1. はじめに 岡本太郎の提唱した理念に“対極主義”というものがある。一般的な知名度としては、 「芸術は爆発だ」という科白には及ばないかもしれない。しかし“爆発”よりもむしろ“対極” という言葉のほうが、岡本の本質をより明瞭に表しているように思われる。既成概念に挑 みかかるような彼の激しい言動の数々を思い出してみよう。そこではいつも、常識の“対 極”となるような主張がなされてはいなかったか。あるいは《太陽の塔》。1970年の大阪 万博のテーマは「人類の進歩と調和」だったが、岡本が作り上げたモニュメントはまさにそ のテーマとは“対極”の、原初的で呪術的なパワーを発し、周囲の近未来的なパヴィリオン を圧していた。 “対極”という考え方は、おそらく岡本の生涯を貫く理念だったといってよいだろう。そ れは造形上の理念にとどまらず、生き方の指針とでもいうべきものであった。彼の膨大な 著作の中でも