東レが、2012年3月期に4期ぶりに最高益を更新する。牽引役となるのは、脚光を浴びる炭素繊維ではない。長年、斜陽とされてきた繊維事業だ。同事業の営業利益は450億円を上回り、20年ぶりに最高益を更新、稼ぎ頭に返り咲く。 三井グループでレーヨンを製造する企業として1926年に誕生した東レ(旧東洋レーヨン)は、3大合成繊維のナイロン、ポリエステル、アクリルなど多数の繊維の生産を軸に成長してきた。バブル経済がピークを迎えた91年、繊維事業の営業利益は400億円を超え、全社利益の半分以上を稼いでいた。 だがそれ以降、繊維事業は逆風に悩むことになる。人件費の安さを武器に、中国などの新興勢力が台頭し始めたためだ。国内繊維メーカーのほとんどは、“脱繊維”を合言葉に、繊維事業のリストラと非繊維事業の育成に躍起になった。 帝人は異業種の医薬品で収益基盤を構築、クラレは樹脂や化学品に軸足を移していった。繊維工