→紀伊國屋書店で購入 国語学者で語源と異体字の研究で著名な杉本つとむ氏が多年にわたって書きためた文字学に関する論文をまとめた本である。杉本氏には本欄でもとりあげた『漢字百珍』という好著があるが、文字学の本は意外にも本書がはじめてだそうである。 本書は第Ⅰ篇「漢字・仮字の本質を考える」と第Ⅱ篇「漢字はどう研究されたか」の二部にわかれる。 第Ⅰ篇「漢字・仮字の本質を考える」は理論篇で、日本における漢字受容史と異体字、宛字、仮名を考察した論文が集められている。 長年、文字を研究してきた碩学だけに興味深い事例がふんだんに登場し、貴重な図版も多数収録されていて勉強になったが、理論的考察となるとどうだろうか。著者には江戸の本草学を紹介した『江戸の博物学者』というすぐれた本があるが、博物学的な観察こそが著者の本領ではないかという気がする。 片仮名と平仮名がどう違うかを論じた「漢字周辺文字としての<かな>