今回は「メタファー論」についてご紹介します。 (1)メタファーの問題とは? 詩や小説が好きなことと関係するのでしょうが、年来メタファー(隠喩)という言語現象に関心を抱いています。哲学史の上でも、「肉体は精神の牢獄である」(プラトン)、「単子には窓がない」(ライプニツ)、「人間は人間に対して狼である」(ホッブズ)、「理性は感情の奴隷である」(ヒューム)等々、メタファーの例には事欠かず、近年ではイギリスのマイケル・ダメットが、『言語の海』という印象的な題名の論文集を出しました。科学の分野においても、「ビッグ・バン」や「利己的遺伝子」などはメタファーと見なしてよいでしょう。蛇足ながら、「肉体は牢獄のようなものだ」とか、「人間は狼みたいだ」とか言うとそれはシミリー(直喩)と呼ばれます。 私がこの何年かで書いたメタファーにちなむ論文は、未発表のものも含めて3つありますが、ある言語表現がメタファーとし