ブックマーク / honz.jp (761)

  • なぜ薬物依存が減らないのか『ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造』 - HONZ

    薬物依存には大変恐ろしいイメージがある。一度でも手を出せば最後、もはや依存から逃れることは叶わず万難を排して薬を手に入れることに邁進し、捕まってもやめることはできない──。 確かにコカインやマリファナといった薬物には”依存”はある。だが、世間一般に流布しているイメージは科学的に正確とは言い難いものだ。違法薬物による依存とはどのような種類の依存なのか? 依存に陥らない状況もあるのか? という点について、ただ闇雲に恐れるのではなく科学的に検証する必要がある。書は、アメリカの貧しい黒人居住地区で生まれ、幼少─青年時代を”薬物”と身近な日々を過ごした神経科学者による、”正しく怖がる”ための薬物教育の一冊である。 邦題と違い原題は『High Price: A Neuroscientist’s Journey of Self-Discovery That Challenges Everything

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    HONZ 2017/02/05
  • 『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』失敗と、どのように向き合うのか? - HONZ

    書の帯に、「英タイムズも絶賛!22ヵ国刊行の世界的ベストセラー、ついに日に上陸!」とあるので、その言葉に釣られて買ってみたが、確かにその通りの素晴らしい内容だった。 『失敗の科学』というタイトルからは、直ちに「失敗学」を連想する。これは、『失敗学のすすめ』 で有名な東京大学の畑村洋太郎名誉教授が提唱した新しい学問分野で、起きてしまった失敗に対し、責任追及のみに終始するのではなく、物理的・個人的な直接原因と背景的・組織的な根幹原因を併せて究明しようとする、安全工学に経営学などの要素を加味したものである。 しかしながら、書はこうした失敗の工学的メカニズムを明らかにするだけでなく、更に「人間が失敗から学んで進化を遂げるメカニズム」に焦点を当て、我々が進化を遂げて成功に至るカギは、「失敗とどう向き合うか」にあることを明らかにしている。 書では、まず航空業界と医学界という二つの業界を取り上げ

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    HONZ 2017/02/04
  • 『ブスの本懐』盛り込みすぎて、何のことだか分からなくしてしまえ! - HONZ

    美人について書かれた書物は、数多く存在する。一方ブスに焦点を当てたは、実に少ない。皆が触れてはいけないと思っているからだ。ブスーーそれは響きだけで人を殺すパワーをもった言葉。人道的な理由から、禁止令が出されてもおかしくないほどだ。 私もタイトルを見たとき、強く惹きつけられるのと同時に、目を背けたくなるような感情に襲われた。レジへ持っていくまでに要したのは、実に1ヶ月の期間と4度の挑戦。 ブスが『ブスの懐』を買う、これ以上の屈辱があるだろうか。しかし書を読み始めてみたら、そんな瑣末なことで悩んでいた自分が馬鹿らしくなった。 書は、日頃タブー視されがちな「ブス」という言葉を、これでもかというほど盛り込んでいる。ブスという言葉を避けるのではなく必要以上に用いることによって、最終的にブスとは何なのかを分からなくしてしまおうというのが、著者の狙いなのだ。いまだかつて、こんな画期的な解決策があ

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    HONZ 2017/02/03
  • 『方言萌え』SNSで加速する、方言コスプレとは何か? - HONZ

    えっ、方言コスプレ? 書を手にしてまず目に飛び込んで来たのが、この言葉。コスプレと言えばコスチュームプレイの略語のアレですよね、そうですよね? 言葉ですよね、コスチュームじゃないですよね、方言って言葉ですよね? ですよね?? 混乱する中、岩波ジュニア新書から出された書は私に語りかける。ジュニアとつくだけあって口調がなんだかとっても優しいのだ。優しくされるだけで、どんどん読み進もうと思うこの不思議さ。 書は地域に結びついた素の言葉である「方言」ではなく、テレビやラジオ、インターネットから地元のお土産物まで様々なコンテンツの中で加工編集された「ヴァーチャル方言」が、どのようにして広まったのかを調べた一冊だ。「萌え」とタイトルに有ることから分かるように、あくまでも好意的な使用法として紹介されている。 これだけ「ヴァーチャル方言」が巷に溢れかえっていても、意識しながら接していないと、中々その

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    HONZ 2017/01/31
  • 『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か 』本当に恐れるべきなのは失望感 - HONZ

    ジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオが共演した名作『ギルバート・グレイプ』(1993年)で印象に残るのは、なんといっても給水塔だ。 生まれ育ったアイオワの田舎町からいちども出たことがないギルバート(ジョニー・デップ)には、知的ハンディキャップをもつ弟アーニー(レオナルド・ディカプリオ)がいる。アーニーは高いところが大好きで、ちょっとでも目を離すとすぐに給水塔に登ってしまい、町中が騒ぎになるのである。 あの給水塔は、アメリカの「スモールタウン」のシンボルだ。 人口はせいぜい3千人ほどで、大きさはメインストリートを中心にほんの数ブロック程度。インターステイト・ハイウエイ(州間高速道路)からは離れた場所にあり、都会の繁栄とは無縁。住民どうしお互いをよく知っており、いまだに家に鍵をかける習慣もない。それがスモールタウンだ。 アメリカにはこうした小さな町が無数にある。 19世紀フランスの青年貴

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    HONZ 2017/01/31
  • 『昆虫たちの世渡り術 』恋をしたら昆虫のことを思い出してください - HONZ

    私たちは常に装っている。同じ集団の人間とみなされるための制服を、愛されるための装飾を、自分はこういう人間であるとみられるための記号を。 装うことは最大の武器だ。身を守るためにも、何かを得るためにも。 装うことを初めた最初の生き物は昆虫ではないかと思う。私たちは知らず知らずのうちに小さな昆虫たちの真似をしているのかもしれない。 昆虫と人間が似ている点は、他にもたくさんある。書ではそんな昆虫の生態を、擬態、共生、求愛、集団行動の4つのセクションにわけて解説している。 「14歳の世渡り術」というシリーズの書は、中学生はもちろん、小学生でも読めるような優しい語り口で紡がれる。著者は昆虫写真家として有名な海野和男さん。少しでも昆虫をかじった人ならまちがいなく聞いたことがある、昆虫好きからすればまさに神様のような存在だ。 基的なことから丁寧に解説されているから昆虫初心者や昆虫少年にはもちろんおす

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    HONZ 2017/01/30
  • 『三省堂国語辞典のひみつ 辞書を編む現場から』三省堂国語辞典の行間 - HONZ

    を読んで気になることのひとつに、その著者がどんなパーソナリティの人なのか、ということがあると思います。 飯間浩明先生は、テレビやラジオに出演されることも多いので、すでにご存じの方も多いかもしれませんが、ここでは私から見た飯間先生について述べたいと思います。 私は趣味で国語辞典を収集していることから、飯間浩明先生とは、国語辞典を扱ったテレビ番組やイベントを通じて何度かご一緒したことがあります。また、早稲田大学第一文学部の先輩でもあり、大学院にも共通の知人が何人かいるという、比較的近しい場所にいらっしゃる方でもあります。 文章から受ける印象としては、どんな用例でも出典を明らかにしたり、証拠と根拠を示して主張したり、さらにそれらのことをわかりやすく丁寧な表現で伝えることを心がけていらしたりと、学者らしさ、誠実さ、真面目さが伝わってきます。一方で、反論を恐れる学者が使いがちな、「かもしれない」「

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    HONZ 2017/01/29
  • どこまでを人に任せるべきか──『デジタルアポロ ―月を目指せ 人と機械の挑戦―』 - HONZ

    書は「人と機械がアポロ計画においてどう役割分担をしたのか(そもそも人に役割はあるのか)」という観点から、計算機開発を中心に、人間と機械の協働を分析した一冊になる。アポロ計画に関する歴史を辿る物からマネジメントを分析する物まで山ほど存在するだけに、今更新しいものが読めるのかなあ? と疑問に思っていたのだが、これが滅茶苦茶おもしろい! アポロ計画の技術者は機械設計にどのように人を組み込んだのか? 重大な月面着陸で人を制御にどのように介在させたのか? 人はいつスキルを持った賢い操縦士として働き、いつ飛行規定書に沿って機械のように動いたのか? この”人と機械”の境界線は、無味乾燥とした技術計算だけで成り立っているようにみえるアポロ宇宙船の人間的側面を映し出す。 原書は2008年刊行なので10年近く時間が経っているが、その価値はいささかも減じることがない。それどころか、自動運転車や人工知能との

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    HONZ 2017/01/28
  • 『寿命図鑑 生き物から宇宙まで万物の寿命をあつめた図鑑』ブラジャーの寿命は、本当に13ヶ月なのか? - HONZ

    ブラジャーについて知りたくてたまらない。齢46にしてこんなにもブラジャーのことが気になるとは思わなかった。きっかけは子どもの素朴な疑問である。 「ねぇ、ブラジャーの寿命ってなんで13ヶ月なの?」 その時、子どもが夢中になって読んでいたのが、『寿命図鑑』 絵・やまぐちかおり 編著・いろは出版(いろは出版)である。 この『寿命図鑑』は、人間や動物、建築物、機械、天体など13カテゴリー、324アイテムの寿命とそれにまつわるエピソードをまとめた図鑑だ。 ユニークで楽しめるのはもちろんのこと、そこはかとない無常観も感じられて、読み始めると大人もハマってしまう図鑑である。 なにしろ冒頭の「動物の寿命」からして、子どもにとっては衝撃的なようだ。ハツカネズミのかわいいイラストとともにいきなり「寿命1年」と出てくるのだから。 「ぼくの心臓はちいさい」と見出しがあって、「哺乳類は、小さな動物ほど心臓の音が速く

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    HONZ 2017/01/27
  • 『ルポ 児童相談所 一時保護所から考える子ども支援』まずは知ること、当事者の声を知るための第一歩 - HONZ

    陰惨としか言いようのないような児童虐待事件が報道されるのをみるとき、なんとひどい親がいるものかと怒り呆れる。実の父に、母に、あるいは実父母のパートナーに、殴られ、閉じ込められ、飢えさせられ、亡くなる子どもたち。性的虐待に心身ともに深く深く傷つけられた子どもたち。なんとかならないものなのかと誰しもが思うだろう。 中には周囲の人々が子どもの危険を察知していたという事例もある。とくに児童相談所に通報がなされていたにもかかわらず、手をこまねいている間に取り返しのつかないことになったという話をきくと、何を生ぬるいことをやっているのかと思う。そんな虐待をするような親の親権など構わないから、まずは虐待する親から子どもを取り上げて、危険から守るべきだと。 こうした社会の声に押され、応えるように、虐待が疑われる家庭への行政の介入は強化されてきた。かつては虐待をする保護者自身も問題を抱えているのであり、そこへ

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    HONZ 2017/01/24
  • 『MUJI式 世界で愛されるマーケティング』時代や文化を超える、暮らしの普遍性とは何か? - HONZ

    特徴のないことが、特徴になるブランド? 『MUJI式 世界で愛されるマーケティング』は、無印良品の商品開発やブランドを理論と実践の二つの側面から解説した一冊だ。ブランドのエッセンスが非常に容易な言葉で描かれており、MUJIの世界観を分かりやすく伝えてくれている。 私が初めて無印良品と出会ったのは、コンビニで文房具を買った時のことだったと思う。コンビニなのに明らかに洗練されたノートやペンが揃っており、それ以降は無印良品を探してコンビニを何件かはしごしたこともあるくらいだ。 しかし書の冒頭を読み始めたら、その時「洗練された」と感じたのが記憶違いだったのかもしれないと思うほどの衝撃を受けた。そこでは、以下のように説明されている。 MUJIは、世の中のいろいろなブランドに対して、「特徴がない」ことが特徴となれるブランドなのである。 つまり「特徴がない」はずのものが、私の目には「洗練されたもの」に

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    HONZ 2017/01/23
  • 『あなたの人生の意味 先人に学ぶ「惜しまれる生き方」 』 - HONZ

    夏目漱石に「私の個人主義」という作品がある。これは小説ではなく、大正3年(1914年)11月25日、学習院で行なわれた講演の記録である。代表作というわけでもなく、日頃あまり脚光を浴びることもないが、私は日人全員が読むべき作品と思っている。少なくとも中学か高校の国語の教科書には載せるべきだ。『こころ』よりは絶対に教科書にふさわしい。個人主義というとすぐ、「自分勝手」と同義 に解釈し、「現代は行き過ぎた個人主義の弊害が」などと言う人が多い。しかし、漱石の言葉を読めば、 個人主義は決して自分勝手ではないし、今も決して行き過ぎてなどいないことがよくわかる。 まず漱石は 「自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならない」と言っている。個人主義とは、「自分という個人」の自由と権利が広く認められることではあるが、それは同時に誰もが、「他人という個人」の自由と権利も広

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    HONZ 2017/01/23
  • 『再起動 リブート 波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語』起業でもっとも大切な、たった一つのこと - HONZ

    『再起動 リブート 波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語』起業でもっとも大切な、たった一つのこと 久し振りにを読んで感動した。 を読む理由というのは人によって、また場合によってまちまちだと思うが、自分の場合は知識欲に駆られて読むことが多い。自分が知らなかったことが分かること、世界の広さと深さを知ることがたまらなく楽しいのだ。 だから、小説は殆ど読まない。当か当でないか分からないような文章に興味がないから。学生時代から、先生に指定された課題図書を読むのも嫌だった。自分が知りたいと思う好奇心がベースにない読書は苦痛以外の何物でもないから。 ビジネスマンの自叙伝のようなも殆ど読まない。大抵の場合、ただの「凄い人伝説」に過ぎないから。「そんなこと普通の人に出来る訳がないでしょ?」ということか、或いは人の自慢話しか書いていないから。 でも、書は素直に読むことが出来た。自分と

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    HONZ 2017/01/17
  • 『夫のちんぽが入らない』不通の私と、みんなの普通 - HONZ

    このタイトルだけに色物系かと思われるかもしれないが、奥深いメッセージが込められた、笑いあり涙ありの痛快エッセイである。 冒頭、このような一節から始まる。 いきなりだが、夫のちんぽが入らない。気で言っている。交際期間も含めて20余年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。 もちろん書かれている内容自体はシリアスなのだが、「こんなこと軽々しく言えやしない」と言いながらも書籍で大々的に発表してしまっているあたり、そこはかとない面白さがあり一気に読み終えた。 夫のちんぽが入らないーーこの肉体的に異物を排除してしまうということがまるでモチーフであるかのように、私自身が世間から排除されてしまったり、自分が大切な人を排除してしまったりと、信じられないくらい不思議な出来事が次々に起こっていく。 主人公は、人よりクマの

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    HONZ 2017/01/16
  • 『東大VS京大 入試文芸頂上決戦』国語の入試問題から、時代の流れが見えてくる - HONZ

    入試の季節が巡ってくるたびに高校時代を思い出す。もう少し努力していれば違う未来があり得たかもしれないあの時代。 もしタイムマシンであの頃に戻れたら、今より30キロ以上もスリムな自分に、成毛眞の『AI時代の人生戦略』でも渡して、「未来の合言葉はSTEAMだぜっ!」と全力でアドバイスを送ってやるのに……。女の子のことばかり考えているうちに(「つきあっているうちに」ではないところがいかにも10代男子)瞬く間に貴重な青春時代は過ぎ去り、気がつけばこんな大人になってしまった。ハァ……。 なぜ勉強に身が入らなかったかといえば答えは簡単、つまらなかったからだ。特に苦手だったのが国語である。読書量と国語の成績は決して比例しない。清水義範の『国語入試問題必勝法』というパスティーシュ小説があるが、国語が苦手だった理由は、その冒頭に出てくるこんな問題文を見ればわかってもらえるはずだ。 ●次の文章を読んで、あとの

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    HONZ 2017/01/15
  • 凡人、天才に学ぶ 『世界天才紀行 ソクラテスからスティーブ・ジョブズまで』 - HONZ

    天才とは何だろう? 一般的には「とくに創造的活動において発揮される、すぐれた知的才能」と定義されている。『優生学』を打ち立てたフランシス・ゴルトンのように「世界中がその功績に対して大きな恩義を感じるような人物」としたほうがより実際的かもしれない。 ダーウィンのいとこであったゴルトンは「天才とは遺伝の産物」と考えていたが、はたしてそうだろうか。いみじくもそのゴルトン人が指摘したように、人間は「氏と育ち」からなりたっていることは間違いない。天才の「育ち」、すなわち、創造性を育てる環境を探ってみようというのがこのだ。 そのためにとられた方法は、世界旅行である。なんやそれは、と思われるかもしれないが、ある時代に複数の天才が何人も出現した都市が厳然と存在する。そういった都市を巡り歩くことによって、天才を生み出した環境をあぶりだそうというのだ。 選ばれた都市は、アテネ、杭州、フィレンツェ、エディン

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    HONZ 2017/01/14
  • 『ヒットの崩壊』聴取から体験へという大変化 - HONZ

    ラジオ局のプログラムには音楽番組が欠かせない。「電リク」という言葉を最近は知らない人も増えたが、電話でリクエストを受け付ける番組が各局で当たり前のようにオンエアされていた時代があったし、ヒットチャートを紹介する番組はいまも健在だ。 僕自身もそういった音楽番組の制作に携わったことがある。あれはたぶん2000年前後くらいだったと思うが、ちょっとした異変を感じるようになった。電話オペレーターが全員女子大生アルバイトという番組を担当していたのだが、リスナーからのリクエスト曲を聞き取る際、彼女たちが曲名を知らないというケースが増えてきたのである。 リスナーからの電話を受けると、彼女たちはラジオネームや番組へのメッセージ、リクエスト曲のタイトルなどを聞き取ってシートに記入する。それがディレクターのもとに回ってくるのだが、そこにギョッとするような曲名が書かれているのである。 思い出すといまでも動揺を禁じ

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    HONZ 2017/01/14
  • 『日米開戦と情報戦』目的の不明確さが招いた悲劇 - HONZ

    日米戦争(太平洋戦争)とは何だったのか?なぜ今日に至っても歴史的評価が定まらないのか?そもそも日は何のためにアメリカ戦争したのだろうか? 著者が指摘しているように、過去の出来事を知っている我々は、歴史に対して神の立場に立っている。全ての結末を知っている現在から、過去の人々の判断や行動を後講釈で説明しても意味がない。 「ルーズベルト大統領は真珠湾攻撃を知っていた」(ルーズベルト大統領は、ヨーロッパへの参戦の口実を作るため、攻撃を放置した)というありがちな陰謀論を斥け、「アメリカは真珠湾の軍事的脆弱性は十分理解していたが、日による真珠湾攻撃に政治的・軍事的妥当性はないと判断していた」というのが筆者の見立てである。 冷静に考えてみれば、アメリカとイギリスが日の暗号を解読していて日軍の行動が筒抜けであったのなら、なぜ真珠湾の太平洋艦隊を壊滅させられ、フィリピン、マレーシア、シンガポールな

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    HONZ 2017/01/13
  • 南極で家を建てるには 『南極建築 1957-2016』 - HONZ

    地球上で、家を建てるのが大変な場所はどこだろう? ジャングル? 砂漠? ツンドラ? 南極や北極? 極地観測のために建てられた南極基地の建築物を、写真と丹念な解説で見せてくれるこの一冊。昭和基地をはじめとする、極限環境での建築の数々は、こんな技術や人に支えられていた! こんなにすごいことをしていたなんて、知らなかった。 このの感想はこの一言に尽きるかもしれない。 南極といえば、高倉健がタロとジロを抱きしめる映画『南極物語』を思い出す人も多いだろう。1911年の、アムンゼンとスコットの壮絶な南極点到達競争を読んだことのある人もいるかもしれない。そういえば私は、「船の科学館」で南極観測船「宗谷」を見学した記憶もある(1979年から保存展示されているが、移設のため、一時的に2017年3月末まで一般公開を休止中。この「宗谷」もまたロマンあふれる船だ)。 と、その程度の知識しかない人でも読み応えじゅ

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    HONZ 2017/01/13
  • 『いつも時間がないあなたに』我々は欠乏の罠から抜け出せるか - HONZ

    書のタイトルを見て、「これはまさに自分のためのではないか!」と思い手に取られた読者の方も多いことだろう。なかなか減らない労働時間、息つく暇もない育児や介護、なくならないサービス残業、改善しないワーク・ライフ・バランス……。メディアなどでしばしば取り上げられるこれらの問題が明示しているように、日ほど「時間がない」と感じる人々がたくさん暮らしている国は、他にないかもしれない。 しかし、『いつも「時間がない」あなたに』という字面から、さぞや有効な時間活用術が書かれているに違いない、と期待に胸をふくらませながら書を読み進めるのはおすすめしない。副題の「欠乏の行動経済学」が表現しているように、書はあくまでも「欠乏」に焦点を当てた学術的内容を紹介した入門書である(実際に、原著のタイトルは欠乏を意味する Scarcity で、副題を含めて特に「時間」を強調してはいない)。時間の他にも、モノやお

    『いつも時間がないあなたに』我々は欠乏の罠から抜け出せるか - HONZ
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    HONZ 2017/01/12