一つの形である、タイムラインを開放した「共観年代記」構想の一部であることも。ちなみにそれは複数の視点で「戦記」を拡張するものであり、冊子体の中に封印されて