クリエイティヴ・ライティングの宿題は「葛藤」。 何が葛藤するかというと、「作家」と「登場人物」が葛藤するのである。 その消息を理解してもらうために、学生たちには二週間前に宿題として、「書いている途中で、視点が切り替わるテクスト」を選んできてもらった。 ふつうは「神の視点」と「焦点的人物の視点」のあいだを行き来する。 「ふざけたことを言うな」と貞夫は怒りの叫び声を上げた。その言葉が貞夫の運命を一変させることになった。 なんていうのがあるでしょ。 二番目のセンテンスで書き手の視点から見える空間的・時間的な眺望がいきなり広大になる。 いまその出来事を経験しつつある当の本人が記述できる権限を超えてしまう。 そういうのは「なし」ね、とかつてサルトルは言った。 神の視点から登場人物たちの内面に勝手に入り込んだり、まだ起きていない出来事を先取りしたりするのは「フェアではない」というのである。 なるほど、