【3月のヤバい女の子/献身とヤバい女の子】 ●おかめ ――――― 《おかめ伝説》 長井飛騨守高次は窮地に立たされていた。 高次はベテランの大工である。京都・大報恩寺の本堂の工事を任され、がぜん張り切っていた。 しかしなぜかーーー自分でもなぜそんなことをしてしまったのか分からないのだがーーー木材の寸法を間違って切断してしまったのだ。 それもただの木材ではない。この日のために信者から寄進された特別な木だ。 (これはもう、命をもって償うしかない…。) 困り果て、思いつめた高次を妻のおかめが見ていた。 彼女は今にも消えてしまいそうな夫を励まし、静かに自分の考えを話す。 まずは落ち着いて。ここは思い切って、他の木材も同じ長さに揃えましょう。そして別パーツとして枡組を作って、寸足らずになった部分を補ってはどう? 結果的に、彼女の考案した方法はとてもうまくいった。高次が大変な失敗したと思う者は誰もいなか