たったひとり、鬼界ヶ島に取り残された俊寛が、 幼い頃から可愛がって使っていた有王という少年があった。 鬼界ヶ島の流人が 大赦になって都入りをするという話を伝え聞いた有王は、 喜び勇んで鳥羽まで出迎えにいった。 「どんなにおやつれになってお帰りだろう、 随分辛いことだったろうなあ」 あれこれ考えているうちに、 鬼界ヶ島の流人らしい一行が到着した。 見送り人のごった返す中で、 有王は、俊寛の姿を探し求めたが、 それらしい人の姿は見当らなかった。 有王は次第に不安と焦燥を覚えながらも、 「そんなはずはない、そんなバカなことはない」 と自分にいい聞かせながら、 一人一人の顔をのぞきこむようにして探した。 何度探しても結局は、無駄であった。 俊寛らしい人の影はみえないのである。 「もし、一寸お尋ねいたします」 思い切って有王は、人に尋ねてみようと決心した。 「今日ご大赦のあった鬼界ヶ島流人のうちの一