回避も軽減もできない絶望にあって、ああもうダメだ、と思って目が覚めた。 とたんに夢の内容を忘れた。 絶望だけがまだはっきりと残り、なんとかできないものか?でも何を?という思考にしばらく捕まっており、思わず 「一誠は?」と、息子の名前を呼ぶ。傍らの妻が反応に困っている。 そうか夢をみていたんだ、と気付き、そして一誠が既に亡いことに思い至る。 ………と、いう夢をみた。 (つまりこれも夢だ。わたしは夢から覚める夢を見ている。) 一誠、がどういう読みをするのかわからない。 夢の中で、漢字のイメージだけで息子を呼んだ。わたしは父だ。 妻は一誠を産んでまもなく亡くなり、男でひとつで育てた一誠も元服を迎えず亡くなった。 のちに後妻を迎え、また息子が生まれている。 心許なげにしている妻(後妻)に、「わるい。夢をみていた。心誠は?」と、言い直す。 現在の、息子の名前は「心誠」という。やはり読みはわからない。