結婚すべき男と、恋愛の対象とする男は別だ、ユウコは固く信じていた。 大学時代の友達がそれを峻別せずに次々に結婚していくのを、ユウコは危なっかしく思いながら見ていた。案の定、友達の何人かはすぐに離婚したし、結局のところあてにならない連れ合いの稼ぎに苦労を強いられている人もいた。 ユウコが選んだのは幼なじみのコウジで、まさに結婚すべき男性の条件を満たしていた。穏やかで、慎重で、優しかった。最後まで補欠ではあったもののサッカー部に所属するかたわら、コツコツと勉強し、国立大学に現役で合格、一部上場の有名製造メーカーに入社した。 コウジは、友達たちが夢中になるような、危険な匂い、しびれるようなオスの香りとは無縁であったし、おまけにタヌキのような風貌だったので、「一生安泰だけど退屈なアンパイ」を選んだユウコはなんて計算高いんだろうと友達たちは噂した。が、じつはもうひとつ、コウジの求婚を受け入れた理由が