藤さんの恩師で、作詞家の石坂まさをさんを通じて面識があった作家の大下英治氏は、急死の報を聞いて「えっ、まさか、とは思わなかった」と話す。 「藤圭子を端的に表現すれば、闇と艶、そして狂気だと思う。私はデビュー時からのファンで、『新宿の女』や『命預けます』が好きだった。不良性に満ちた闇の部分、女ヤクザのような艶、ほとばしり出る血のようなすごみがある。闇を背負った藤圭子にとって、明るさを求める時代は居心地が悪かったのだろう。幸せというイスに座っているのが似合わない人だった」 大下氏は交流のあった石坂さんを通じ、藤さんと知り合った。 「1996年ごろ藤さん夫妻と娘さん、そして石坂さんと東京・新宿で会食した。私がファンだったこともあり、石坂さんが食事の場を設けてくれた。藤さんが娘のことを『この子はアメリカで歌の勉強をしているけれど、絶対にデビューするから』と、自信たっぷりに語っていたのを覚えている。