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ブックマーク / antimainstreameconomics.blogspot.com (11)

  • 連合王国(イギリス)のEU離脱を考える(2)

    昨日から今日にかけて私の身のまわりで小さなできごとがいくつかありました。 その一つ。亡くなった義母が家の庭に放置してあったサボテンを、今春、私が大きめのポットに植え替え、土を替え、毎日水やりをしていたところ、すくすくと成長しはじめ、3日ほど前からきれいな黄色い花をつけ始めました。ところが、昨日の朝、見るとポットごとなくなっていました。 二つ目は、私の眼のこと、三つ目は老齢年金のことですが、こちらは省略します。一言だけ書くと、私も高齢化し、あちこち故障が出てきたと実感せずにはいられません。 さて、イギリスのEU離脱ですが、次に進む前に、前回の補足を一言。誤解されないようにもう一度繰り返すと、私にとっても今回の国民投票の結果はとても残念です。しかし、すべての事象には様々な原因があります。仏教でも、「法界縁起」(dependent-rising)と言う通り、すべての事象はすべての事象と関連しると

  • 連合王国(イギリス)のEU離脱を考える(1)

    昨年の11月にブログを更新してからあっという間に半年あまりが過ぎてしまった。 この間、退職と移転を前に身のまわりを整理したり、引っ越しをしたり、体調をくずしたり、退職後にちょっとした国内旅行をしたり、しているうちに、(数えるとちょうど)7か月が過ぎている。 さて、先日はイギリスのEU残留・離脱を問う国民投票があり、また国内では7月10日の選挙をまじかにひかえ、マスコミも様々な視角から取り上げているので、私も、経済および経済学を研究しているものとして、それらについて若干の雑感じみたものを書いてみることとする。 まずは、イギリスのEU離脱について。 これについて、私の気持ちはアンビバレントである。一面で、イギリスがEUから離脱することは、いうまでもなく「一つのヨーロッパ」(one Europe, eine Europa)の理念からすれば、後退であろう。残念という気持ちがなくはない。しかし、他面

  • これが本当の安倍氏の経済政策の結果です。 3

    いま一つ、二つデータ(グラフ)を上げておきます。 統計は、財務省の法人企業統計からのものです。 まずは、内部資金(減価償却費+内部留保)。これは企業が粗利潤(減価償却費を含む利潤)から会社の内部に留保しておく部分であり、来は設備投資などにあてるものです。そこで、グラフでは実物投資額と合わせて記してあります。 1997年頃までは、実物投資額が内部資金を超えています。これは当時、企業が活発な設備投資を行なったことを示しています。特に1980年代末〜1990年代初頭まで実物投資が膨らんでいますが、これは勿論金融・資産バブルによる資産効果の影響。つまり、資産(土地、家屋、株式など)の価格上昇により「豊かになった」と感じた人々が消費を増やした結果、企業も生産能力を拡張しようとして設備投資を行なった結果でした。 しかし、バブル(泡沫)があえなく崩壊したのち、・・・ 設備投資は50兆円ほどに急落し、そ

    これが本当の安倍氏の経済政策の結果です。 3
  • これが本当の安倍晋三氏の経済政策の帰結です。

    安倍晋三という人物の知性は様々な人によって疑われており、私ももちろん疑っています。一例を挙げると、彼は自著で「法律の支配」という言葉を臆面もなく使っています。「法の支配」なら私も知っていますが、法律の支配とは何でしょうか? マックス・ヴェーバーは、私も共訳者の一人となった大論文「ロシアにおける外見的立憲制」(名古屋大学出版会、1999年)で、ロシアの民主主義の状態について論じ、「法の支配」をほぼ法=正義、すなわち人々の「自由と諸権利」の上に成立する政治社会体制という意味で使っています。彼は1906年にロシア皇帝が発布したロシア帝国基法がこの理念に照らして、「外見的立憲制」に過ぎないことを示しました。(ちなみに、当時のロシアは君主制(の帝国)でしたので、「民主主義」ではなく「立憲制」という用語を使っています。) さて、安倍氏のいう「法律の支配」とは何でしょうか? それは彼が2013年以来行

    FTTH
    FTTH 2015/10/10
    “安倍晋三という人物の知性は様々な人によって疑われており、私ももちろん疑っています。”くっそ力強いイントロで笑うw
  • 何故EU圏、特にユーロ地域は失業率が高いのか?

    1990年代〜21世紀初頭にかけて経済学者に問いかけられた大きな問題があります。それは近年の諸地域、例えばヨーロッパ諸国(EU地域)、とりわけユーロ圏の失業率が高いのは何故かというものです。しばしば、これに関係して米国の失業率が相対的に低い理由は何かという問題も問いかけられていました。実際には、ヨーロッパにも失業率の低い地域があり、また米国でも常に失業率が低かったわけではありません。しかし、<ヨーロッパの高失業vs米国の低失業>という、いわば定型化された質問がしばしば投げかけられていました。 しかも、1994にOECDのEconomic Outlook に「職の研究」(Job Study)が掲載され、「統一理論」(Unified Theory)なるものが主張されるに至り、この問題は世界中の多くの経済学者の関心をひきました。 この「職の研究」(統一理論)によれば、ヨーロッパ諸国の高失業は、①

  • 有権者の皆さん、「トリクルダウン」などないのですよ!

    「トリクルダウン」という言葉がしばしば口頭にのぼります。いや、この言葉自体は実際には使われることは多くないかもしれませんが、その考えは、政治家やエコノミストによって表明されることはよくあります。 トリクルダウンとは、難しい言葉で「均霑」、まず富裕な人々・企業が潤うと、次に何時かは所得の低い庶民にもおこぼれがしたたり落ちてくるというものです。例えばアベノミクスを続ければ、まず企業の業績が回復し、いつの時か(いったい何年後になるのでしょうか?)従業員の給与も上げられる、といった主張・説明・解説の類です。 今回の選挙でも、それを信じて自民党に投票した人たちが多かったのでしょう。 しかし、残念ながら、それが実現したためしはまずありません。 具体例はいつか話すことにしましょう。ここでは、何故か? を説明します。 最も簡単には次のように説明されます。 国民生産は「国民所得」を生みますが、その国民所得は

  • 福島原発事故の費用 3 原発の処理・廃炉費用

    原発事故が起きた年、2011年10月に内閣府・原子力委員会の「原発・核燃料サイクル技術等検討小委員会」は、「福島第一原発事故を踏まえ」原発で重大事故が起きるリスク(事故リスク)をコストに反映させると電力1kWhあたり1.2円上昇するとの試算を示しました。 この試算の前提となる事故にかかる費用は、5兆5000億円と見積もられています。しかし、これがとんでもない過小の見積りであることは言うまでもありません。

    福島原発事故の費用 3 原発の処理・廃炉費用
  • EUROSTAT 賃金が高いほど失業率は低い!

    しばしば人件費(賃金率)が高いと低賃金の国に企業が逃げるので、失業率が高くなるという脅しともとれる言説が流されることがありますが、現実の統計はそれとはまったく異なった状態を示しています。 EUROSTATの Statistical Atlas (統計地図)でそのことを確認してみましょう。 次のサイトで簡単に見られます。 http://ec.europa.eu/eurostat/statistical-atlas/gis/viewer/ ここから Labour market を選択し、次にUnemployment rate (失業率)または 時間賃金(Hourly Wage)を選択すれば、NUTS1〜NUTS3のいずれかの地域区分方法に応じた統計地図が見られます。 まず最初に失業率です。大まかにいうと、ドイツの失業率が一番低く、ついでフランスやイギリス、周辺部(スペイン、イタリア南部、ポルト

    EUROSTAT 賃金が高いほど失業率は低い!
  • 日本の最低賃金 「先進国で最低レベル」 ILO統計より

    の最低賃金は、いわゆる先進国でも最低の水準にあります。 第一に平均値(メディアン)に対する比率で最低の水準にあります。 第二に、絶対値(購買力平価)でスペインとポルトガルの水準を少し超える程度でしかありません。いま金融危機・財政危機で騒がれているギリシャより低い水準でしかありません。日政治家は、このような数値を公表されて恥ずかしくないのでしょうか? 日政治家(菅元首相、安倍現首相など)と言えば、その多くは口を開くといつもといってよいほど日の法人税が高いから下げるべきだと主張します。この主張も問題です。確かに法人税率自体は高いかもしれませんが、例えばドイツの企業は社会保障費負担が日の2倍くらいであり、企業の公的負担はドイツのほうがずっと高い水準にあります。 グローバル・スタンダードを主張する政治家は、すぐに公正な社会をつくるため、日の最低賃金を引き上げるべく努力するべきです

    日本の最低賃金 「先進国で最低レベル」 ILO統計より
  • 賃金主導型レジームへの転換 1

    賃金主導型という意味は、貨幣賃金を抑制するのではなく、むしろ引き上げることによって経済発展・成長・(不況からの)復興を実現しようという意味である。もちろん、この言葉の背景には所得分配の問題がある。 ところが主流派の経済学は何故か所得分配について沈黙する傾きがある。何故だろうか? 所得分配は最も簡単には、次式で示されるように賃金と利潤の分配関係を意味する。 Y=W+R  ただし、W:貨幣賃金、R:利潤 もちろんR(利潤)は、最終的には経営者報酬、利子・地代、配当、内部留保、法人税等に分かれる。その他に粗利潤には減価償却費も含まれる。しかし、概して言えば、これらお主要部分は所得階層の上位1%の人々(富裕者)の重要な所得源となる。他方、賃金も可処分所得や所得税・社会保障費の負担分などに分かれるが、それは99%の人々にとっての主要な所得源をなす。 したがって第一に、賃金と利潤の配分比率(賃金シェア

  • 無理難題 人件費を下げたい、でも需要は増えて欲しい

    カール・マルクスの『資論』(たしか1868年)は、今から150年も前の。古めかしいという人も多いと思います。たしかにその通りです。しかし、古くても、現代経済の特質をずばり指摘している鋭い経済分析のであることは事実です。 その一つが、個別資(企業)の立場と社会的総資(一国の企業全体)の立場の区別と対立です。これは1936年にケインズが『雇用・利子および貨幣の一般理論』で展開したこととも共通する論点です。簡単に言えば、次のようなことです。 個々の企業は、社会全体の総需要が一定(不変)という仮定の下では、賃金(人件費)を引下げ、自社製品の価格を引き下げれば、売れ行きが増えるため、生産量を増やし、雇用も拡大し、利潤も増やすことができます。これは正しい命題です。 しかし、一国のすべての企業が同じことをやったらどうでしょうか? 例えばすべての企業が貨幣賃金率を(例えば5%)引き下げるのです。

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