第77回 イノベーション・システムのハイブリッド化 筆者自身、留学と勤務で通算4年間の滞在経験からアメリカの影響は強く受けているものですが、時としてマスメディアや経済学者の一部に、無思想、無批判に「アメリカでは」とか「グローバルスタンダードでは」などと言う皮相的な議論が横行するのにはうんざりします。ゆえに「志本主義のススメ」などというタイトルをつけてこのコラムを始めたのですが、そうした問題意識からは必読の書を最近読みましたので、これを紹介します。その書は、「日米企業の利益率格差」(伊丹敬之編著、2006年11月、有斐閣)です。 日米企業の利益率格差 筆者が興味深いと思ったこの本のエッセンスを先にまとめて紹介しましょう。高橋恭仁子氏によれば、過去20年間日米トップ企業間の利益率格差は、ROAで1.8%、ROSで3.1%、ROE9.5%で、ROEの格差が大きい。これをさらに、ROA=ROS