今から180年ほど前、マイケル・ファラデーが電磁誘導を発見しました。 電磁誘導によって発電が可能になったわけですから、私たちは計り知れない恩恵を受けているわけです。しかしそのことは当時、かならずしも自明なことではありませんでした。 ファラデーは、定期的に一般向けの講演を行っていて、一般大衆の前でその物理現象をデモンストレーションしてみせました。 すると、その日の講義の最後に、ひとりの女性が質問しました。 「ですが、ファラデーさん。磁石をつかって、ほんの一瞬、電気を起こしてみても、何の役に立つのでしょうか?」 ファラデーは、礼儀正しく言いました。 「奥さん、生まれたばかりの赤ん坊が、何かの役に立つと思われますか」 ファラデーの慧眼をよくあらわしている逸話ですが、180年たった今も、このような基礎科学の性格は変わりません。だからこそ個々の科学の重要性を判断することはとても難しいのです。 そして