その男・中村喜四郎は多くの呼び名を持っていた。「田中角栄最後の愛弟子」「戦後生まれ初の閣僚」「建設族のプリンス」。華々しい経歴の持ち主だった中村は、やがてゼネコン汚職で1994年に逮捕され、「刑事被告人」となる。ところが、自民党を離党して無所属となり、さらには有罪判決を受けても選挙で負けたことはなかった。 初当選から現在まで14戦無敗。「最強の無所属」「無敗の男」「日本一選挙に強い男」とも呼ばれる。 一方、中村は極度の「マスコミ嫌い」としても知られている。選挙事務所からもマスコミを閉め出し、取材に応じることは一切なかった。さらに逮捕以降、国会で発言したことは一度しかない。 そんな「沈黙の政治家」中村が25年の雌伏のときを経て、ついにすべてを語ったのがノンフィクションライター・常井健一氏による骨太なノンフィクション『無敗の男 中村喜四郎 全告白』(文藝春秋)だ。昨年12月16日に発売されて以