古代シルクロードの要衝として知られる中国新疆ウイグル自治区カシュガル。習近平国家主席が2013年から提唱する経済圏構想「一帯一路」の西の玄関として整備が進む。2月末、春節(旧正月)連休明けの繁華街は人口の9割を占める少数民族のウイグル族らでごった返していた。 その一角、自動小銃で武装した3人組の治安当局者が雑踏に目を光らせる。突然、30歳前後の男性を呼び止めた。有無を言わさず男性にスマートフォンを出させると、トランシーバーに似た手のひら大の黒い機械にケーブルで連結した。 「スマホの中のデータが丸見えになり、『聖戦』など違法とされる言葉があれば拘束される」。イスラム教徒のウイグル族男性が声を潜めて打ち明けた。スマホ内にはインターネット上の会話記録から銀行口座の暗証番号まで、あらゆる個人情報が入っている。データが吸い取られ、丸裸にされると恐れているのだ。