社会学研究者やその近接分野の研究者から、いわゆる「マルチレベル分析」についてよく似た質問をよく受けるようになったので、簡単な見解を示しておくことにする。 心理学や社会学でマルチレベル分析と呼ばれている分析方法は、基本的には変量/混合効果モデルを使った分析のことを指している。この分析モデルの使い道には、以下のようなものがある。 変量効果の推定 観察値がクラスターごとにまとまっているときの誤差の調整 分散成分の推定を通じた要因の探索 1(変量=個体効果の推定)は社会科学ではほとんど用いられない。その理由はすでに別のところ(説明と選抜:統計学における2つの「関心」)に書いた。反復テストや信頼性の検定など、測定に関するさまざまな研究の蓄積はもちろんがあるが、個体効果の推定それ自体を最終的な目的とすることは社会科学ではあまりないだろう。 2(誤差の補正)については説明を省くが、OLS回帰分析における