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ブックマーク / www.city.kobe.lg.jp (14)

  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第5回 視線」

    ショッピングモールや駅や公園などの公共空間で、人目をはばかる事なく大きな声で子供を怒っているお母さんを見かける事がある。そんな時、子供がかわいそうだと非難する気持ちよりも先に、感情が決壊してしまった母親への同情が先に立ってしまい、彼女に対して、今がふんばりどころやからなんとかおだやかに、深呼吸してがんばろうや、などと心の中で声をかけずにはいられない。 理屈だけで言うならば、意のままにならない自分よりも小さな存在に対し声を荒げても仕方がない。しかしそんな事は当人が誰よりもわかっているはずで、ひとりの弱い人間でしかない私たちは時として、自分の感情すらコントロール出来なくなる事がある。育児はどっぷりつかればつかるほど闇と隣り合わせだ。余裕を失ったあのお母さんの追い詰められ方は、我が事のようにきついなと胸が痛む。 十代の頃、東京の山手線に乗っていた時、女装している男性が突然目の前に座っている女性の

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第5回 視線」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第23回 お金のハンバーガー」

    漫画『サードガール』(西村しのぶ)を読んでいたら、大好きな時代劇を見るために職場から急いで帰宅したものの冒頭のシーンを見逃してしまい地団駄を踏む美也に対し、同居人の涼が、ボーナスも出たしビデオでも買おうか?と提案する場面があった。美也は「テレビはその時放送してるヤツを見ることに意義があるのよ」「なんたって同時性よ。同時性!!」と言って、ビデオなんていらないと拒む。この場面が描かれたのは1985年。私が子供のころ「ビデオさえあれば日曜の朝に家にいなくてもキン肉マンが好きな時に何回でも見れるのに」と強い憧れを抱いた時期ともぴったり重なっている。当時はまだテレビ番組の放送時間に生活を合わせ、リアルタイムで視聴するスタイルが主流だった。 45歳になったイチローが日に来て、おそらくこれが現役最後になるだろうという試合の日。私もこの日ばかりはさすがに特別な気持ちでテレビの前に座らないといけない気がし

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第23回 お金のハンバーガー」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第15回 ミナイチ・エレジー」

    雨の降る日はあまり外出したくないけれど、どうしても外に出かけると言われては仕方がない。 子供用と大人用、傘を2用意して外に出て、雨の日にはいつもするように、傘を差している時に頭の上で間近に響くビニールにあたる雨の音と、その傘をさっと地面に下げた時に周囲のアスファルトから響いてくる雨の音が、同じ雨の音なのにまったく違っていてそれがとてもおもしろいのだ、という事を教えようとするけれど、今の彼女はそのような話にはまったく興味がなくて、反響する雨の音などはつまらないとでも言うように、私の言葉や大げさな身ぶりから逃げ出して駆ける。それでもすぐ、自分の足で歩くのに飽きた、傘を差すのにも飽きたと言うから、結局はほとんどの道中を肩車しながら手を伸ばして傘を差し、えっちらおっちらと歩く。湊川商店街まで来ればアーケードがあるからもう傘は必要ない。以前は毎日のようにしていた肩車も最近は回数が激減して、終わりが

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第15回 ミナイチ・エレジー」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第6回 反響」

    「イルカの頭にあるコブは、ある果物の名前で呼ばれています。それはスイカでしょうか? メロンでしょうか?」 「スイカだと思う人!!!」 (メロンもあり得ないが、スイカはさらにあり得ない気がする……) 「メロンだと思う人!!!」 そんな消極的な理由から、私はメロンの方に手を挙げた。 「正解は、メロンです!!! イルカは脂肪で出来た頭部のメロンから音波を飛ばし、その反響によって周辺を認知するエコーロケーションと呼ばれる能力を使って生活しています」 須磨海浜水族園で行われるイルカライブ(ショー)では、いつもオープニングのパフォーマンスの後に、観客に向けてイルカにまつわるクイズが出される。正解して何かがもらえるわけでもないのだが、ライブが終わるごとにイルカに関する豆知識が増えて行くという楽しい時間だ。 「イルカの妊娠期間は人間よりも長いでしょうか? 短いでしょうか?」 「赤ちゃんイルカに生えているの

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第6回 反響」
    Clifford
    Clifford 2018/07/18
    良い。この良さを言葉にできないのがもどかしい。
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第4回 日々」

    散歩道の地面に、見慣れない迷彩柄の蛾がとまっている。一人なら気にする事もなく通り過ぎるが、子供が横にいたので立ち止まり、「大きいチョウチョがおるでえ」と一緒にしゃがみこんだ。子供は初めて出会う昆虫を前にとまどったような態度を見せ、何を思ったのか手に持っていた人形を前に並べ出し、対戦(?)の準備でも始めているようだ。 何をしたところで蛾はめったな事では動かない。やがてこちらの手をとって「(蛾を)つんつんして」と要求され、お前がやれよと思いながら仕方なく指を出してみたものの、びびってすぐに引っ込めてしまい、思えば自分にもカマキリやバッタやコオロギ、トカゲやカエルといった小さな生き物たちを見て、頭で考えるよりも先に手をだして触っていた子供時代があったと考えた。だんだんとそんな接触もなくなり、大人になった今では小さな虫をさわる事にすら抵抗を感じるようになってしまって、そんな我が身の不甲斐なさを反省

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第4回 日々」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第48回 海に帰す」

    まぶたを閉じた暗闇の中でしばらく時間を数えて、ふたたびまぶたを開いた時に、一瞬のまぶしさとともに外界の輪郭がよりくっきりするような感覚をおぼえる。外にいる時でも部屋にいる時でも、子供のころからしょっちゅう私は目をつむっていた。ほんの十秒ほどしか続かないのだが、まぶたを開いた時の色濃く鮮やかに見える(そしてすぐに消えてしまう)世界が好きだったからだ。 妄想はふくらんで、今いるのは仮の世界で、自分にはもっとふさわしい場所があり、それがほんの数秒だけくっきりとあらわれるあの架空の町なのだと思い始める。いつも見える工場や団地の向こう側には一面の大海原が広がっている。それは、ここではないどこかへの逃避願望と言ってしまえば簡単に片がついてしまうけれど、あの背後に広がる海は私だけのものだという小さな支えとなった。 最初の一人暮らしに失敗した時、その頃はまだ大阪に住んでおり、ろくに働いてもいなかったので、

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第48回 海に帰す」
    Clifford
    Clifford 2018/04/27
    好きな文章。タブロイド判も買いました。
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第42回 大丸屋上で豚まんを食べるフェス」

    世の中にはバーベキューや野外フェスに気軽に誘ってもらえる人間と、決して誘ってもらえない人間の二種類がいる。前者はつまるところ「こいつがいたら楽しいな、役にたつな、いても邪魔にならないな」と人に思われるような存在で、問題は私のような後者の存在だ。酒を飲みはじめると一点を見つめて黙り出すので場は盛り上がらないし、料理には手をつけず、人との関わりを避け、自発的に何かを手伝う事もせず自分だけの世界に耽溺(たんでき)する。書いていてつくづく思ったが、バーベキューやフェスに誘われない人間が、なぜ誘われないか。それは誘うメリットがないからだ。しかし我々は負けない。団体行動が不得手ならば1人でも参加出来るイベントを企画しよう。 先週はいかなごのシンコ漁解禁について書いたが、神戸にはこの時期に解禁される、もうひとつの重大なイベントがある。それは大丸屋上で行われるアウトドア551だ。各線元町駅を降りてすぐの、

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第42回 大丸屋上で豚まんを食べるフェス」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第32回 キラキラ」

    クリスマスシーズンの百貨店、子供用品やキッズコーナーがあるフロアのオムツ替えスペースに行くと、乳幼児とその母親、祖母という組み合わせが多く(つまり女性が多い)、入ったとたんに「むわっ」とするような、男性だらけの空間に独特のにおいがあるように女性だらけの空間にも特有のにおいがあり、空気の濃密さと、そこに小汚い格好のヒゲ面で入ってしまった瞬間の、刺さるような視線にとまどう。この時期の、特に平日の百貨店(子供用品階)というのはそういうもので、女性たちには何の悪気もなくてもやはり男1人ではなかなか入りにくい。すいませんね、すいませんねと思いながら必要な作業をすませ、子供を抱いてさっさと逃げるようにその場から去り、エスカレーターで1階に降りて外に出る。そんな時に思い切り吸い込む冬の空気はひんやりと気持ち良い。 つくづく思うのだが、私は幼い子供を連れていると、全身が過敏な粘膜のようになってしまい、善意

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第32回 キラキラ」
    Clifford
    Clifford 2017/12/27
    年内最後に良いものを読ませてもらいました
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第29回 すべり台」

    手足ばたつかせるだけだった赤ちゃんがいつの間にか寝返りを打ち、ハイハイし、やがて立ち上がって不器用に歩き出す。歩くことを覚えてからというもの、ずっと一日中あっちへこっちへと動いているものだから、ついて歩くこちらが先にバテてしまい「子供の体力はすごいな。四十男にはついていけねえわ」そんな事ばかり考えていた。でも、こちらも体力がついたのか単に慣れただけなのか、一日のやりくりに関してまあこれくらいならなんとかなりそうだ、なんて甘く考えていた矢先、先月くらいから子供の身体能力が急に一段階、上のレベルに移行したというか、今までのは準備体操だよとばかりにさらに激しく外を駆け回るようになった。偏のかたまりでバナナとフライドポテトしかってないのにお前元気だなあ、というのは置いといて、ついて歩く私にしてみれば「このあたりが頂上だろうか」などと甘く考えていた場所はまだまだ山の一合目二合目であったというわけ

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第29回 すべり台」
    Clifford
    Clifford 2017/12/06
    すごく良い
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第28回 ありがとう、神戸マラソン」

    11月19日、日曜日。ようやくこの時がやって来た。「感謝と友情」をテーマに、「ありがとう」をキャッチフレーズにした、神戸市民なら誰もが待ち望むイベント『神戸マラソン2017』がついに開幕である。私たちごろごろ神戸取材班も前日から興奮気味で眠れず、つい調子にのって深夜4時までワインを飲んでいたら、あくる日は昼過ぎに目が覚めた。とりあえず腹に何か入れたいが現地の屋台で焼きそばでもべればいいやと三宮駅からスタート地点である神戸市役所の前まで歩く。すると現地に到着しても2万人が走るというわりには誰もおらず、警備員さんに聞くとすでに全員が出発した後とのことだ。スタート地点からの取材を計画していた私の目の前に広がるのはいつもの道路で、片付けられた柵だけが唯一、大会が少し前にここで行われた事を伝える手がかりとして残っている。 失意のまま三宮駅に戻ると神戸新聞と朝日新聞が号外を配っており、さらに知らない

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第28回 ありがとう、神戸マラソン」
  • 神戸市:今だからハマる!銭湯の魅力

    最終更新日2017年10月27日 広報紙の特集記事 公衆浴場の未来をひらく 今、銭湯がアツい!銭湯が、若者の間で再注目されつつあることを知っていますか。レトロブームもありますが、地域コミュニティーの希薄化が問題となっている今、直接的な人との関わりを求める若者が増えてきているようです。銭湯はただお風呂に入るところではなく、時代に即した役割や楽しみ方があります。今月は、そんな「銭湯」の役割と現状、そして魅力を紹介します。 銭湯といえば ・脚を伸ばせるほどの広い湯船 ・ご近所さんや知らない人とのコミュニケーション ・昔懐かしの外観・内装 ・裸と裸のお付き合い ・しょうぶ湯やゆず湯などの季節湯 ・風呂上りの牛乳 とたくさんの魅力があります。あなたは体験したことがありますか? 家風呂の普及で減りゆく銭湯現在、市内の銭湯は39軒。多く感じるかもしれませんが、阪神・淡路大震災前には約180軒、昭和40年

    神戸市:今だからハマる!銭湯の魅力
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第23回 「母親」を半分引き受ける」

    初めての立ち飲み屋デビューは確か生後3か月くらいの頃。以来私は抱っこしながらであれベビーカーに乗せながらであれ、ホルモン屋や串かつ屋、寿司屋に焼き肉屋、さまざまな「酒の飲める場所」に子供を連れて行っている。飲みに出かける回数自体は激減してしまったが、子供がいるからといって行動範囲が制限されてしまうのもシャクだなと思い、なるべくどこにでも子連れで行くようにしているのだ。もちろん混雑している時に行くのは他の酔客や私の子供、どちらのためにもならないので避けるが、さいわい近所には朝から開いている酒場がたくさんあるから、すいている時間帯を狙って店の前にベビーカーを横付けし一杯ひっかける。関西特有の気安さか、神戸では赤ちゃん連れで入れる店を探すのに困る事もなく、こんな所に連れてきて…などと言われた事は今まで一度もない。 というような話を先日、その日は灘区の水道筋にある串かつ屋「一燈園」に子供を連れて行

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第23回 「母親」を半分引き受ける」
    Clifford
    Clifford 2017/10/18
    良い
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2

    ごろごろ、神戸2とは インターネット上の文と写真によって深い反響を生み出すブロガーの平民金子さんが、神戸市のエッセイを執筆しました。子供を乗せたベビーカーをごろごろと押しながら、神戸の町を歩き、考えたことを綴ります。孤独と明るさ、笑いと寂寥、愁いと愛。2000年代のインターネットのように、さまざまな濃淡によって描かれた神戸の町の生活の詩をご覧ください。 エッセイ一覧 2017年5月 第1回 ごろごろ、神戸へ 第2回 新しいメリケンパーク、魂のレポート 第3回 なだらかな起伏を駆け上がる 第4回 市バス7番に乗って 2017年6月 第5回 子育て世帯にとっての神戸の住みやすさ 第6回 隧道は今日もすいとう、という話 第7回 私の東京 第8回 市場のある風景 2017年7月 第9回 ニセ神戸人宣言 第10回 スマ!スマ!スマ! 第11回 「あんぱんまん」 第12回 夏とはつまり……(須磨ドルフ

    神戸市:ごろごろ、神戸2
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第16回 一時間で神戸案内」

    「東京に行く途中で一時間ほどそちらに立ち寄るから、神戸を案内してほしい」 つい最近、九州に暮らす身内夫からそのような大雑把な頼みごとをされて、若干の面倒くささを感じながらも春先から神戸関係のばかり読んでいた私はすぐ、これは陳舜臣『神戸ものがたり』に出てくる「神戸を見たいが一時間しか余裕がないというとき、どこへ行けばよいだろう?」というテーマそのものだと思い、コラム一回ぶんくらいのネタにはなるかなという下心もあって調子よく引き受けた。と言っても一時間で何が出来るわけでもなく、普段よく買い物に行く神戸新鮮市場でのべ歩きを計画しただけだ。 時間に制限さえなければ付け替えられる前の湊川が流れていたハーバーランド近くの川崎重工あたりから出発し、つけ焼き刃の町の歴史解説をしながら新開地を北上するルートをとりたいところだが、なんせ時間がない。その辺は全部端折って、東山商店街すぐ近くの荒田公園パーキ

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第16回 一時間で神戸案内」
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