3月12日午後6時32分、大腸がんのため福岡市西区の病院で死去、71歳だった。 今でも、いくつかの詩集を開くことができる。思潮社の現代詩文庫180『山本哲也詩集』に至るあなたの軌跡を追いながら、今でも、どこかナイーブで、変わることのないスマートな知性を湛えて語りはじめるあなたのおもかげを、思い出すことができる。 私の最初の詩集を、それから5年後に知り合ったとき、あなたは買って持っていると言った(その詩集を持つ未知のひとと直接出会ったのは、ついにあなただけだった)。詩誌『九』に誘ってくれた。詩を発表するたびに新聞紙上で取り上げてくれた。そんなあなたの評価がどれほど私の孤独感を癒してくれただろう。私は、あなたに受けた恩を、ついに直接あなたに返せない恩を、別の詩作者たちに返すという責務を、あなたによって負わされてしまった。 『伊勢物語』と『文字所有者たち』について講演する山本哲也、本屋で出会う山