羽生結弦選手はプルシェンコ選手の「オリジン」を起点として、どのようにして自らのドラマを創り上げたのか。その経緯を見届けることができた。 しゃがみこみ腕を前後に広げた最初のポーズは、彼の「オリジン」たるプルシェンコ選手のもののコピーのようでありながら、コピーではない。彼の「思想」がここに集約されているように感じた。最終ポーズもプルシェンコのあのニジンスキー・ポーズとは異なっていた。プルシェンコ選手は冒頭も最終の決めポーズも共に「ニジンスキー」を模した立像だったのに対し、羽生選手のものはリンクにしゃがみこんでのもの。最初と最後を揃えるという点は同じでも、裏打ちされた思想は違っていたということ。羽生選手の座像にはやはり「能」との親和性を感じてしまう。 プルシェンコ選手がトリビュートしたニジンスキーの「バレエ・リュス」はある意味、舞踊界における西洋的な美の理想像へのアンチテーゼを提出したもの。ペイ